リスク警戒のドル買い円買い
リスク警戒のドル買い円買い
ドル円は一時107.30台も、ドル買いの動きに値を戻す
中国の香港に対する国家安全法案などが警戒感
中国が今年の経済成長見通しの数字目標を示さなかったことも重石
日銀会合ほぼ予想通りで反応限定的
【東京市場】午後に107円50銭割れ
ドル円は朝方107円76銭を付ける動きが見られたが、その後はドル安円高の動きが優勢となり、午後に107円50銭を割り込む動きを見せた。
2012年以来の臨時金融政策会合を開催した日本銀行は午前10時ごろ結果を発表。当初から報じられていたとおり新型コロナウイルスの影響を受けている中小企業に対する新たな資金繰り支援制度の導入を決定した。CPや社債買い入れ、既存の貸し出し措置と合わせて総額は約75兆円を資金繰り延長のための特別プログラムとし、期限について従来の9月末から2021年3月末まで半年延長した。このうち新たな資金供給対象は30兆円となった。
この決定を受けてドル円はドル安が進行。事前見通し通りの決定でサプライズ感がなかったことを受けて、調整売りの動きが広がった。ドル円は107円70銭台から5.0銭台に。
その後、本日、通常スケジュールから2か月半遅れで開幕した中国全国人民代表大会(全人代)において、経済成長見通しの数字目標発表を行わず、注目された香港について、一国二制度を堅持するとしながら、国家安全を守るためのシステムを完成させると発表。国家安全法の導入を全人代で協議することを公表した。米国は国家安全法が導入されれば対応措置を取ると発表しており、米中の対立が激化する懸念が広がった。
こうした状況を受けてドル円はさらに値を落とし、午後に107円50銭割れを付ける動きがら見られた。
ユーロ円は朝方118円に迫る動きも大台を付けきれず、その後の円買いの流れに117円30銭近辺まで。豪ドル円は70円80銭近くから70円10銭台まで値を落とした。
【ロンドン市場】円買いとドル買い
米中関係の悪化懸念でドル買いと円買いが入る展開。ドル円は朝方107.32近辺を付けるも
ドル全般の買いに107円台半ばを回復。
ドル円を除くとドル買いの動き。全人代での経済成長目標の数字を発表しなかったことなどが重いsとあんった。
香港に対する国家安全法の採択が見込まれることも、警戒感を誘っている。
ユーロドルは一時1.0880台までユーロ安ドル高、ユーロ円は一時117.03を付ける動きも。
【NY市場】もみ合い
米中関係の悪化懸念ももみ合いに終始した。
月曜日が米英の休日となっており、やや慎重姿勢が広がった形。
ECBが4月の理事会での議事要旨を発表し、迅速な回復はありえない、今後の追加措置が必要となる可能性も
と慎重な姿勢を改めて示したことでユーロ売りドル買いの動きも。
【本日の見通し】方向性探る
107円台後半推移が続いている。上下ともに動きにくい展開。
108円台での買いには慎重姿勢が見られ、上値での買いには慎重も、下がると買いが出る流れ。
米中関係の悪化懸念が上値を抑える格好も、新型コロナウイルスによるロックダウンを緩和する動きが世界的に広がっており、日本でも東京などを含む残った5都道県での解除が今日行われる見込みとなる中で、ドル円、クロス円の基調はしっかり。
景況感の改善が一つのポイントに。今日は5月独Ifo景況感が17時に予定されている。4月からの改善が見込まれており予想通り、もしくはそれ以上でリスク選好の動きに。
なお、今日は米国・英国市場が休場となっており、突っ込んだ動きには慎重姿勢も。
【本日の戦略】様子見
ロンドン・NYともに休場で参加者が少なく
大きな動きは期待しにくいところとなっている。
ドル円はもみ合いが期待されるところに。
※山岡和雅個人の見解です
為替や、その他いかなる商品について売買を推奨するものではございません
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《5/22 金曜日》
ドル円 ユーロドル ユーロ円
始値 107.61 1.0950 117.84
高値 107.76 1.0954 117.98
安値 107.32 1.0885 117.00
終値 107.64 1.0901 117.32
