2度目は無い「トランプムーブメント」 ジャーナリスト 中岡望 米大統領選2020

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米大統領選2020

バイデン氏の優位は変わらず

 米大統領選挙は2週間後に迫った。トランプ大統領とバイデン元副大統領の両候補は、それぞれ選挙結果に大きな影響を与える激戦州で積極的に遊説を繰り返している。当面の焦点は現地時間の22日に予定されている公開討論会である。最初の討論会は、トランプ大統領の傲慢な態度などが批判され、世論調査ではバイデン元副大統領が優勢であった。2度目の公開討論会は中止され、お互いがタウンホールでの集会を通して行われた。全体的にトランプ大統領が劣勢であることは間違いなく、トランプ大統領にとって最後の巻き返しのチャンスとなる。

 世論調査を見る限り、バイデン元副大統領の優勢は揺るがないように思われる。ほとんどすべての世論調査で、バイデン元副大統領がトランプ大統領を大きくリードしている。様々な世論調査を総合しているサイトRealClearPoliticsによれば、選挙人の獲得数の予想では、バイデン元副大統領がほぼ固めたのが216人に対してトランプ大統領は125人で、197人が競り合っている州で、どちらに転ぶか判断できない。当選に必要な選挙人の数は270人である。バイデン元副大統領はあと52人獲得すれば、当選ラインに到達する。

 大統領選挙のたびに票が民主党候補と共和党候補に割れる州をSwing Statesと呼び、この激戦州の動向が選挙結果に大きな影響を与える。激戦州は6州ある(ペンシルベニア州、フロリダ州、ノースカロライナ州、ジョージア州、オハイオ州、ウィスコンシン州)。RealClearPoliticsの集計では、バイデン元副大統領が5州でリード。トランプ大統領がリードしているのはオハイオ州だけである。ただ、その差はわずか0.5ポイントと誤差範囲である。もし、この世論調査の結果通りに投票結果がでれば、バイデン元副大統領の圧勝になる。

4年前に新たな支持増を掘り起こしたムーブメント

 だが、選挙結果を予測する際、2016年の大統領選挙が大きなトラウマになっている。ヒラリー・クリントン候補が圧倒的にトランプ候補をリードしていたが、最終的にSwing Statesを落とし、選挙人の数でトランプ候補に圧倒された。多くの予想はクリントン勝利を予想していたが、その結果に対して批判が集中した。

 その意味では、まだ予断を許さないと、慎重な見方をする向きも多い。ただ、筆者は2016年の大統領選挙の再現は起こらないとみている。

 では2016年と2020年の大統領選挙の何が違うのだろうか。トランプ候補が圧倒的に劣勢に立たされていた時、トランプ陣営のケリーアン・コンウエイ選挙参謀は、トランプ候補の勝利を主張していた。その理由を問われると。「トランプ候補はムーブメントを起こしている」と答えている。事実、トランプ候補は新しい支持層を掘り起こし、既存の支持層の深化に成功し、「トランプ連合」を作り上げた。すなわち、伝統的な共和党支持の宗教票の白人エバンジェリカルに加え、国際化で職を失い、従来、投票しなかった白人労働者の掘り起こしに成功した。それがSwing Statesでの勝利に結びついた。エバンジェリカルに対して中絶禁止や同性婚反対などキリスト教価値観の復活を訴え、白人労働者には海外からの雇用奪回を訴えた。新しい共和党の支持基盤を確立したのが、予想外の選挙での勝利に結びついた。

2018年から「トランプ連合」は崩れ始めていた

 では、同じことが起こる可能性はあるのか。筆者は、その可能性は極めて低いと判断している。こうしたトランプ支持の中核的な支持層は今でもトランプ支持で微動もしていない。トランプ大統領の選挙戦略はこうした支持層に向かって訴えかけることであった。トランプ連合を維持し続ければ、勝利できると判断していた。

 だが、現実には、トランプ連合は周辺部分から崩れ始めていた。その兆候は2018年の中間選挙である。この選挙で民主党は勝利した。下院で41議席増やし、下院の過半数を獲得した。州知事選挙でも7州で知事を増やした。この民主党の勝利は“ブルー・ウエーブ”と呼ばれた。特徴的なのは、従来は共和党支持層であった郊外に住む高学歴の女性票が大量にトランプ離れをしたことだ。トランプ連合の宗教票も、白人労働者票も、それほど増えなかった。

 その流れが、2020年の大統領選挙にも引き継がれている。中間選挙以降の状況で言えば、宗教票も明らかにトランプ離れを見せている。女性票は引き続き、トランプ大統領から離反している。2016年に見られたトランプ連合の“ムーブメント”の勢いはなくなっている。トランプ大統領を支持していたシニア層も、トランプ大統領を見捨てつつある。トランプ大統領支持の中核層は健在だが、周辺の支持層は明らかにトランプ大統領と共和党から離れつつある。

 政治専門紙の『ロール・コール』(2020年10月19日、”Excuse me, but is that a partisan waver building?)は「ベテランの共和党員はトランプ大統領の再選はほぼ諦めている。現在は、投票へ与えるダメージを最小にするかに焦点をあてている」と書いている。多くの共和党上院議員は、トランプ大統領に足を引っ張られることを懸念している。従来、共和党は上院の過半数を確保すると見られていたが、それも怪しくなってきている。下院選挙は、共和党の大敗は明らかだ。場合によっては、大統領、下院、上院のすべてで民主党が勝利する可能性がある。

バイデン氏に「当確」が出せないワケ

 ただ、ひとつバイデン元副大統領の“当確”が出せないのは、バイデン元副大統領が熱狂的な支持層を獲得していないことである。黒人票を確保しているものの、ヒスパニック票やサンダース上院議員を支持していた若者層を十分に掌握していないことだ。もし投票率が低ければ、状況が大きく変わる可能性がある。

 今回の選挙は、トランプ大統領の信任投票でもある。「トランプかバイデンか」ではなく、「次の4年をトランプ大統領に委ねてもいいのか」が問われている選挙でもある。

 またバイデン副大統領が勝利すれば、富裕層への課税、金融業界の規制強化を主張していることもあり、短期的には株安、円高という局面がみられるだろう。

f:id:gaitamesk:20050928094155j:plain中岡 望 氏
ジャーナリスト、元東洋英和女学院大学副学長 国際基督教大学卒。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1973年東洋経済新報社に入社。『週刊東洋経済』編集委員、『会社四季報』副編集長などを務め、2002年退社。フリーのジャーナリストへ。 1981~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院フェロー。1993年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年、ワシントン大学(セントルイス)ビジティング・スカラー。東洋英和女学院大学教授(国際経済学、公共選択などを担当)、同大学副学長を経て、2016年より現職。ジャーナリストとしても、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。
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