【来週の注目材料】米小売売上高が弱さを見せると、9月利下げ期待へ
【来週の注目材料】米小売売上高が弱さを見せると、9月利下げ期待へ
18日21時半に5月の米小売売上高が発表されます。7日の米雇用統計が予想を大きく上回る雇用の伸びを示すなど、強さを示す一方、12日の米消費者物価指数(CPI)、13日の米生産者物価指数(PPI)がかなり弱い伸びに留まるなど、米主要指標はまちまちな結果となっています。その他指標を見てもISM製造業景気指数が予想外に弱かった一方、同非製造業景気指数は強く出るなど、はっきりしない状況が続いています。
米国の利下げ開始見通しについては、今月初め時点では9月の開始期待がやや優勢。米雇用統計後に据え置き見通しが80%まで上昇するなど、利下げ開始見通しの後退が一時強まりましたが、物価の伸び鈍化の影響が大きく、約70%が9月利下げを織り込むところまで期待が強まっています。
今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドットプロットでは19名中8名が2回の利下げを予想しましたが、7名が1回、4名が据え置きを予想し、1回が中央値となりました。ただ、この見通しがPPIの弱さを織り込んでいません。年内2回の利下げを行う場合、9月と12月の実施が自然ということもあり、9月の実施に向けた動きが強まるかどうかが、重要なポイントとなります。
米国のGDPの約70%を占める個人消費の動向を示す小売売上高の状況次第では9月利下げ期待が広がるだけに、注目を集めています。
前回4月の米小売売上高は前月比横ばいと、市場予想の+0.4%を大きく下回る伸びに留まりました。また2月分及び3月分が下方修正されています。3月から4月にかけて米国のガソリン小売価格が大きく上昇したこともあり、ガソリンスタンド売上が+3.1%と大きく上昇。寄与度で+0.24と高い数字を示しましたが、その他の項目の弱さがガソリンスタンドの強さを打ち消しました。
特に目立ったのが無店舗小売の-1.2%(寄与度-0.21)と自動車及び同部品の-0.8(寄与度-0.14)です。ただ、自動車に関してはガソリンスタンドとは逆に価格の低下が影響したと見られます。半導体問題などで一時厳しい状況にあった米国の新車の供給ですが、状況改善が進んでおり、それに伴い新車価格が低下傾向を見せていることで、売上高では弱く出ました。また無店舗小売に関しては、アマゾンのセールが3月に実施されたことで、その反動が出たという面が大きいと見られています。
前回の弱さが特殊事情によるものが大きいということもあり、今回は+0.3%と比較的しっかりした伸びが期待されています。変動の激しい自動車を除くコアは+0.2%と4月と同水準の伸び見込みです。
4月から5月にかけては米国のガソリン小売価格が小幅ながら低下しています(米エネルギー情報局調査全米全種平均で1ガロン当たり3.733ドルから3.725ドル)。米国はごく一部地域を除いて車が生活必需品ということもあり、ガソリンスタンド売上は価格変化の影響をまともに受けます。その為前回寄与度トップであったガソリンスタンド売上はほぼ横ばいかマイナスになることが考えられます。この辺りが弱さにつながり、予想ほどの伸びを示さなかった場合、9月の利下げ期待がもう一段強まり、ドル安となる可能性があります。
MINKABUPRESS 山岡
執筆者 : MINKABU PRESS
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