米中協議、不調との観測で動けず
軟調のまま、凪(なぎ)状態の東京市場
先週末の米国株市場の相応の反発にもかかわらず、東京市場は始め買い先行だったものの、すぐに軟調推移。
ひどい売られ方ということではなく、小幅安ですが、元気がありませんでした。
これは、朝方からグローベックス市場の米国株先物市場が気配を切り下げていったためでしょう。
当初30-50ドル安の気配だったのが、70ドル安、120ドル安という切り下げでした。
きっかけとなったのは米中協議です。本日すでに次官級の協議が始まっているようですが、閣僚級協議が10日からです。
決裂であれば、15日からアメリカは関税引き上げに踏み切ることになります。
当初、中国は譲歩するのではないかという観測もあったのですが、本日の時点ではロイターが伝えた、「中国側は協議合意に消極的」という観測報道でした。
これで、グローベックス先物が冷えてしまったようです。
日本はそれで大きく売り込まれるということは無かったのですが、軟調のまま終日推移しました。
ただ、そういう環境にもかかわらず、売り方が目立って攻めてこないという点が不可解です。
結局売り方が相場の方向性を決めているのですから、ここで売りが出てきていません。売りも先週までの一巡後、改めて今週売りから入ると言う動きがどうも鈍いようです。これが何を意味するのか、まだ不透明です。
今週は、週末日本市場が3連休となるので、これも微妙に影響しているかもしれません。買い気が出てくる環境ではないということです。
日経平均は34円安の21,375円。
今週の予定
(ノーベル賞)
本日からノーベル賞の発表がつづきます。本日が日本人候補がいると言われる生理学・医学賞の発表です(8日物理学賞、9日化学賞、10日文学賞、11日平和賞)。
おおむねバイオ・医薬品銘柄というのは、秋に上がりやすいというのはこのノーベル賞があるためですが、たいてい9月中旬から受賞までで相場は終わります。したがって、ここからあまり同セクターに資金投下するのは、避けたいところです。
(政治動向)
なんといっても10日の米中協議開始、15日のアメリカによる対中関税引き上げ期限がポイントです。
本日は先述通り、中国が今回の協議における妥結に消極的であるというロイター電が悪材料となり、グローベックス先物が気配を切り下げました。
一般的にも、一部合意に関しても望み薄だという見方が多いようです。
(需給関係)
東京市場を事実上動かしている外人、とくにヘッジファンドですが、日経平均先物の持ち高動向からいって、再び売り攻勢となってきていると考えられるわけですが、日柄的には15日ごろで一巡するというのが、年初来の平均的なリズムだと当レポートでは解説しました(日経新聞報道でもそうでした)。
一方、ヘッジファンドの11月損益通算期限を逆算しても、45日前ルールだとすれば、解約請求に伴う処分売りがかさむとしたら、15日までということになります。
ちょうどSQ当日です。
売り一巡するとしたら、ここが限界であろうと考えられそうです。
こういうことから、当レポートでは今週、何がでても売り(相場下落)は15日まで、という目安をたててきたわけです。
うまくすれば、プレアナウンスメント期間の終盤である、先週で安値をつけたかどうか、というのが期待するとことでした。
今週それを割るかどうかが課題になってきますが、割ったところでそれは誤差でしかないという見方です。
香港・中国情勢
(緊急条例発動)
先週、香港行政府は緊急条例を発動。
これに対して、民主派議員団は、香港基本法(憲法に相当します)が条例制定間について、行政長官ではなく立法会にあると規定しているため、立法会の議決無くして発動された緊急条例は違法である、と訴えています。
そもそも緊急条例は、1922年、英国植民地時代(それも戦前)に成立しているもので、以前から「悪法」であり、「違憲」であると指摘されていたものです。
ただし、香港基本法の「解釈権」は、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が握っています。中国は香港の行政に介入し、「違法ではない」と「解釈」すれば関係なくなるわけで、きわめて矛盾した条令だということがわかります。
(反政府デモの過激化)
香港行政府は、デモ隊の覆面使用禁止を命令しましたが、民主派議員団は5日に覆面禁止法の一時差し止めを申し立てています。これを高等法院は6日、棄却しました。
これで一層民主派が激高。6日も覆面使用のデモが行われました。
(外人記者への圧力)
ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の記者が、事実上中国から追放されました。
この記者は、オーストラリア在住の習近平主席のいとこが違法行為をしている可能性があるとした記事を執筆しており、これが原因だったと見られているようです。
この記事は7月30日付でWSJに掲載されたもので、習主席のいとこで豪市民権を持つ斉明(チャイ・ミン)氏が、組織犯罪、資金洗浄、中国の地位を悪用した行為などによる疑いで、オーストラリア当局の調査対象になっているというもの。
欧米メディアは、今回の中国の対応に一斉に反発。海外特派員は当該国政府の宣伝マンではなく、不当な扱いだということまた、開かれた非排他的な中国という政府の主張と完全に食い違うということで、2022年の冬季五輪など、世界的イベントのホスト国としての中国にさらなる懸念が生じるとしています。
NYタイムズや、ブルムバーグも、以前、2012年に温家宝氏(元首相)と習主席の親族の財産について報道した後、記者のビザ更新を却下されたことがあります。
また、中国ではWSJの中国語ウェブサイトは過去5年間ブロックされており、NYT、BBC、ロイターなどのサイトも定期的もしくは長期にわたってブロックされています。
れたら、そこで武力介入をするということは考えられます。
少なくとも米中協議の前に武力介入するということは、常識的には考えられません。アメリカの態度が硬化してしまうからです。(アメリカは、香港の高度な自治検証を自身に義務付ける法律を成立させてしまっているためです)
戦略方針
日経ダブルインバース<1357>。非常に今週はイベント通過の仕方によっては、上も下も大きくブレる可能性があるので、油断はできません。
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。