欧州の最新情勢
ECBは9月にも金融緩和の強化へ
25日のECB理事会では、金融政策の維持が決定されました。ただ、声明文の随所にハト派的内容が散りばめられており、次回9月12日の理事会で追加緩和が決定される可能性は高そうです。
ドラギ総裁は会合後の会見で、「見通しは製造業で悪くなる一方だ」と語りつつも、「リセッションのリスクはかなり低いとみている」とのことでした。よりハト派的なコメントを期待した市場はやや失望したようです。
ECB声明の発表後、ユーロは一時約2年ぶりの安値をつけましたが、ドラギ総裁の会見を受けて上昇。結局、上下に「往って来い」でほぼ会合前の水準に戻りました。次回会合に向けて、具体的な追加緩和策が意識されるとユーロ安要因になるかもしれません。
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声明では、「政策金利は、2020年前半まで現行水準、あるいは低い水準に維持される」とし、前回声明に「あるいは低い水準」が追加されました。利下げを強く意識させるものです。
また、「対称性の物価目標」に言及しました。ECBの物価目標は従来、「ほぼ2%だが、2%をやや下回る」でした。「(2%の)対称性」となったことで、「2%を下回る期間が長ければ、その後に2%を上回っても金融緩和を続ける可能性がある」と読み替えることが可能です。
最後に、追加緩和の選択肢として、「フォワードガイダンスの強化方法、長期緩和の副作用対策(深掘りするマイナス金利の階層化)、新しい資産購入の額や組み合わせ」が挙げられており、様々な手段を用いて金融緩和を強化しようとする意思の表れかもしれません。
ブレグジットの先行きは引き続き不透明
23日、ジョンソン前外相が英保守党の党首に決まり、24日午後に新首相に就任しました。ジョンソン氏は、主要閣僚に強硬離脱派を配し、EUに対してアイルランド国境のバックストップを撤回するよう要求しました。EUは即座に拒否した模様です。ジョンソン首相は、合意のあるなしにかかわらず10月31日の期日にEUを離脱すると宣言しています。しかし、今後も様々なシナリオが考えられます。
1つの有力なシナリオは以下のようなものです。
まず、ジョンソン首相はEUと離脱条件について再交渉をしますが、十分な譲歩を得られず暗礁に乗り上げます。そのため、ジョンソン首相は「合意なき離脱」を進めようとしますが、英議会がこれを阻止します。議会はさらに、合意がない場合にEUに対してブレグジット期日の再延期を要請するようジョンソン首相に求める法案を可決します。
そして、ジョンソン首相は、議会による内閣不信任決議を回避するために、やむなくEUに再延期を要請します。結局、離脱期日は再延期され、ジョンソン首相は事態の打開を図るために2022年に予定される総選挙の前倒しを余儀なくされます。
マネースクエア チーフエコノミスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。 証券会社、米シンクタンク、FX会社にてリサーチ一筋30余年。ファンダメンタルズ分析を得意とする。