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《5/22 金曜日の主要株式指数》
前日終値 前日比
日経 20388.16 -164.15
DOW 24465.16 -8.96
S&P 2955.45 +6.94
Nasdaq 9324.59 +39.71
FTSE 5993.28 -21.97
DAX 11073.87 +7.94
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《5/22 金曜日の商品市場》
NY原油先物7月限(WTI)(終値)
1バレル=33.25(-0.67 -1.98%)
NY金先物8 月限(COMEX)(終値)
1オンス=1753.50(+16.60 +0.96%)
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《5/22 金曜日に発表された主な経済指標》
【NZ】
小売売上高(第1四半期)7:45
結果 -0.7%
予想 -1.5% 前回 0.7%(前期比)
【英国】
GFK消費者信頼感・速報値(5月)8:01
結果 -34
予想 N/A 前回 -33
小売売上高(4月)15:00
結果 -18.1%
予想 -15.5% 前回 -5.2%(-5.1%から修正)(前月比)
結果 -22.6%
予想 -21.2% 前回 -5.8%(前年比)
公共部門ネット負債(4月)15:00
結果 614億ポンド
予想 496億ポンド 前回 140億ポンド(23億ポンドから修正)(公共部門ネット負債)
【日本】
消費者物価指数(4月)08:30
結果 0.1%
予想 0.2% 前回 0.4%(前年比)
結果 -0.2%
予想 -0.1% 前回 0.4%(生鮮食料品除くコア・前年比)
日銀政策金利決定会合 10:01
結果 -0.1%
予想 -0.1% 現行 -0.1%
【インド】
インド中銀政策金利 13:30
結果 4.00% 現行 4.40%(緊急利下げ)
【カナダ】
小売売上高(3月)21:30
結果 -10.0%
予想 -10.5% 前回 0.4%(0.3%から修正)(前月比)
結果 -0.4%
予想 -4.8% 前回 0.0%(コア・前月比)
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《5/22 金曜日に発表された主なイベント・ニュースなど》
【日本】
日銀臨時金融決定会合
政策金利を-0.1%に据え置き
10年物国債金利の目標を0%程度に据え置き
企業金融支援策を強化
臨時会合後の黒田総裁の記者会見は行わない
新たな貸出制度の詳細を決定
中小企業等の資金繰り支援のための新たな資金供給手段の導入
新貸出制度の資金供給対象は約30兆円
新貸出制度、利用相当額の当座預金にプラス金利付与
新貸出制度などあわせコロナ支援特別プログラムは総枠75兆円
新貸出制度は6月中に開始
引き続き企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努める
新貸出制度は系統会員金融機関等も利用可能に
ETFおよびJ-REITについて当面は積極的な買い入れ行う
新型コロナウイルス影響注視し、必要なら躊躇なく追加緩和
*政府・日銀共同声明
事態収束のためにあらゆる手段講じる
感染収束後に成長回復に一体で取り組む
(麻生財務相と黒田日銀総裁 経済・金融政策について会談)
*黒田日銀総裁
施策の実施を通じ企業金融の円滑化と金融市場の安定に努める
必ずしもV字回復にならない可能性がある
コロナの影響次第では、必要に応じて躊躇なく追加緩和
仮に国債増発でも長期金利上がらぬよう自動的に政策協調働く
【米国】
*デブラシオNY市長
NY市、再開の第一フェーズが近づいている
NY市のすべての道路が6月前半には通じている。
早ければ6月1日にも数インチドアを開けるためのアナウンスを行う。
持続可能で、ずるのない、柔軟な再開を行うとしている。
*ハセット米大統領経済顧問
パウエル議長と考えは近い。
老人ホームでの死亡者数は受け入れ難いほど高い。
給与減税は失業者向けにも一部含まれている。
