トランプ大統領の巻き返しなるか~大統領候補者テレビ討論会
11月3日の米大統領選を控え、最後の大統領候補者討論会が22日にテネシー州ナッシュビルで開催されます。
9月29日に行われた第一回目の討論会は両候補者が非難合戦を繰り広げ、司会者がコントロールに苦慮するものとなりました。討論会後の調査ではバイデン氏がやや優勢との評価もありましたが、両者の支持率に大きな影響を与えるものにはなりませんでした。
10月15日に予定されていた第二回大統領候補者討論会は、トランプ大統領が5日に新型コロナウイルスの感染を発表したこともあり、主催者である大統領候補者討論会委員会(CPD)がバーチャル形式で開催すると発表。しかし、トランプ大統領はバーチャル形式の討論会には意味がないと拒否。主治医による10日までに公の場に出られるようになるとの診断なども踏まえ、もともと予定されていたタウンホール形式での開催を要求しましたが、CPDが認めず、結果的に中止となりました。
両候補者は同日それぞれ独自のタウンホール集会を実施。トランプ大統領の集会はNBCニュース、バイデン前副大統領の集会はABCニュースと、米大手メディアが中継する形となりました。
さらに22日には最後の大統領候補者討論会が予定されています。こちらは両候補者が出席の意向を示しています。
選挙戦も終盤に入っていますが、世論調査ではバイデン前副大統領がリードを保っています。前回2016年の大統領選でも当時のクリントン候補がトランプ候補を支持率で上回っていましたが、3回のテレビ討論会を経て、その差が縮まる格好となりました。
トランプ大統領としては、支持率回復の大きなアピールの場となる機会が一回減った形だけに、第3回の討論会に力を入れてくるとみられ、注目を集めています。
バイデン前副大統領陣営としては失点がなければ大丈夫。無理をせずに無難にまとめてくることが予想されます。
2016年の選挙では世論調査では不利であったトランプ候補が、本番の選挙では逆転して大統領の座につきました。もっとも、選挙直前の支持率の差は2.9%まで縮まっていました。実際の得票率は2.1%クリントン候補が上回っていますので、その差は0.8%。大逆転という見方がされることがありますが、事前世論調査との差は誤差の範囲です。
(ちなみに得票率で上回る=勝利とならないのは米国の選挙制度の問題です、2016年以前では2000年の大統領選で共和党のブッシュ候補が勝利した際も、民主党のゴア候補が得票率で上回っていました)。
今回は2016年と比べても世論調査での民主党のリードが大きくなっています。各世論調査でかなりの差がありますが、平均すると直近で9.4%ポイントの差が開いています。2016年の時は、10月時点での最大値で7%ポイント程度でしたので、それだけバイデン候補のリードが大きいです。
各世論調査を見ても、前回多くのメディアや調査会社がクリントン候補の勝利を予想する中で、トランプ大統領の勝利を予想していた保守系調査会社ラスムッセンレポートですら、直近で5%ポイントバイデン候補がリードしていると示しています。
こうした状況から市場ではバイデン氏の勝利を織り込みにかかる動きが広がりつつあります。選挙資金という面でも、トランプ陣営はバイデン陣営に差を付けられてきており、トランプ大統領はかなり不利な状況に追い込まれています。22日に行われる大統領候補者討論会で逆転につながる明確な差を付けられない限り、バイデン氏の勝利を織り込む動きが加速していくと考えられます。
なお、大企業や富裕層に向けた減税、いわゆるトランプ減税の廃止などを公約とするバイデン氏だけに、当初はバイデン氏勝利=米株安という印象が強かったですが、ここにきてやや状況に変化が生じています。上院、下院ともに民主党が優勢となり、大統領・両院の多数派がすべて民主党となるトリプルブルーが生じる可能性が強まってきており、バイデン氏が勝利することで、民主党が現在掲げている2.2兆ドル規模の追加経済対策案の実現可能性が高まるという期待が広がっており、株価がバイデン氏勝利でも堅調地合いを維持するという思惑につながっています。為替相場への影響も限定的なものにとどまる可能性があります。
もっともトランプ大統領が大逆転を決めた場合、米国株にとってはかなりのポジティブ材料となります。リスク選好の動きが広がり、ドル円、クロス円には買い材料として意識されています。
この討論会だけでなく、ここから11月3日の本番までは世論調査動向などへの注目が集まりますので、米国の選挙情勢をしっかりと確認しながらの展開が続きます。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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