「南アランド上昇のカギはゴールドにあり」江守 哲氏 特別寄稿
南アフリカの通貨ランドは堅調に推移する可能性がある。南アフリカ共和国といえば、世界のプラチナ生産の7割を占めており、プラチナ価格との連動性が指摘されることが多い。しかし、プラチナはディーゼル車の窒素化合物を除去する自動車触媒の原材料だが、欧州市場が主流のディーゼル車の販売が低迷し、価格は落ち込んだままである。一方、最近になって史上最高値を更新し、世界の投資家の注目を集めている金(ゴールド)においては、1990年代には生産国でトップだった。いまは第7位に落ち込んでいるが、それでも世界の金生産量の約4%を占めている。ちなみに、世界最大の金生産国は中国で、14%を占めている。
南アランドは従来からプラチナ価格との連動性が強い。ドル建てのプラチナ価格が上昇すれば、輸出価格が上昇するため、その分手取り価格の南アランドが上昇することで調整される。近年のプラチナ相場の上値の重い状況は、南アランドの下落につながりやすい材料である。一方、金価格の上昇が堅調なため、南アランド建ての金価格は高騰しており、ランド建ての手取り収入は過去最高水準となっている。最近はプラチナと金の価格差が広がっているが、金価格の高騰がプラチナ相場にも波及し、両者の価格差が縮小に向かえば、南アランドはプラチナ価格の上昇につれる形で、対ドルで上昇しやすくなろう。
一方、今年3月に格付け機関ムーディーズは「財政的に不安定であること」などを理由に、南ア国債の格付けを「Baa3」から「Ba1」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。国営電力会社「エスコム」の不安定な電力供給により、2019年の経済損失は8000億円超ともみられている。電力不足で最大の産業である鉱山での採掘作業が止まれば、経済的損失は計り知れず、南ア経済を取り巻く環境は厳しいといえる。一方、ラマポーザ大統領が、南アが抱える労働争議や汚職などの問題を解決できれば、政治的な不安定感の払しょくにつながる可能性がある。また、南アは中国を最大輸出国としており、中国経済ひいては世界経済の動向にも注意が必要である。
南アフリカの第2四半期GDPは年率換算で前期比51.0%減となり、4四半期連続でマイナス成長となった。新型コロナウイルス感染抑制で厳しいロックダウンを実施したことが影響した。特に鉱業が73.1%減と大きく減少している。金やプラチナ生産が回復することは、南アランドの上昇に不可欠な要素になるだろう。南アランドを見るうえでは、幅広い材料に目を配りながら、金やプラチナの価格動向に注目しておきたい。金価格の上昇基調が強まれば、連れるように南アランドの水準も引き上げられていくだろう。
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