【新興国通貨】香港ドル ブラックスワンは起こるのか?
香港の中央銀行にあたるHKMA(香港金融管理局)は、今月8日に昨年8月以来となるドル売り香港ドル買いの介入を実施しました。香港は米ドルに対する管理通貨制度(ドルペッグ制)を導入しており、ドル香港ドルの値幅を7.75-7.85に制限しています。
ドルペッグ制を維持し、資金移動の自由を確保するためには政策金利の変動を合わせる必要があり(全く同じにするのではなく、カントリーリスク分上乗せした水準で維持する)、FOMCが利上げした場合、香港金融管理局は翌日自動的に同じ幅の利上げを行います。
(国際金融のトリレンマというものです。固定相場制(ドルペッグ制はこれにあたります)、資金移動の自由、自由な金融政策は3つ同時に達成できません。相場が固定で金利に差があって資金移動の自由ならば、金利が高いところにお金が全部流れてしまうからです)。
米国は2015年から利上げサイクルに入り、HKMAもそれに追随していますが、実体経済がついてきません。香港の市中金利が政策金利の上昇についていけず、上がりきらないのです。そのため、ドル香港ドルは強いドル高香港ドル安圧力を受けており、HKMA昨年4月に現状の7.75-7.85レンジを決定して以来初となるドル売り香港ドル買い介入を実施。その後も8月までたびたびの介入を行いました。その後少し落ち着いていましたが、ここにきて再びの7.8500トライということで、今月に入って介入を再開したというわけです。
そうした中、オプション取引ではブラックスワンに備えようという動きが出てきています。
ブラックスワンとはめったに起こらないけれど、起きると壊滅的な状況を呼ぶ事象のこと。HKMAがドルペッグ制を放棄すると、スイス中銀が2015年にユーロスイスでの絶対防衛水準としていた1.2000をいきなり放棄したときのように、市場にパニックが走るとみられています。
スイス中銀の場合は自国売り介入で、理論的にはどこまでもできるものでしたが、HKMAの場合自国通貨買い介入のため、その原資となる外貨準備の額までした介入が出来ないことも、警戒感につながっています。
もっとも、HKMAは今のところ介入維持姿勢を崩していません。香港は中国や日本ほどではないにせよ、世界ベスト10には入る規模(2017年末時点では第6位)での外貨を保有しており、当面は問題なく維持できるとみられています。
とはいえ、理論上どこまでも出来ると認識され、自身もそういっていたスイス中銀が、最後に白旗を振ったように、どこかであきらめる可能性は意識する必要があります。7.85近辺から少し調整が入っていますが、7.8480台までとドル高香港ドル安基調が崩れないだけに、今後の動向に要注意です。
minkabuPRESS編集部山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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