「激戦州で劣勢 トランプ大統領の焦り」ジャーナリスト 中岡望 米大統領選2020

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大統領選挙は新型コロナウイルス感染問題で影が薄くなっている。民主党はジョー・バイデン候補が事実上、党の候補者になることは決まっている。ただ8月に予定されている民主党全国大会の開催が危うくなっている。大統領選挙は一種のお祭りで、その最大のイベントが全国大会である。ここで気勢を上げ、その勢いで本選挙が戦われる。だが今年はメール投票になる可能性もある11月の本選挙も場合によってはメール投票という事態もありうる。メール投票を巡って民主党と共和党は対立している。メール投票となれば投票率が上昇する可能性があり、民主党に有利に働く。共和党はそうした事態を避けたいため、法廷での争いも辞さない構えである。

大統領選挙運動は表面上停止しているように見える。ただトランプ陣営もバイデン陣営も水面下では着実に11月の本選挙に向けた準備を進めている。ただ新型コロナウイルス感染問題がどう展開するかで、大統領選挙の結果が大きく変わってくる可能性があり、最終的な結果を予想するのは時期尚早である。

両陣営が注力しているのは、それぞれの支持層を固めることだ。共和党支持層のトランプ大統領支持は圧倒的である。非営利の世論調査機関PRRIの調査(4月30日)よれば、共和党支持者のトランプ大統領支持率は90%に達している。昨年8月の時点で77%と比べると、13ポイントも上昇している。新型コロナウイルス問題がトランプ支持に影響を与えていないように見える。トランプ大統領は共和党の支持基盤を固めることに注力している。エクセントリックと思えるトランプ大統領の発言は、もともと国民全体に向けたものではなく、共和党内の支持層に向けたものである。大統領選挙は間接選挙で、州ごとに選挙が行われ、州に割り当てられた選挙人の獲得数で選挙の勝敗が決まる。「勝者総取り制度」で、一票でも多く票を獲得した候補者が州に割り当てられた選挙人をすべて獲得する。いかに総得票数が多くても、選挙人獲得数が少なければ敗北する。2016年の大統領選挙でも、ヒラリー・クリントン候補は総得票数でトランプ候補を上回ったが、獲得した選挙人で下回り、敗北を喫した

大統領選挙にはもうひとつ大きな特徴がある。50州のうち多くの州の有権者は支持政党を変えることはない。たとえばカリフォルニア州は常に民主党の大統領候補に投票している。常に候補者がだれであろうが決まった政党の候補者が投票する。だが幾つかの州では大統領選挙のたびに支持政党が変わる。こうした州を“swing state”あるいは”battle ground state (激戦州)“と呼ぶ。極論すれば、激戦州を制した候補者が大統領選挙に勝利するといっても過言ではない。前回の大統領選挙で激戦州を制したのはトランプ候補であった。特に古い製造業を抱える”ラスト・ベルト“にある激戦区での勝利がトランプ候補勝利の原動力であった。したがって今回の大統領選挙でトランプ大統領が再選を果たせるかどうかはラスト・ベルトの激戦区で再び勝利できるかどうかにかかっている。

だが、最近の世論調査を見ると、ラスト・ベルトの激戦州でトランプ大統領が劣勢に立たされている。たとえば、Fox Newsの調査では前回、トランプ候補が制したミシガン州ではバイデン候補がトランプ大統領を8ポイントもリードしている。ペンシルベニア州も同様にトランプ大統領がバイデン候補の後塵を拝している。前回の大統領選挙で1984年以来、初めてトランプ候補が勝利したウィスコンシン州でもトランプ大統領の苦戦が伝えられる。現在、バイデン候補が6つの激戦州(ペンシルバニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州、フロリダ州、アリゾナ州、サウスカロライナ州)のうち5州でリードしている。

トランプ大統領は、こうした州を失うわけにはいかない。ラスト・ベルトの州は国際化の中で雇用喪失した州である。前回の大統領選挙で、トランプ候補はこうした州の国際化で大きな被害を受けている“低学歴の白人労働者”にアピールすることで選挙での勝利を得た。しかし、この3年間で製造業の雇用回復は見られない。再び彼らを投票所に向かわせるためには改めて強力なアピールが必要である。トランプ大統領が多くの医療専門家の批判を無視して経済再開を主張するのは、経済活動の中止で大きな影響を被っている低所得層の労働者に配慮してのことである。またトランプ大統領の中国批判は常軌を逸していると思われるが、中国攻撃の背後には白人労働者のトランプ離れを食い止める狙いもあると思われる。同時に、もう一つの狙いがある。それはバイデン候補の中国に対して軟弱な姿勢を批判することだ。

最近の世論調査で明らかなもう一つの傾向は、高学歴の白人女性と高齢者のトランプ離れがみられることだ。郊外に住む富裕層の白人女性のトランプ離れは2018年の中間選挙でも見られた。共和党は下院で惨敗したが、その最大の要因はもともと保守的で共和党支持だった白人女性が民主党候補に投票したことだ。その傾向は現在も続いている。特にそうした女性は新型コロナウイルス感染問題に敏感で、トランプ大統領のコロナウイルス対策に不満を抱いている。同様に高齢者のトランプ離れも見られるが、白人女性同様に健康問題に対する懸念からトランプ批判を強めている。トランプ大統領がコロナウイルス封じ込めに成功するかどうかが、大統領選挙の結果に大きな影響を与えることになるのは間違いない。

バイデン候補も支持層固めを進めている。既に選挙での勝利を見込み、政権移行チームの結成を明らかにしている。さらに選挙前に閣僚を決定する意向も示している。そして、最大のポイントは、副大統領候補の選択である。バイデン候補は副大統領に女性を起用する意向を明らかにしている。バイデン候補の最大の弱点は、若者層の支持がないことだ。そのため大統領予備選に立候補した左派のエリザベス・ウォーレン上院議員を指名するとの予測も流れている。ただ、バイデン候補は人種的に多様な人材を登用すると語っており、黒人女性も有力視されている。オバマ候補が選挙運動の中で“ムーブメント”を作り上げて当選した。トランプ候補も同様な“ムーブメント”を共和党内に作り上げた。自らを“次の世代への移行期の大統領”と規定するバイデン候補だが、それだけでは勝利を手にすることはできないだろう。

新型コロナウイルス感染で株式市場も為替市場も異常な状況になっている。株価は日米乱高下を繰り返し、実態から乖離した動きを見せている。現在は“新型コロナウイルス相場”だが、一段落すれば“業績相場”に移り、もう一段の大きな下げがありうるだろう。為替相場も方向性をなくしている。経済のファンダメンタルズや金利差など、従来の相場決定要因とは関係ない動きをしめしている。短期でもれば、為替相場が大きく変動する場面は見られないだろう。

f:id:gaitamesk:20050928094155j:plain中岡 望 氏
ジャーナリスト、元東洋英和女学院大学副学長 国際基督教大学卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1973年東洋経済新報社に入社。『週刊東洋経済』編集委員、『会社四季報』副編集長などを務め、2002年退社。フリーのジャーナリストへ。 1981~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院フェロー。1993年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年、ワシントン大学(セントルイス)ビジティング・スカラー。東洋英和女学院大学教授(国際経済学、公共選択などを担当)、同大学副学長を経て、2016年より現職。ジャーナリストとしても、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。
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