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何が変わり、何が変わらなかったのか… 米大統領選挙の結果を読む ジャーナリスト 中岡望 米大統領選2020

マネ育チャンネル 

米大統領選2020

2020年大統領選挙の結果をどう読むかー何が変わり、何が変わらなかったのか

 大統領選挙は終わった。州別に割りてられた選挙人の獲得数では、バイデン前副大統領が306人と、トランプ大統領の232人を大きく上回った。当選に必要な選挙人の数は270人である。この数字を見る限り、バイデン前副大統領の“地滑り的勝利”と思われる。だが得票率ではバイデン前副大統領は51.0%を獲得したに過ぎない。一方、トランプ大統領は47.3%を獲得、票数で7200万票を記録している。

 連邦議会選挙を見ると、下院では、民主党は前議会に続き過半数を維持したものの、議席を失っている。上院では民主党が過半数の50議席以上を奪回するのではないかと予想されたが、現時点で非改選を含め共和党が50議席、民主党が48議席となっている。残りの2議席は来年1月にジョージア州で行われる決戦投票で決まることになる。すなわち上院選挙で誰も50%以上の票を獲得できない場合、上位2名による決戦投票が行われる。ジョージア州はバイデン前副大統領が僅差で勝利した州であるが、もともと保守的な州であり、決選投票で民主党が2議席確保する可能性は薄いと盛られている。仮に民主党が2議席を確保できれば、上院の勢力図は50対50になる。上院総会で投票数が同数になった場合、上院議長が一票を投ずることになる。上院議長は副大統領が務めることになっており、民主党は法案を可決することができる。ただ、2つの決選投票のうち、一つでも落とせば、民主党は上院では少数与党になり、上院と下院が分裂することになる。

選挙結果をめぐる争いは泥沼化

 トランプ大統領と共和党は、選挙で不正があったとして、大統領は慣例の「敗北宣言」を拒否し、州裁判所に選挙無効を訴えている。各州は11月20日までに、選挙結果を確認して発表しなければならない。トランプ陣営は訴訟に持ち込み、州の選挙委員会の投票結果承認を阻止し、最高裁にまで持ち込みたい意向を持っている。あるいは、州政府が投票結果を承認できなければ、選挙投票の結果に関わりなく、州議会が選挙人を選ぶことができる。共和党が知事と議会を確保している州は、法的にトランプ大統領に投票する選挙人を選ぶことができる。選挙結果を巡る争いは泥沼化する気配を見せている。ただ、今までのところ、州裁判所はトランプ陣営の訴えを受理していない。各州当局が選挙結果を承認すれば、トランプ陣営の戦略は失敗に終わるだろう。

 選挙を巡る争いはあるが、最終的にバイデン新政権が1月20日に成立することは間違いないだろう。バイデン次期大統領は“国民の統合”を訴え、自分は「アメリカ合衆国の大統領になる」と「勝利宣言」で誓っている。だが、選挙を巡る泥沼の争いに見られるようにトランプ支持派や共和党は、民主党やバイデン次期大統領に対して対決姿勢を強めている議会では、反バイデンで一致団結するだろう。2009年にオバマ政権が発足したとき、共和党は非妥協の姿勢を取り、法案審議で徹底抗戦の構えを8年間崩さなかった。同様な事態が起こる可能性は強い。議会での分裂は避けられないだろう。

コロナ禍の郵便投票で100年来の投票率に

 今回の選挙の特徴は、黒人票が大量にバイデン支持に回った。ヒスパニック系も大勢としてはバイデン副大統領支持であったが、フロリダ州ではかなりの票がトランプ大統領に流れ、バイデン前副大統領は敗北を喫した。今回の選挙の特徴の一つは、初めて投票した人の60%以上がバイデン副大統領に投票していることだ。今回は新型コロナウイルス感染の拡大で、各州で郵便投票が取り入れられた。その結果、従来、投票しなかった有権者もこぞって投票し、投票率は100年来の最高を記録した。それがバイデン前副大統領に幸いした。2016年の選挙では、トランプ候補が選挙に背を向けていた白人労働者を掘り起こし、投票所に向かわせたことが、大きな勝因となった。今回は、バイデン前副大統領が新規の票を掘り起こすことに成功して、当選を果たした。

 では、民主党はどう動いたのか。民主党右派、左派とも、政策の違いを乗り越え、「反トランプ」「トランプ下ろし」で一致団結した。出口調査でも、バイデン副大統領に投票した大きな理由に「トランプ大統領に反対するため」という答えが多かった。さて、大統領選挙で勝利した後、民主党は選挙中と同じように一致団結してバイデン政権を維持できるのだろうか。バイデン前副大統領は民主党中道派。穏健派の政治家である。民主党は選挙で勝つためには、国民の統合を呼びかける中道派の候補者が必要であり、トランプ陣営の「社会主義」批判を避けるためにも穏健派の候補が必要だった。それがバイデン前副大統領である。

2民主党内の左派との対立の可能性

 しかし、具体的な政策運営が始まった時、民主党はバイデン次期大統領のもとに結集できるのだろうか。民主党左派には、サンダース上院議員やウォーレン上院議員、アレキサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員などがいる。彼らは、環境問題でグリーン・ニューディール政策や学生ローン免除などの政策を訴えている。こうした左派の政策の採用に対してバイデン前副大統領は消極的である。場合によっては、民主党内の対立が表面化する可能性もある。また、下院では選挙で議席を失った責任を巡ってペロシ下院議長に対して若手議員から責任を問う動きもでてくるだろう。バイデン前副大統領は自ら1期限りの大統領であり、過去と未来を結ぶのが責任だと語っている。アメリカの一部のメディアは「バイデン政権は発足当初からレームダック化する」と書いている
 
 他方、共和党はトランプなき後の党の立て直しに迫られるだろう。だが、トランプ大統領が持ち込んだポピュリズムは共和党の政策の基調になっている。民主党首脳部のエリート主義に対する攻撃を強めてくるだろう。

 リベラル派は、バイデン前副大統領の勝利の美酒に酔っている余裕はない

f:id:gaitamesk:20050928094155j:plain中岡 望 氏
ジャーナリスト、元東洋英和女学院大学副学長 国際基督教大学卒。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1973年東洋経済新報社に入社。『週刊東洋経済』編集委員、『会社四季報』副編集長などを務め、2002年退社。フリーのジャーナリストへ。 1981~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院フェロー。1993年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年、ワシントン大学(セントルイス)ビジティング・スカラー。東洋英和女学院大学教授(国際経済学、公共選択などを担当)、同大学副学長を経て、2016年より現職。ジャーナリストとしても、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。
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