中国の香港に対する行動がキャピタルフライトを生む。
*バーキン・リッチモンド連銀総裁
いまはインフレを予想しない。
FRBはインフレを管理する手段を持っている。
あまり長期にゼロ金利を継続するのは不健全。
【豪州】
格付け会社フィッチ
オーストラリアの格付け見通しを従来の「ステーブル」から「ネガティブ」に変更。
格付けは「AAA」に据え置き。
【NZ】
*オアNZ中銀総裁
もしこれ以上の景気刺激策が必要となるならば、マイナス金利の導入ではなくQEの拡大で対応するであろう
NZ政府債の購入が50%を超えたとしても、それはマジックナンバーではない。
【中国】
*第13期全国人民代表大会(全人代)
金融政策をより柔軟で適切なものとする
米国と協力して貿易協議第1弾合意を実施
2020年に900万人以上の都市部の雇用を拡大することを目指す
2020年の財政赤字対GDP比は3.6%超えを計画。昨年の2.8%から上昇。
失業率については6%前後を目標
2020年に1兆元の新型コロナウイルス債を発行
3.75兆元の特別地方債を発行
より積極的な財政政策を改めて表明する
より柔軟で適切な金融政策を実施
台湾の自立活動は断固として反対する
付加価値税(VAT)削減を今年も継続
中国の金融政策スタンスは変更していない
香港に対する一国二制度は継続する
国家安全を守るためのシステムを完成させる
銀行の預金準備率を引き下げ
より安定した高品質の輸入・輸出を目標
人民元を秩序ある水準で基本的に安定させる
中国は米国との貿易合意の履行を約束
【インド】
*ダス・インド中銀総裁
成長の見通しのリスクが高まっている。
新型コロナウイルスの影響ははるかに深刻。
現在実施している元利支払いの3カ月猶予について、さらに3カ月延長する。
2021年の経済成長見通しは依然マイナス圏とみられる。
ウイルスの感染拡大のカーブが落ち着くかどうかによる。
2021年下半期の成長回復を期待。
【英国】
*ラムスデン英中銀副総裁
6月会合で英中銀がQE拡大する可能性ある
マイナス金利についてはオープンマインドであること適切
指数リンク債や3年以下債券の購入は考えていない
【ユーロ圏】
*ECB議事録(4月30日開催分)
PEPPはユーロ圏債券市場の安定の重要な役割担う
金融政策手段は緩和的な金融環境を維持させている
ECBメンバーは経済シナリオが実体経済から乖離すること懸念している
マイルド・シナリオはおそらく楽観的過ぎる
6月の理事会ではPEPPの調整、その他の措置について検討する用意
*レーンECBチーフエコノミスト
インフレはかなり鈍化している、6月が低下のピークに
必要であれば、6月のECB理事会で政策を調整する用意
ECBはあらゆる政策についての見直しを続けるべき
テイルリスクがかなり悪化した
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《本日予定されている主な経済指標》
【日本】
景気先行指数・改定値(3月)14:00
予想 N/A 前回 83.8
景気一致指数・改定値(3月)14:00
予想 N/A 前回 90.5
【ユーロ圏】
ドイツGDP・確報値(第1四半期)15:00
予想 -2.2% 前回 -2.2%(前期比)
予想 -2.3% 前回 -2.3%(前年比)
ドイツIFO景況感指数(5月)17:00
予想 78.3 前回 74.3
【香港】
貿易収支(4月)17:30
予想 -357億香港ドル 前回 -347億香港ドル
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執筆者 : 山岡和雅|MINKABU PRESS 外国為替情報担当 編集長
1992年米チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)東京支店入行、ディーリングルームに配属され、外国為替ディーラーに。英ナショナルウェストミンスター銀行、RBS銀行などで10年以上外国為替ディーラーとして市場の最前線に。その後大手FX会社などで外国為替市場のアナリストとして個人向けの外国為替情報の配信業務に携わり、2016年3月から、みんかぶグループに参画。 (社)日本証券アナリスト協会検定会員