今週のまとめ7月29日から8月2日の週
29日からの週は、重要イベントが多く変動の大きな一週間だった。7月末の米FOMC会合が注目され、事前にはドル買いの動きが優勢だった。市場では0.25%利下げ観測が大勢を占め、一時取り沙汰された0.50%の大幅利下げ観測は後退していた。ただ、発表前には例によってトランプ米大統領が大幅利下げに対する圧力をかけた。結果は大方の予想通り0.25%利下げに落ち着いた。パウエルFRB議長会見では、予防的・保険的な措置であるとされ、トレンド中盤での調整、との認識が示された。市場では、タカ派の利下げと受け止められドルは一段高となった。しかし、次回9月FOMCに対する市場の利下げ観測が高まり、その後はドル安方向に転じた。30-31日には米中閣僚級通商協議が開催されたが、2日目会合は5時間で終了、目立った成果は得られなかった。その後、トランプ米大統領は突然、新たに3000億ドルの中国製品に追加関税10%をかけると発表、市場にはネガティブ・サプライズの動きが広がった。米株や米債券利回りが急落し、リスク回避の円高圧力が強まった。ドル相場はドル安方向に傾斜する場面があった。ドル円の変動が大きく、この週は高値109.32レベルをつけたあと106円台に突入した。その他目立ったのがポンドの変動。週明けからポンド売りが強まった。ジョンソン英政権の合意なき離脱を辞さない姿勢が背景。一方、英金融政策委員会(MPC)では、秩序立った離脱の場合は、段階的かつ限定的な利上げの見通し、との文言が残された。ポンドは買いに反応する場面があった。しかし、ポンド安の流れは根強く、対ユーロなどでもポンドは軟調に推移した。ユーロ相場はドル買いや円買いの圧力に押された。欧州の経済統計が引き続きさえなかったことも上値を抑えていた。米中に加えて米欧の貿易摩擦も警戒された。
(29日)
東京市場で、ドル円は108円台半ばで振幅した。朝方には売りが優勢で、一時108.42レベルまで下落した。その後は買い戻しが優勢となり108.60台と下げをほぼ解消した。ユーロドルは1.1120-39の19ポイントレンジにとどまった。先週のECB理事会で振幅したあとは、方向感に欠けるレンジ取引となっている。ここにきて合意なき離脱リスクが高まるポンドは対ドルで1.23台後半での推移。週末報道によると、ゴーブ国務相が合意なき離脱は今や極めて現実的な可能性と英紙に寄稿した。米中問題長期化懸念で人民元は対ドルで軟調。ドル人民元は7月8日以来のドル高・元安水準を付ける場面が見られた。
ロンドン市場は、ポンド売りが優勢。ジョンソン英政権で合意なき離脱への準備を進めるとの報道が相次いだことが背景。週末の報道で、ゴーブ英国務相が、EU側の頑なな態度を非難するとともに、合意なき離脱は今や極めて現実的な可能性との認識を示した。ラーブ英外相が合意なき離脱への準備を加速するとした。英首相報道官は定例会見で、離脱合意が変わらなければ、合意なき離脱の準備に焦点移す、と記者会見で表明した。合意なき離脱への警戒感は高まるばかりだ。ポンドドルは1.23台前半へ、ポンド円は133円台後半へと一段安。ユーロポンドは0.90台乗せへと上昇。ユーロドルは1.11台前半で、ユーロ円は120円台後半での揉み合い。ドル円は108.60近辺に膠着している。総じてあすの日銀決定会合や、あさっての米FOMC待ちのムードとなっている。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円はロンドンフィキシングにかけて一時108.90近辺まで上昇した。米FOMC会合を控えて、ドル買いの流れが継続している。市場では0.25%利下げが確実視されており、ドル売り圧力は後退、強い米経済指標が多いだけに予防的利下げには説得力がないとの見方があった。ユーロドルは1.11台前半から半ばへと下げ渋った。ドル買い圧力で上値は重いが、1.11近辺には強いサポートがある状況。米国とは対照的にユーロ圏経済指標は弱含む傾向がみられている。ポンドは下値模索の動き。ポンドドルは2017年3月以来の1.22台前半まで下落した。ジョンソン英首相は、合意なき離脱を準備する姿勢に言及した。一部には早期の総選挙の可能性も取りざたされており、労働党政権はポンドにとってネガティブにとらえられているもよう。
(30日)
