【今週の注目材料】米大幅利上げ継続期待と米景気動向
今週はそれほど大きな材料は予定されていません。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大方の予想通り3会合連続となる0.75%ポイントの利上げを実施し、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標は3.00-3.25%となりました。
同時に発表されたFOMC参加メンバーによる経済見通し(SEP)の中で、年末時点での政策金利見通しをドットで表すドットプロットをみると、今年末時点での政策金利見通しは前回の3.25-3.50%から4.25-4.50%に大きく上方修正。来年末時点では前回の3.75-4.00%から4.50-4.75%にこちらも大きく上方修正しています。今年の年末時点で4.25-4.50%になるには、次回11月のFOMCで4会合連続となる0.75%利上げを実施し、12月のFOMCでも0.5%の利上げが必要となります。
こうした積極的な利上げ姿勢の反動として気になるのが米景気動向です。今回のSEPでは今年第4四半期の経済成長率について、前回の+1.7%から+0.2%に大きく引き下げられました。来年第4四半期は前回の+1.7%から+1.2%となっています。失業率は今年の年末時点で3.8%と前回の予想値及び直近8月の数字から0.1%ポイントの悪化見込み、来年末時点では前回の3.9%から4.4%に悪化見込みです。
パウエル議長は今後について、経済のソフトランディングは非常に困難、痛みを伴わずにインフレを過去のものとする方法はないなどと発言。労働市場については幾分軟化する可能性が非常に高いとしています。
議長は痛みを伴ってもインフレに対応する姿勢を強く示しました。ただ、その痛みが想定を超えてきた場合は、政府などからの圧力が強まることが予想されます。
そうした中、来週は3つの米指標に注意したいところです。
一つ目は27日21時半に発表される8月の耐久財受注速報値。GDPの重要項目である設備投資の先行指標とされる同指標。7月は-0.1%と小幅ながらマイナス圏。航空機を除いた非国防資本財(コア資本財)受注は+0.3%と6月の+0.9%から鈍化しています。コア資本財の出荷は6月の+0.8%から+0.5%に鈍化しています。
今回全体の数字は-0.3%と二カ月連続でのマイナスが見込まれています。金利の上昇がまともに響く項目だけに、市場の注目度も高まっており、予想をさらに下回る鈍化を見せると、第3四半期の経済成長見通しにも悪影響を与えそうです。
二つ目は同じ27日の23時に発表される8月の米新築住宅販売件数です。物価高による建築資材の上昇。もっとも代表的な30年固定で6%を超えてきた住宅ローン金利(米連邦住宅金融抵当公庫)の上昇などの状況を受けて、住宅投資への警戒感が広がっています。今年2月に83.5万件あった新築住宅販売件数は、前回51.1万件まで低下しました。今回の予想は50.8万件と微減といったところ。落ち込みがさらに目立っているようだと、警戒感が強まります。もっとも、21日に発表された中古住宅販売件数は予想を上回る好結果となっています。建設コストの上昇もあり、新築住宅の方が厳しい状況ではありますが、こちらも強めの数字が出てくるとドル買いもありそうです。
最後は30日に発表される8月の米PCE(個人消費支出)デフレータです。米国のインフレターゲットの対象である同指標。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)のSEPでは年末時点での前年比の見通しが5.4%、食品とエネルギーを除いたコアデフレータが4.5%と、それぞれ6月時点での予測より0.2%ポイント上昇しています。前回7月の同指標はPCEデフレータが6.3%、同コアデフレータが4.6%と、ともに年末時点での見通しを上回っています。
13日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)前年比は8.3%と7月の8.5%から鈍化も、市場予想の8.1%を上回る結果に。コアCPI前年比は6.3%と7月の5.9%から上昇するだけでなく、市場予想の6.1%も超える結果となりました。
今回のPCEデフレータの市場予想は6.0%と前回から鈍化見込み、コアデフレータは4.8%と前回から上昇見込みです。CPI同様に全体の鈍化が予想ほどのものとならず、強さを示した場合、ドル買いにつながる可能性があります。
CPIの強さに市場はすでに反応しており、同系統の指標であるPCEデフレータでの反応は限定的になる場合がありますが、先週のFOMCで今後の米FRBによる積極的な利上げ姿勢への期待が強まった後だけに、PCEデフレータの強さがドル買い基調を支えてくる可能性がありそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
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執筆者 : MINKABU PRESS
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