【NY市場】ドル売り強まりドル円は一時109.50円割れ トランプ発言で買い戻しも
きょうのNY為替市場は引き続き米中貿易協議を警戒したリスク回避の動きが続く中、ドル売りの動きが強まった。ドル円は一時109.50円を割り込む場面も見られた。現時時間夕方からワシントンで米中貿易協議が始まるが、それへの警戒感から米株も大幅安で始まる中、米国債市場で3ヵ月物と10年物が、一時的ではあるが3月以来の逆イールドを示したことがドル売りを誘発したようだ。トランプ大統領が「中国が貿易協議でディールを破った」と発言したことが懸念を強めた模様。
しかし、その後にトランプ大統領が今度は、「米中合意に素晴しい代替案がある。習近平国家主席から書簡を受け取った」などと述べたことから動きは反転し、ドル円も一時109.90円近辺まで下げ渋る動きも見られていた。ただ、110円は回復できていない。いずれにしろ、米中貿易協議の行方に注目が集まっている。
朝方に3月の米貿易統計が発表されていたが、中国からの輸入が減速した一方で輸出が拡大し、対中貿易赤字は2016年以来ほぼ3年ぶりの低水準に縮小した。来年に大統領選を控えたトランプ大統領からすれば、してやったりといったところかもしれない。
ユーロドルは買い戻しが強まり、ストップを巻き込んで一時1.1250ドル近辺まで上昇。このところ1.12ドル付近での振幅が続いていただけにエネルギーも溜まっていたのかもしれない。本日のユーロドルの21日線は1.1220ドル近辺に来ており、この水準を上回っていた。ただ、トランプ大統領の発言で戻り売りも出ており、21日線付近まで伸び悩んでいる。明日以降、21日線水準を維持できるか注目される。目先の上値メドは5月1日高値が1.1260ドル付近に来ている。
ただ、トランプ政権が関税を引き上げた場合、これまでの経緯を見ると影響は米国よりも中国側のほうが大きいようだ。ユーロ圏経済はドイツを中心として昨年から低迷が続いており、ECBも再び緩和姿勢を強めている。要因の一つにあげられるのが、中国経済の低迷で、ユーロ圏などは輸出で中国依存度が高い。米中貿易問題のエスカレートはむしろ、米経済以上にユーロ圏経済のほうが悪影響が大きいのかもしれない。
ポンドの買い戻しが目立った。超党派の協議が依然として混迷している中で、きょうのポンドドルは一時1.2970ドル近辺まで下落していた。200日線をうかがう動きも見られていたが、NY時間に入るとドル売りが強まったことからポンドドルの買戻しが加速し、1.30ドル台を回復。
きょうも超党派の協議が行われているが、合意はなお見えないようだ。野党労働党のコービン党首は「合意にはメイ首相が一線を越えなければならない」と述べていた。きょうは全体的なドル売りからポンドドルは買い戻されているものの、超党派協議の行方が不透明なうちはポンドの戻りも限定的な可能性もありそうだ。
minkabu PRESS編集部 野沢卓美