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「オクトーバー・サプライズ」の可能性は? ヒスパニック系を取り込めないバイデン氏 ジャーナリスト 中岡望 米大統領選2020

マネ育チャンネル 

米大統領選2020

新型コロナの脅威を放置?高まるトランプ大統領批判

 アメリカ大統領選挙も11月4日の投票日まで残すところ1か月強になった。今後のスケジュールとして、トランプ大統領とバイデン民主党候補の公開討論会が9月29日、10月15日と22日(いずれも現地時間)に予定されている。公開討論会がどのようなフォーマットで行われるか未定だが、両候補が相対して有権者に直接訴える機会である。討論の結果が、有権者の投票行動に大きな影響を与えるのは間違いない。

 世論調査を見る限り、バイデン候補有利の状況は大きく変わっていない。さらに最近、ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が自著『Rage』の中で、今年の早い時点でトランプ大統領は新型コロナウイルスの危険性を認識していたと発言していたことを明らかにしている。それにも拘わらず、大統領は新型コロナウイルス拡大防止の有効な措置を取らなかったことが批判の対象になっている。新型コロナウイルスが再び勢いを増す傾向もあり、トランプ大統領への逆風は続いている。とはいえ、世論調査では変化もみられる。両候補の支持率の差が縮まってきていることだ。8月時点で平均9ポイントの差があったが、9月に入ると平均6ポイントまで縮小してきている。残り1か月で、さらに差が縮小する可能性も依然として存在する。

選挙直前の「サプライズ」は期待薄

 アメリカには大統領選挙に関連して「オクトーバー・サプライズ」という言葉がある。選挙直前に想定外の事件や報道があり、選挙動向を一気に変えてしまうことを意味する。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン候補が世論調査でトランプ候補を圧倒していたが、FBIがクリントン候補が私的な電子メールを公務に使ったことを明らかにし、捜査している情報がもたらされ、クリントン候補は一気に劣勢に立たされた例がある。今回、そうしたサプライズがあり得るのだろうか。今まで景気が急回復を示す指標が明らかになるとか、新型コロナウイルスの感染予防薬の開発が成功するなどがサプライズと予想されてきた。だが、現状では、この2つのサプライズは実現しそうにない。政策面で、トランプ大統領は中国攻撃を強め、中東でイスラエルとレバノン、UAEの国交回復などの成果を上げているが、選挙への影響は限定的なものに留まっている。

経済政策ではトランプ大統領有利

 ただ、政策面ではトランプ大統領のほうがバイデン候補よりも攻撃的である。景気の急回復は望めないものの、大恐慌以来の大不況が喧伝されてきたが、新型コロナウイルスのダメージは予想より軽微に留まりそうだ。世論調査では、有権者の最大の関心事は景気と雇用にある。経済運営ではトランプ大統領に対する支持率がバイデン候補を上回っている。トランプ大統領は積極的に事業活動再開を訴えているのに対して、バイデン候補は明確な景気回復の筋道を示せないでいる。景気を論点にすることで、トランプ支持層の白人労働者の支持を維持しようとしている。富裕層に対しては、株価の堅調がトランプ大統領に有利に作用するだろう。

黒人・ヒスパニック系の支持を得られるか

 黒人差別問題が注目されているが、それがバイデン候補の新しい支持層掘り起こしにはつながらないだろう。もともと黒人票はバイデン候補の最大の票田であり、「Black Lives Matter」が盛り上がっても選挙への影響は限定的だろうむしろトランプ大統領は「法と秩序」を訴え、都市での暴動の発生に怯える白人の支持を取りける可能性もある。

 さらにヒスパニック系有権者を巡る両候補の争奪戦は激しさを増している。バイデン候補はヒスパニック系有権者の支持を十分に得ていない。むしろ最近の世論調査では、トランプ大統領の健闘が目立っている。トランプ大統領は激戦州であるアリゾナ州、フロリダ州、ウィスコンシン州、ペシルバニア州、ノースカロライナ州で大規模な広報宣伝活動を展開している。特に選挙人獲得で重要なフロリダ州は、有権者の20%がヒスパニック系であり、どちらの候補がヒスパニック系有権者の心を射止めるかで、情勢は大きく変わる可能性がある。この面もまだ流動的である。

 トランプ大統領の支持層は極めて“忠誠心”が強い。トランプ大統領批判が強まっても、共和党支持者の80%以上はトランプ大統領を支持している。これに対して、バイデン候補は民主党支持層を十分に固めきっていない。ヒスパニック系有権者だけでなく、若年層への食い込みも足りない。日本のメディアは伝統的に民主党贔屓のところがあり、日本に伝えられる情報が偏る傾向がある。確かに全体状況から言えば、バイデン候補有利であることは間違いない。共和党内の良識派や穏健派はトランプ陣営から離脱している。ただアメリカの大統領選挙は間接選挙で、国民の総得票数で勝者が決まるわけではない。

「平和裏な政権移譲を拒否」 開票後の混乱は必至か

 また今回の大統領選挙で今後、大きな問題になりそうなのは、トランプ大統領が敗北した場合、敗北を認めない可能性があることだ。トランプ大統領は、「平和裏に政権移譲をしない」という趣旨の発言をしている。通常、選挙当日に勝者は勝利宣言、敗者は敗北宣言をし、政権移譲の手続きを開始する。だが、トランプ大統領は敗北宣言を拒否し、投票で不正があったと訴訟を起こす可能性がある。そうなれば、2000年の大統領選挙で、ゴア候補とブッシュ候補のフロリダ州での票再計算を巡る訴訟があったが、同様な事態に発展する可能性がある。トランプ大統領がギンズバーグ最高裁判事の後任人事を急ぐのも、保守派判事を登用することで、訴訟を有利に展開したいとの思惑も透けてみえる。

 結論的に言えば、大統領選挙にはまだまだ不確定要素が多く、どちらかの候補に「当確」を出せる状況には至っていない。

 

中岡望氏執筆の参考記事:

news.yahoo.co.jp

f:id:gaitamesk:20050928094155j:plain中岡 望 氏
ジャーナリスト、元東洋英和女学院大学副学長 国際基督教大学卒。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1973年東洋経済新報社に入社。『週刊東洋経済』編集委員、『会社四季報』副編集長などを務め、2002年退社。フリーのジャーナリストへ。 1981~82年フルブライト・ジャーナリスト、ハーバード大学ケネディ政治大学院フェロー。1993年、ハワイの大学院大学イースト・ウエスト・センターのジェファーソン・フェロー。2002~03年、ワシントン大学(セントルイス)ビジティング・スカラー。東洋英和女学院大学教授(国際経済学、公共選択などを担当)、同大学副学長を経て、2016年より現職。ジャーナリストとしても、様々なメディアに寄稿、本の執筆、講演活動を展開。
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