はしゃぎすぎ。売り方のショートカバー一巡
日経平均は年初来高値更新
米国株高を受けて、東京市場は大きく続伸。期待以上の急続伸となりました。
9月19日、4月24日、年初来の戻り高値を相次いで突破して、年初来高値更新です。
大引けは、265円高の22,472円。
トヨタ自動車<7203>が年初来高値更新ですから、言わずもがなという上昇相場です。
為替が11日から108円台乗せ、ドル高気味になってきていたことから、想定レートを上回る企業が多くなってくるということで、この環境も支援です。
ドル円の200日移動平均線がちょうど109円にありますから、これを突破するかどうかで、日本株が一段と上昇加速するかどうか大きく影響しそうです。
流れとしては、年末に向けて、米国企業の決算期末ということで、ドルの本国(米国)回帰が強まっていく季節性です。円高のリスクは当面ありません。
本日は、ややはしゃぎすぎといっていいでしょう。まだこの時点で相場がどんどん走り過ぎることは無く、じわじわ押したり引いたりしながらだんだん上昇トレンドを模索していかなければならない段階です。
おそらくここ二日の短兵急な上昇は、ほとんどが売り方の狼狽したショートカバーによる損切トレードでしょうから、一巡すれば、おのずと小反落があってもおかしくありません。
とりわけ決算発表シーズンですから、個々の大型株の決算内容で悲喜こもごもの一喜一憂となるでしょう。
一直線に上がる上昇トレンドはまだ早いのです。とりあえず4日の安値、21,276円から、本日ザラ場の高値22,615円まで、8日で1,339円上げたわけですし、4月9月の当面の戻り高値も抜いたところで、上げ一服となっても不思議ではありません。
本日も付で売り方がどっと一旦手仕舞い買戻しを行い、あとは後続のショートカバーが続かず、上げ幅縮小となりました。売り方は、やむを得ず寄付でかなり手仕舞いをしたものの、その後は「どうせそんなに上がりはしない。下げてくるはずだ。」と未練を残していますから、当然朝方の一発のショートカバーの後は手仕舞いが続かなかったのでしょう。
グローベックス市場では東京大引け時点で、70ドル安の気配。
上海コンポジット指数は、小幅続落。0.3%下落。
米国下院、「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決
米中衝突が激しくなります。
貿易通商協議は、またすったもんだすることになるでしょうが、アメリカのファンダメンタルズには本来ほとんど影響ない問題ですから、市場がこれを材料視していければよいだけです。
本日、日経平均が朝から急続伸となり、一時は22,615円の408円高(昨日の上昇幅とアイコ)。これが1時間ほどで上げ幅縮小となりました。
このきっかけはどうも、外電が伝えた、アメリカ下院における「香港人権・民主主義法案」の可決というニュースだったようです。超党派で、全会一致ですから、アメリカの本気度がよくうかがえます。国を挙げて、中国という障害を排除するという意思を見せたのと同じです。
ポイントは、一国二制度に基づき、主要な金融センターとして香港が存在し続けるための優遇措置を、中国政府から受けているか、毎年米国務省は検証しなければならないという法案です。
同時に、下院は、香港警察が民主派デモ隊に対して使う可能性のある軍用品などの輸出禁止を定めた法案も可決しています。
上院での採決日はまだ未定ですが、すんなり通るでしょう。今のアメリカの政治環境において、法案反対に票を投じるほうが勇気が要ります。
関係者筋によりますと、数週間以内に上院本会議で採決される見通しとのことです。
このほか、拘束力のない決議ですが、中国政府の香港への干渉を非難し、香港市民の抗議する権利を支援するという決議を行っています。
これらの一連のアメリカの政治攻勢に対して、中国の反発は必至で、どういう報復的な動きをとってくるのか注目されます。
物色が難しい~なぜ、薬品が飛んだのか?
今日の相場つきでは、非常に目を引いたのが薬品銘柄です。
典型的なのは、アステラス製薬<4503>です。11日に200日線を完全突破したアステラス製薬は、二空を形成して4連騰。非常に強い展開でした。信用倍率も5倍と決して良好ではありません。
材料がこのところ二つほどありましたが、それらが、それほどのインパクトを持つ材料なのか、よくわかりません。
医薬品セクターの騰落ランキングは、上位10位以内に入っていたわけで、指数プレイとは言いながら、単純な景気敏感の買い一辺倒という相場つきではどうも無いようです。
ディフェンシブ系では、典型的な安全パイと目され(債券の代用品とすらみなされていた)東証REIT指数、OLC<4661>、任天堂<7974>といったベンチマークも本日高かったことを考え併せますと、ディフェンシブを切って、シクリカルに資金シフトするという単純な上昇相場ではなく、循環物色に発展していくのかもしれません。
IMFの世界経済見通し3%に引き下げ
IMFが昨日発表した今年の経済成長見通しですが、世界全体で3%に下方修正しました。
米中貿易戦争を要因にしています。もちろんアメリカで食っている新興経済国家の落ち込みは確かに大きいはずです。
この3%というのが重要です。かねてから、IMFは世界の経済成長率平均が3%というのは、世界的な好況不況の分岐点と警告してきましたから、その水準ぎりぎりまで下方修正してきたということです。
もともと2020年には3.4%に持ち直すと見込まれていたものを、このタイミングで今年の予想を引き下げてきたというのは、かなりIMFとしては危機感があるということになります。
これは世界的な政策発動を促す警告です。
非鉄は次第に盛り上がり始めている
世界景気と言うことで言えば、非鉄商品市況もあります。
構造不況業種の鉄鋼と違い、非鉄はまだ景気循環の指標として十分生きています。
現在は、ハイテク用途や自動車バッテリー用途の大きい、ニッケルと鉛が過去5年の高値にまで上昇してきています。
一方新興経済国家需要の多い銅とアルミが、低迷しています。亜鉛もそうでしたが、亜鉛はこのところ急速に値を上げてきて、2か月半ぶりの高値圏に入ってきました。
これは、ナミビアのスコーピオン鉱山の生産が4ヶ月停止されるためで、あくまで供給懸念での価格押し上げでしかありませんが、非鉄商品が高いということ自体が、世界経済に与えるセンチメントとしての好感度は高いでしょう。
戦略方針
現在は日経レバレッジETF<1570>の買い持ちフルポジションとなっています。
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。