アメリカ中間選挙2022年の行方は?為替市場への影響とドル円の見通しは? ~歴史的なドル高に歯止め~ 桂畑誠治氏
注目の米中間選挙について、識者に特別寄稿をいただいた。民主党バイデン政権への「審判」はいかに。
作成日時:2022年10月26日15時
執筆:第一生命経済研究所 主任エコノミスト 桂畑 誠治氏
目次
▼米中間選挙のポイント
▼バイデン政権 低い支持率のまま選挙日へ突入
▼世論調査による中間選挙予想では、どちらにも過半数の可能性あり
▼ねじれ議会がもたらす「ドル高・円安」局面の転換
米中間選挙のポイント
・アメリカ中間選挙は与党敗北でねじれ議会復活
・政策の停滞がインフレを抑止し、ターミナルレ―ト低下で歴史的なドル高に歯止め
バイデン政権 低い支持率のまま選挙日へ突入
米国では2022年11月8日に中間選挙が行われる。バイデン政権の実施してきた政策に対して、米国民から審判を受ける。
世論調査によると、中間選挙で有権者の最も関心のある問題は経済・インフレとなっているほか、連邦政府が取り組むべき米国の課題として、重要度の高い順にインフレ、犯罪、選挙・投票制度、雇用、移民、インフラ、中絶が挙げられている。しかし、バイデン政権のインフレ、犯罪対策への評価は低く、バイデン大統領の支持率は40%台前半で低迷を続けている。支持率低迷の主因であるインフレ高進への対策として、バイデン大統領は8月16日に「2022年インフレ抑制法」に署名し、同法案が成立した。同法は今後10年に気候変動対策などで4,370億ドルを歳出する一方、政府・上院民主党は税制や薬価に関する改革などで7,370億ドルの歳入が見込まれ、3,000億ドル以上の財政赤字削減に繋がり、インフレを抑制すると主張している。
もっとも、中立的な機関であるCBO(議会予算局)によると、「インフレ抑制法」のインフレへの影響は2023年で▲0.1~+0.1%と限定的なものにとどまると試算されているように、短期的なインフレ抑制効果は期待できない。支持率の上昇に寄与したガソリン価格も10月に上昇に転じるなど、バイデン大統領の支持率が現状の40%台前半で投票日を迎える可能性が高い。
世論調査による中間選挙予想では、どちらにも過半数の可能性あり
米議会の勢力図(10月27日時点)は、上院が民主党50議席、共和党50議席と同数のうえ、下院では民主党220議席、共和党208議席、欠員7議席と、民主党が僅差で議会の過半数を握っている状況である。現職大統領の支持率が低いほど中間選挙で与党が議席を大幅に減らす可能性が高まる。40%台前半の低い大統領支持率では、下院で民主党が40議席程度の議席数を減らすとみられ、民主党が下院では多数党でなくなる可能性が高い。一方、上院の改選は議席数の3分の1であるほか、下院のように共和党が有利になる選挙区割りの変更がないため、現状を維持する可能性がある。
リアル・クリア・ポリティクスが発表している各種世論調査の集計値によると、下院では民主党175議席、共和党225議席が優勢(接戦選挙区は35議席)と、過半数の218議席を共和党が上回っており、共和党の勝利を示唆している。一方、上院では、非選挙の議席を含めて民主党46議席、共和党48議席が優勢、6議席が接戦となっており、どちらにも過半数を握る可能性がある。
ねじれ議会がもたらす「ドル高・円安」局面の転換
中間選挙の結果、上院と下院で多数党が異なる“ねじれ議会”となれば民主党と共和党の対立によって議会で法案の可決が難しくなる。あるいは、上下両院で共和党が過半数を握っても大統領と政策協調ができなければ法案は成立しない。
このため、バイデン政権は2023年以降レイムダック化し、大統領令による限られた政策実現にとどまろう。また、債務上限の引き上げや予算での対立に伴う政府機関の閉鎖などが頻繁に起き、経済成長を抑制する要因となる。
ただし、このような政策の停滞が需要の抑制、インフレ低下に繋がり、過剰な金融引き締めを回避させる可能性を高めよう。
株価は選挙後、先行き不透明感の払拭で上昇する傾向があり、今回も同様の展開が想定される。インフレ高止まり、利上げによる景気後退懸念で調整する局面があるものの、FRBの利上げペース鈍化、利上げ停止観測の強まりによって一時的なものとなろう。
為替市場では、インフレ圧力の緩和、FRBの利上げペース鈍化、利上げ停止観測の強まりを受け、歴史的なドル高局面の転換点を迎える公算が大きい。
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調査研究本部 経済調査部・チーフエコノミスト
桂畑 誠治氏
担当は、米国経済・金融マーケット・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
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