為替相場まとめ8月29日から9月2日の週
29日からの週は、ドル買いの動きが広がった。前週末のパウエルFRB議長講演で景気後退となってもインフレが抑制するまで利上げを継続する、との強い姿勢が示されたことが背景。市場にドル買い安心感を広げた。一方、日銀の黒田総裁は緩和継続以外の選択肢はないと発言しており、日米の金融スタンスの差が一段と拡大した。また、8日に理事会を控えるECBメンバーからも75bp利上げを主張する声が高まっており、日欧の金融スタンスの差も拡大している。ドル円、ユーロ円ともに買われた。ドル円は24年ぶりの140円台乗せ。ユーロ円も140円近辺に上昇。ドル相場全体ではドル高圧力が優勢。ポンドドルは一時1.15台割れ、豪ドル/ドルは0.67台へと下落した。一方、ユーロドルはパリティ水準を挟んで綱引き状態になっている。ユーロは対ポンドでも堅調。英欧ともに高インフレが景気後退リスクを高めているが、英国ではさらに次期新首相のもとでの政策が不透明であることが不透明感を広げていた。一方、ユーロ相場にとっては天然ガス先物が低下していることも支援材料。予定より早く備蓄が進展していることや、ロシアからのガス供給再開期待も広がった。週末の米雇用統計は依然タイトな米労働市場に若干の緩和の兆しを見せた。非農業部門雇用者数(NFP)は31.5万人増と予想を若干上回った一方、失業率は3.7%に悪化した。注目だったのが労働参加率が62.4%に上昇したこと。特に女性が参加率を押し上げたようだ。パンデミックで労働市場から一時離れていた人々が戻りつつあるのかもしれない。労働人口が増加するにつれ賃金の伸びは鈍化し、いずれインフレの落ち着きに貢献する可能性がある。
(29日)
東京市場は、ドルが全面高。先週末のジャクソンホール会議でのパウエル議長講演を受けて、9月の大幅利上げ観測が高まったことが背景。市場での利上げ幅見通しは0.75%が75%、0.50%が25%となっている。米10年債利回りは6月29日以来、約2ヶ月ぶりの高水準となっている。ドル円は137円台半ばでスタート後、すぐに138円台に乗せると、そのままの勢いで午後には139円ちょうど前後まで上昇した。円に関してはジャクソンホール会議で黒田日銀総裁が緩和継続以外の選択肢はないと発言したことが円売りを誘っており、ドル全面高の流れの中でも特にドル円が上がりやすくなっていた。ユーロドルは0.99台後半から0.9914まで下落。ドル高基調の中、ユーロ売りドル買いが進んだが、ドル円ほどの動きにはならず。ドル主導の中、やや方向感がわかりにくいユーロ円は137円ちょうど近くから137.82レベルを付けるところまで円売りが入った。
ロンドン市場は、ドル買いに調整が入った。ドル円は東京市場で139円の大台を付けた後、売りに押された。英国がバンクホリデーで休場となっており、取引参加者が少なくなっていることも調整につながったようだ。138.30台まで反落。ただ、買い戻しに138.60台まで再び上昇した。ユーロドルは買い戻しが入り、パリティ水準を回復すると1.0030付近まで上昇。週末にはホルツマン・オーストラリア中銀総裁やクノット・オランダ中銀が9月のECB理事会での0.75%利上げの可能性に言及したことを、欧州勢が改めて材料視した面も指摘された。ユーロ円は東京市場から引き続き堅調で、137円台後半から138円台半ばへと一段高に。週末にジャクソンホール会議でのパネルディスカッションで黒田日銀総裁が緩和維持以外の選択肢はないと発言したことなどが円売りを誘った形。
