【来週の注目材料】前回はかなり弱め、今回は改善期待=米雇用統計
【来週の注目材料】前回はかなり弱め、今回は改善期待=米雇用統計
8日に11月の米雇用統計が発表されます。前回10月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回る伸びに留まったことに加え、前回値、前々回値が大きく下方修正されるかなり弱い結果となりました。前回の米雇用統計発表前まで、米経済はこれまでの利上げを受けても底堅さを見せているという評価が強かったですが、一転して米経済の鈍化懸念が広がる象徴的な結果となっています。その後米消費者物価指数などの物価統計の弱い伸びや、11月29日に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)でのここ数週間で米経済活動は減速との評価などもあって、米国の早期利下げ開始期待が広がる展開となっています。
前回のNFPの内訳を確認すると、財部門は前月比1.1万人減と10月の2.8万人増から一気に悪化し、3月以来のマイナス圏となりました。ただ、これは全米自動車労組(UAW)のストライキの影響が大きいです。自動車及び同部品は3.3万人減となっており、その影響で製造業が3.5万人減となって、財部門の雇用減につながりました。サービス部門は前月比11万人増となり、9月の21.8万人増から10万人超の伸び鈍化となっています。特に弱かったのが運輸倉庫業で、9月の1.3万人増から1.2万人減となっています。前回が4カ月ぶりのプラス圏だったので、従来の弱さに戻ったという面があります。
その他は幅広く雇用の鈍化が見られました。少し気になるのが、小売業が9月の1.3万人増から10月は0.1万人増、娯楽・接客業が9月の7.4万人増から1.9万人増に鈍化したこと。景気に比較的敏感な部門での雇用の減少は米期の鈍化懸念を意識させるものとなっています。
関連指標を見ていきましょう。
週間ベースの米新規失業保険申請件数(イニシャルクレームス)は、米雇用統計の基準日である12日を含む週のデータで10月は20.0万件、11月は20.9万件となっています。じゃ間11月が弱いですが、ほぼ誤差の範囲です。
1日に発表された米11月のISM製造業景気指数は10月の46.7から横ばいの46.7となりました。市場予想は47.8への改善となっていました。内訳の内、雇用部門は10月の46.8から45.8となりました。改善が期待されていただけに厳しい数字です。先行性があり注目される新規受注が改善しましたが、好悪判断の境である50に届いておらず、前回50を超えていた生産が50を割り込むなど、全体的にかなり厳しい数字となっています。
今後発表される関連指標としては、5日に発表される(日本時間では6日午前0時)米ISM非製造業景気指数は予想が52.0と前回の51.8から小幅改善となっています。前回は5カ月ぶりの低水準となりました。中でも雇用部門は50.2と、9月の53.4から3.2ポイントの大幅な下げとなり全体を押し下げました。好悪判断の境とされる50に迫っている雇用部門がさらに低下しているようだと、雇用統計への警戒感が強まると懸念されます。
ISM非製造業と同時に10月の米企業動態調査(JOLTS)が発表されます。前回は955.3万件と市場予想の928万件前後を超える伸びとなりました。7月に892万件と900万の大台を割り込み警戒された求人件数ですが、その後は持ち直しています。同程度の数字が出ていると、企業側の求人意欲は健在という期待につながりそうです。
6日の11月米ADP雇用者数は前月比12万人増と10月の11.3万人増とほぼ同水準が見込まれています。
こうした状況を受けて今回の雇用統計です。
非農業部門雇用者数の市場予想は20万人増と前回の15万人増から改善見込みです。失業率は前回と同じ3.9%が見込まれています。
予想前後の雇用者数の改善が見られた場合は、米景気鈍化懸念の一服につながりそう。予想を下回り、前回並みの伸びに留まった場合は、早期利下げ期待がさらに強まり、ドル売りが加速する可能性がありそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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