東京市場は、ポンド売りが強まった。合意なき離脱リスクの高まりに昨日大きく値を落としたポンドは、東京市場でも朝から軟調。ポンドドルは1.22台をあっさり割り込むと1.2110近辺まで値を落とした。ポンド円も132円台を割り込むと売りが強まり131.60台まで下落。フラッシュクラッシュ気味に円高が進んだ1月3日の安値131.70レベルを割り込んだ。ドル円は朝方に108.95レベルまで買われたが、その後は108.56近辺まで反落。日銀金融政策決定会合は一部で期待されていたフォワードガイダンスの変更もなく現状維持。声明ではモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には躊躇なく追加的な金融緩和措置との言及があり、警戒感をより一層強めた。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日はポンドドルの大幅下落がドル高の動きに波及したが、きょうはポンド売りがひとまず一巡。ポンドドルは1.21台後半へと反発しており、東京市場での下げを消した。ポンド円も131円台後半から132円台前半へと反発。ユーロポンドの上昇も一服。ただ、ジョンソン英政権をめぐる合意なき離脱への警戒感には何ら変化はみられていない。この日は目立った材料はでていない。その他主要通貨はポンドドルの下げ一服とともに、ややドル売りに傾いた。ドル円は108円台半ばへと軟化。ユーロドルは1.11台半ばへと上昇。ただ、豪ドル/ドルは欧州株の下落や対欧州通貨でのポジション調整などで軟調。0.68台台後半で下値を模索する動き。黒田日銀総裁は、「ちゅうちょなく追加緩和」と緩和色をより明確化したが、フォワードガイダンスは変更しなかった。ドル円の上値を抑えた面もあったようだ。
NY市場で、ドル円は下げ渋り。108.70近辺まで戻す場面があった。7月の米消費者信頼感指数が135.7と事前予想125を大きく上回ったことに反応。米株や米債利回りが下げ幅を縮小していることも下支えだった。ただ、109円に向けた動きは鈍い。本邦勢の売り注文観測やトランプ米大統領が「中国が米農産物を購入する気配はない。中国の問題点は、約束を果たさないことだ」とツイートしたことも上値を圧迫した。全体的にはあすの米FOMCの結果待ちのムード。ユーロドルは1.11台半ばでの揉み合い。1.11台がサポートされ、やや買い戻しの動き。ロンドン序盤に発表されたユーロ圏景況感指数は2015年6月以来の低水準だった。ポンドドルは1.21台後半での推移。東京市場につけた1.2120近辺からは買い戻されている。ジョンソン英政権の強硬姿勢にEU側が妥協する気配はなく、合意なき離脱のリスクは一段と高まっている。
(31日)
東京市場は、小動き。米FOMCの結果発表を今晩に控えて、様子見ムードが広がっている。ドル円は108円台半ばで15銭レンジ、ユーロドルは1.11台半ばで11ポイントレンジにとどまっている。動きが見られたのがオセアニア通貨。朝から軟調地合いが目立った豪ドルは、10時の中国製造業PMIが予想を上回ったものの、好悪判断の境目である50を割り込んだことで売りが強まった。しかし、10時半に発表された豪第2四半期消費者物価指数で、総合や刈込平均が予想を上回り、基調インフレ率も予想に反して横ばいとなったことで、利下げ期待が後退し、一転して買い戻された。NZドルは中国製造業PMIと同時に出たANZ企業景況感が悪化したことなども嫌気されて売りが出た。対ドルで0.66台を割り込み0.6580台まで下落。
ロンドン市場は、米FOMCの結果発表待ちで小動き。そのなかでは、ユーロが軟調。フランスの第2四半期GDPの伸びが前期比+0.2%、同イタリアの伸びは前期比横ばいといずれも低迷している。ユーロ圏GDP速報値の伸びも前期比+0.2%と前回の+0.4%から鈍化した。ユーロ圏消費者物価指数速報は前年比+1.1%と前回の+1.3%から伸び鈍化。成長。物価ともに冴えない内容となった。ユーロドルは1.11台後半から前半へ、ユーロ円は121円台前半から121円ちょうど付近へと軟化。対ポンドでも調整的な売りが優勢だった。ポンド相場は下落一服も、上昇力は弱く揉み合い商状に。ドル円は108.55近辺での膠着相場が続いている。米中閣僚級通商協議が終了した。新華社によると、中国の米国産農産物輸入について協議されたという、次回会合は9月に米国で行われる予定としている。
NY市場は、ドル買いの動きが広がった。午後になってFOMCの結果が公表され、大方の予想通り0.25%の利下げを打ち出したものの、2名のFOMCメンバーが据え置きを主張していたことや、その後のパウエルFRB議長の会見で、今回は予防的利下げであることや、利下げサイクルに入ったわけではないことを強調した面が強かった。議長は「サイクル中盤での調整」と述べていた。 利下げは1回だけではないとも言及し、追加利下げにオープンな姿勢を示しているものの、市場の期待ほどハト派な雰囲気はなかった印象。ドル円は一時109円ちょうど近辺まで上昇。ユーロドルは売りが強まり1.10台へと下落。対ポンドでのユーロ売りの影響もみられた。ポンドは序盤は買いが優勢で、ポンドドルは1.2250近辺まで上昇。しかし、FOMC後は1.21台半ばへと反落した。