NY市場では、ドル売り一巡後は値動きが落ち着いた。ドル円は序盤に138円台前半へと軟化したが、その後は138.90付近まで再び上昇した。ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが膨らみ、パリティ(1.00ドル)を一時回復。ただ、パリティを回復すると戻り待ちの売り圧力も強まるようで、再び0.99台に値を落とす動きも見られている。先週はパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演で、「インフレ対策として金利をさらに上昇させる必要がある」と述べたことを受けてドルが上昇。FRBは、利上げが自国経済に大きなリスクとなっている他の中央銀行とは一線を画している雰囲気もある。これは明らかにタカ派なFRBと、タカ派ではあるが懸念を募らせているECBなど他の中央銀行との間のかい離を背景にした動きだとの指摘も聞かれる。一方、ECBにも0.75%利上げの可能性を探るタカ派の意見があり、綱引き状態に。ポンドドルは序盤に1.17台前半へと買われた後は、一時1.17台割れと売買が交錯した。東京午後には一時1.16台半ばと2020年3月以来の安値水準を付ける場面があった。市場からは、英経済は第4四半期からリセッション(景気後退)に入り、来年の第2四半期までに実質GDPが1%程度縮小するとの予想も。
(30日)
東京市場で、ドル円はやや頭の重い展開だった。前日はロンドン勢不在の欧州市場でドル円はいったん調整売りとなり138円台前半に値を落とした。その後、NY市場で138.80台まで戻して東京朝を迎えた。東京市場ではドル買い円買いの動き。リスク回避の意識が強く、ドル円は138円台前半へ軟化。ユーロドルはNY市場で回復したパリティを割り込み0.9982を付ける動き。午後に入ってユーロドルは買い戻しが入り、パリティを回復。目立った方向性はみられず。ユーロ円は午前の安値から昼前に138.60台まで回復も、その後138.40割れとなった。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。欧州株や米株先物が堅調に推移し、パウエルFRB議長講演を受けた株式市場の警戒感は一服。リスク警戒のドル買いに巻き戻しが入った。ドル円はロンドン序盤に138.60付近から138円台前半へと下押し、足元ではさらに138.05近辺へと安値を広げている。米債利回りが低下、10年債利回り3.10%付近から3.05%付近へと水準を下げている。ユーロドルはしばらく1.0000のパリティ付近で揉み合ったが、一気に1.0025近辺に上昇したあと、高値を1.0055近辺へと伸ばした。ポンドドルも1.17ちょうど付近から一時1.1760近辺まで上昇。しかし、その後は対ユーロでの売りもあって1.17台前半に押し戻されている。この日発表された一連のドイツ各州消費者物価指数は前年比が一段と上昇、一方でユーロ圏景況感は2か月連続での100割れと低迷した。英消費者信用残高は前年比6.9%増となったが、インフレの影響が色濃く出た可能性もあり、消費の強さを示したものかどうかは不透明。米大手金融機関からは来年初頭にはインフレが20%超となり、来年のマイナス成長の予想が伝えられている。クロス円は欧州株高を受けて円売りが先行も次第に上げを失っている。ユーロ円は138円台での上下動、ポンド円は162円付近から162円台半ばで上に往って来い。
NY市場では、一転してドル買いが強まった。ドル円は139円台に一時上昇。米株式市場でダウ平均が一時400ドル超下落するなどリスク回避の雰囲気が強まり、ドル買いを誘発した。この日発表の米消費者信頼感指数や求人件数が強い内容となり、FRBのタカ派姿勢を正当化する内容となったことに反応した。市場では、金曜日のパウエルFRB議長の講演で、インフレ抑制に向けたFRBのコミットメントを再確認したことから、ドルはしばらく堅調に推移するとの声も多い。ユーロドルは一時0.99ドル台に伸び悩む動きが見られたものの、買戻しの機運も出ており、パリティ(1.00ドル)の水準は維持している。先週のパウエルFRB議長の講演でFRBのタカ派姿勢が確認されたが、ECBもタカ派姿勢になるとの見方がユーロの下値を支えているようだ。バスレ・スロベニア中銀総裁は、7月の0.50%ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを来週の理事会で支持すると述べていた。ポンドドルは一時1.1620付近まで下落し、2020年3月以来の安値水準を更新。過熱感を測るRSIが30付近まで低下しており、下げ過ぎ感も台頭しているが、ポンドはガス危機と構造問題を抱え、回復に苦戦するとの指摘も根強い。
