アメリカ中間選挙(2022年)の見通しと選挙後の政局と経済 ~トランプ前大統領の復活~ 中岡望氏
注目の米中間選挙について、識者に特別寄稿をいただいた。民主党バイデン政権への「審判」はいかに。
作成日時:2022年10月26日14時
執筆:ジャーナリスト 中岡望 氏
目次
▼アメリカ中間選挙は2022年11月8日
▼過去のアメリカ中間選挙の傾向とは?
▼2022年アメリカ中間選挙の最新の予想とは?
▼2022年アメリカ中間選挙でバイデン政権はどうなる?
▼2022年アメリカ中間選挙の影の主役とは?
▼2022年アメリカ中間選挙の為替相場への影響とは?ドル高・円安トレンドへの変化とは
アメリカ中間選挙は2022年11月8日
11月8日に行われるアメリカの中間選挙の投票日が近付いた。今回の選挙では、上院議員100議席のうち改選議席は35議席、党派別内訳は共和党が21議席、民主党が14議席である。これに加えて特別選挙(補欠選挙)が2選挙区で行われる。改選前の勢力は、与党民主党が50議席、野党共和党が50議席と同数である。今回の選挙で1議席を増やせば、その党は上院の過半数を占めることになる。下院は435議席全議席で改選が行われる。改選時の下院の党派別議員の数は、民主党が220議席、共和党が212議席、欠員が3議席である。
過去のアメリカ中間選挙の傾向とは?
過去の中間選挙を見ると与党が苦戦を強いられている。戦後行われた19回の中間選挙で、下院で与党が議席を増やしたのは2回、上院では5回ある。中間選挙は政府の政策の評価が行われるため、与党に厳しい結果が出ることになる。今回の中間選挙も同様な傾向が見られる。過去の例に加えて、バイデン大統領の支持率が低迷していること、インフレ高進など経済状況が悪化しているという民主党にとって不利な状況のもとで選挙が始まった。当初、民主党が両院で大敗すると言うのが一般的な見通しであった。だが、6月末に最高裁が女性の中絶権を認めた「ロー対ウエイド判決」を覆したことで、リベラル派が反発し、一転して接戦となっている。
2022年アメリカ中間選挙の最新の予想とは?
RealClearPoliticsの予想では、下院選挙では民主党が175議席、共和党が225議席を固め、35議席で競合している。他の予想でも同様な傾向が見られ、最終的に大差で民主党が敗北する見通しである。同予想では、上院は共和党が3議席増やすと予想されている。ただFiveThirtyEightの予想では、民主党が過半数を確保する確率は54%となっている。バージニア大学のサバト教授の予想では3つの激戦区の結果次第では両党とも過半数を確保する可能性が残っている。激戦区は選挙ごとに党派が変わる選挙区で、今回はネバダ州とジョージア州、ペンシルバニア州の結果に掛かっている。
2022年アメリカ中間選挙でバイデン政権はどうなる?
二つの可能性がある。下院は共和党が過半数を制するのは間違いない。一つのシナリオは共和党が上院の過半数を占めるもので、もう一つは民主党が過半数を確保するものである。いずれのシナリオもバイデン政権は極めて厳しい状況に追い込まれるだろう。仮に民主党が上院の過半数を確保したとしても、共和党は法案成立の阻止を図るだろう。共和党が両院の過半数を占めた場合、バイデン政権は完全にレームダック化し、機能麻痺を起こすだろう。特に国債発行限度額の引き上げには議会の承認が必要で、共和党が阻止するのは間違いない。バイデン政権の政策の柱であるインフラ投資計画も齟齬をきたす可能性がある。FRBの高金利政策に加え、財政政策も頓挫することになれば、アメリカ経済がリセッションに陥る可能性は高まるだろう。
2022年アメリカ中間選挙の影の主役とは?
今回の選挙の“影の主役”はトランプ前大統領である。彼は多数の共和党候補者を支援しており、共和党の勝利はトランプ勝利を意味する。共和党支持者の60%以上がトランプ前大統領の2024年の大統領選挙出馬を支持している。トランプ前大統領は共和党勝利を背景に11月中に大統領出馬宣言を行うと見られている。中間選挙後の焦点は大統領選挙に移るだろう。
2022年アメリカ中間選挙の為替相場への影響とは?ドル高・円安トレンドへの変化とは
中間選挙の結果が直接、為替相場や株式相場に影響を与えることは少ないだろう。政局の混迷を嫌い、一時的に株安局面がみられるだろうが、株価動向の基本は経済動向と金利政策によって決まる。景気低迷状況に陥ってもFRBは高金利政策を変更することはないだろう。FRBが最も恐れているのは賃上げによるコスト・プッシュ・インフレである。そうした状況を考えると、ドル金利高は続き、為替相場のドル高基調に大きな変化はないだろう。為替相場が転換するのは、政策変更があった時である。
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ジャーナリスト、元東洋英和女学院大学副学長 国際基督教大学卒。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1973年東洋経済新報社に入社。『週刊東洋経済』編集委員、『会社四季報』副編集長などを務め、2002年退社。フリーのジャーナリストへ。 1981~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院フェロー。1993年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年、ワシントン大学(セントルイス)ビジティング・スカラー。東洋英和女学院大学教授(国際経済学、公共選択などを担当)、同大学副学長を経て、2016年より現職。ジャーナリストとしても、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。
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