(1日)
東京市場では、午前中にドル買いが強まった。ドル円は109円台に乗せると109.32レベルまで高値を伸ばした。その後は109.20付近での揉み合いに落ち着いた。ユーロドルもドル買いに押されて、1.1034レベルまで一段安となった。前日の米FOMC後に1.11近辺のサポートを下回ったことで、売りが広がった。ポンドドルは1.2101レベルを大台割れ寸前まで下押しされた。対ドルでの動きが主導しているため、クロス円はドル円の上昇の割には値幅が小さいものの、ユーロ円が120円台半ば前後から120.71レベルを付けるなど堅調だった。
ロンドン市場は、欧州通貨が軟調に推移。ドル円が再び109円台割れと上値重く推移するなかで、ユーロ円は120円台後半から前半へ、ポンド円は132円台前半から131円台後半へと下押しされている。前日の米FOMC後のドル高圧力も対欧州通貨では健在。ユーロドルは1.1030近辺、ポンドドルは1.21台割れから1.2085近辺へと安値を広げた。ユーロ相場にとっては、一連の欧州の製造業PMIが50割れとなり、景況感の低迷が示されていた。ポンド相場にとっては、このあとの英中銀金融政策発表で、合意なき離脱を意識した内容への思惑もあるもよう。弱めの英経済指標も散見されるなかで、インフレ四半期報告での成長見通し引き下げへの警戒感も。
NY市場では、午後になってドル売りが加速した。トランプ大統領がまだ関税をかけていない残りの3000億ドル分の中国からの輸入品に10%の関税を課すとしていた。市場はリスク回避の動きを強め、同時に前日のFOMCを受けて後退していたFRBの追加緩和期待が再び高まり、ドル売りを呼び込んだもよう。米国債市場で米政策金利に敏感な2年債利回りは一時1.7%を割り込んだ。ドル円は107円台前半まで下落。ユーロドルは1.10台後半まで買い戻された。一方、ユーロ円は119円割れへと下押し。米株が乱高下の後、売りに押されたことが圧迫した。ポンドは買い戻しが続き、ポンドドルは一時1.2170ドル近辺まで上昇。英中銀の政策委員会の結果は予想通りに据え置きだった。ポンドドルは一時的だったが、買いの反応を見せた。声明ではスムーズなEU離脱であれば、緩やかで限定的な利上げの可能性への言及を温存した。インフレ報告では成長見通しを下方修正する一方で、インフレ見通しは上方修正された。ポンド安がインフレ圧力との見方。
(2日)
東京市場は、午前にドル安・円高の動きが強まった。昨日のNY市場午後にトランプ大統領が対中関税第4弾を9月1日付でスタートすることを発表したことを受けて進んだドル安の動きが、東京午前に再燃した。トランプ大統領は、中国が合意するまで徹底的に関税を課すと発言した。ドル円は107円台を割り込むと、安値を106.85レベルに広げた。ユーロドル、ポンドドルなどでもドル売りが出たが、ユーロドルの1.11手前の売りなどに頭を抑えられたこともあり、クロス円での下げがきつくなり、ユーロ円は118円台半ばを割り込んだ。ユーロに関しては今晩(日本時間3日午前2時45分)にトランプ大統領がEUとの通商問題についてアナウンスを行うと発表したことも重石。午後には日経平均の下げ一服とともに、ドル円は一時107円台を回復した。
ロンドン市場は、ドル売りが先行した。ドル円は106.79レベルに安値を更新。ユーロドルは1.11台乗せから1.1115レベルまで上昇した。欧州株が大幅安、時間外取引の米株先物も引き続き軟調。昨日のNY午後にトランプ米大統領が対中国追加関税第4弾の発動を表明したことがリスク警戒感を高めた。加えて、きょうのNY午後にはトランプ米大統領がEUとの貿易に関して発表するとしている。リスク回避圧力を受けて、米10年債利回りは一時1.83%台まで低下。独10年債利回りはマイナス0.504%と過去最低水準となった。独30年債は初のマイナス利回りとなった。クロス円は全般に上値が重い。ユーロ円は118円台半ば、ポンド円は129円台前半での取引。豪ドル円は72.50近辺へと下押しされた。ユーロ圏経済指標はまちまち。小売売上高が予想外に伸びたが、生産者物価指数は伸びが低下した。
NY市場は前日からのドル売りが続きドル円は106.50付近まで下げを加速した。トランプ大統領の対中追加関税の発表で、市場には再び米中対立への不透明が強まっており、リスク回避の雰囲気が強まった。米株に戻り売りが強まったほか、米国債利回りも低下する中でドル円も戻り売りが強まった。
執筆者 : MINKABU PRESS
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