(31日)
東京市場では、ドル高に対する調整が入った。ドル円は朝方の138円台後半から徐々にドル売りに押された。午前の取引で138円台半ばを割り込むと、午後に入ってからも売りに押されて138.33近辺まで下落した。昨日の海外市場、ドル高局面では1ユーロ=1ドルを割り込む動きを見せたユーロドルは、その後少し買いが入り、1.0010台で東京市場を迎えた。1.0046近辺まで一時反発。来週のECB理事会での0.75%利上げへの期待が支えとなっている。ユーロ円は目立った動意が見られず139円ちょうどを挟んだレンジ取引に終始した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。ユーロ売り・ドル買いの動きが主導している。ユーロドルは1.0050手前で上値を抑えられるとパリティ割れから0.9970台へと下押しされている。ポンドドルも1.17手前まで買われた後は売りの流れに転じ、1.1610台へと下落。ドル円は連れ高となり、138.20台から138.90付近へと買われた。米10年債利回りが3.09%付近から3.19%付近へ上昇する動きがドル買い圧力に。また、欧州経済への不透明感が欧州通貨売りを誘った面も。8月のイタリアとユーロ圏消費者物価が予想以上の上昇となり、ナーゲル独連銀総裁は、この結果を受けて「ECBは9月に強力な利上げが必要に、来週は決定的な行動が緊急に必要だ」と表明した。また、きょうから9月2日までロシアがノルドストリーム1のガス供給をメンテナンスのため停止するとしており、欧州天然ガス先物が上昇。2日以降の停止リスクも不安材料となっている。欧州株は買い先行も、下落へと転じている。
NY市場では、月末とあって積極的な売買が手控えられた。そのなかではユーロドルの上昇が目立った。0.99台後半からロンドンフィキシングにかけて1.0080付近まで急速の上昇。月末フローが活発に入ったもよう。この日は8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)が発表され、総合指数で9.1%まで上昇していた。それに伴ってECBの利上げ期待も高まっており、短期金融市場では、中銀預金金利が10月までに1.25%まで上昇する可能性を織り込む動きが出ている。9月か10月の理事会での0.75%利上げの可能性を意味する。ポンドドルは1.16ちょうど付近でサポートされると1.1650付近まで買い戻された。しかし、上値は重く午後には1.16台割れを試す動きに。天然ガス価格の高騰で英インフレは来年に22%を超える可能性との指摘があるなかで、英景気後退観測が高まっている。ドル円は138円台半ばから後半での揉み合い。140円に向けた動きの可能性は温存している状況。
(1日)
東京市場で、ドル円は24年ぶりの高値水準に上昇。朝方のドル買いの動きで、7月につけた高値139.39レベルを上回り、139.68レベルと1998年以来、24年ぶりの高値水準をつけた。その後は高値圏推移が続いた後、株安の動きを受けた円買い圧力に押されて午後には139円台前半に調整された。来週のECB理事会での0.75%利上げ期待から海外市場で1.0080近くまで上昇したユーロドルはNY午後の1.0050前後でのもみ合いから、東京朝のドル買いに1.0020前後まで軟化、その後もユーロ売りの動きが継続し1.0008レベルを付けた。ユーロ円はドル円の上昇もあり午前中に140円ちょうどを付ける動き。午後に入ってドル円の調整とユーロドルの軟調地合い維持に139.50台まで反落した。
ロンドン市場は、根強いドル高圧力が広がった。特にポンドドルの下げが主導。序盤の1.16台乗せは一時的にとどまり、1.1550台まで下押しされている。2020年3月以来の安値水準に。英米欧の金融政策会合が9月に開催されるが、米欧で0.75%の大幅利上げ観測が台頭する一方で、英中銀についてはそれほどの利上げ幅観測が広がっていない。英新首相候補らが減税など景気対策に軸足を置くなかで、英中銀が大胆なインフレ対応がしにくい面も。高インフレ、来年のリセッション観測が広がるなかで、英経済は厳しい状況にある。ユーロドルは1.0050付近で上値を抑えられたが、下値も1.0003近辺までと方向性に欠ける揉み合い。ユーロ圏製造業PMI確報値は英国の数字とともに50割れと低迷した。ただ、ユーロは対ポンドでの買いが下支えになった面もあり、下落の動きは限定的だった。ドル円は東京市場で139.68近辺まで買われ、24年来の高値水準をつけたが、ロンドン市場では一時139.06近辺まで下押しされた。米債利回りが小幅に低下したことも重石だった。しかし、足元では139円台前半で下げ一服となっている。
NY市場で、ドル円は98年8月以来の140円台に上昇。この日発表の8月の米ISM製造業景気指数が52.8と前回と変わらずだったものの、予想を上回ったことがドル買いを誘発した。ここ数カ月冴えなかった新規受注や雇用指数が一気に50を回復し、総合指数は前回と変わらずだったものの、詳細は強い内容だったと言える。ただ、140円台に入ると、輸出企業などの実需筋やオプション絡みの売りオーダーも並んでいるようだ。明日の東京市場でも話題となりそうで、財務省の動きも警戒されるが、介入は口先だけに留まるものとみられる。ユーロドルはドル買いに押されて0.99台前半まで下落。目先は8月23日安値0.99ちょうど付近が下値メドに。ポンドドルも売りが加速し、瞬間的に1.15台を割り込んだ。2020年3月以来の安値水準。他のG10通貨と比較しても弱い値動きが続いているポンドだが、最近のポンド下落は英経済が直面する逆風への懸念を反映している可能性が指摘された。ポンドは目立ったマクロ経済ニュースに欠けるなかで低調に推移している。来週月曜日にはトラス外相が次期首相に指名される可能性が高まっており、新政権下での政策変更をめぐる不透明感も重石に。
(2日)
東京市場は、ドル円が再び高値を伸ばした。ドル円は朝方に140.24近辺まで上昇し、海外市場の高値を超えた。いったん調整が入って140円を割り込んだものの、その後再び140.40近辺に高値を伸ばした。ユーロドルではドル高が一服。昨日の海外市場でのドル高局面で0.9910台まで値を落としたユーロドルは0.9950前後まで値を戻して東京朝を迎え、東京市場ではじりじりとユーロ買いが入る形で0.9970台まで上昇。昨日1.1500近くまで値を落とし、その後1.1550前後まで戻して東京市場を迎えたポンドドルが、1.1550を挟んでの推移が続くなど、ドル円を除くとドル高は一服している。ユーロドルがしっかりで、ドル円が大きく買われる中、ユーロ円も買いが入っており140円近くを付けている。
ロンドン市場は、ユーロが堅調。ユーロドルはロンドン午前に一段高となっている。0.99台後半から一時1.0017レベルまで高値を伸ばした。欧州天然ガスをめぐる不透明感が緩和されていることがユーロ買いを誘ったようだ。ただ、ロンドン昼に向けては次第に動意を失っており、パリティ付近に落ち着いてきている。ユーロ円は140円台にしっかりとのせ、140.53レベルまで高値を伸ばした。足元では140円台前半に上昇一服。ドル円は140円台で高止まり状態。そのなかで一時140.43レベルと24年来の高値水準を小幅に更新している。欧州株の堅調とともに、米株先物も下げを消して揉み合いに。米10年債利回りは一時3.23%付近まで低下も、足元では3.25%と前日終値付近に落ち着いている。全般的に米雇用統計待ちのモードに入っていた。
NY市場は朝方発表の8月の米雇用統計を受け前半はドルの戻り売りが優勢となった。ただ、中盤になって市場はリスク回避の雰囲気を一気に強め、対欧州通貨中心にドルは買い戻しが強まる展開となった。きっかけはロシアのガスプロムがメンテナンスのために稼働を停止していたノルドストリームを、新たな技術的問題が発見されたとして、予定通り再開できないと発表したこと。土曜日に再開される予定だった。ただ、雰囲気を一変させるほどの材料とも思えず、地合いの弱さを感じさせる展開ではある。
執筆者 : MINKABU PRESS
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