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とれんど捕物帳 あくまで材料を待っている局面

為替 

 先週は「米景気後退への警戒感を本格的に緩め始めたか!」という気前の良いタイトルで配信してしまったが、そう簡単に問屋は卸してくれないようだ。米株は戻り売りに押され、米国債利回りも下げる中、ドル円もようやく回復した200日線をあっさり割り込み110円台に下落する場面も見られた。ここに来て景気の先行きへの不透明感が再び強まっているというのが今週の解釈らしい。

 特にその解釈を助長したのが木曜日のECB理事会であった。個人的にも“弱気だ~!”という印象であった。ECBは新たに長期資金貸し出しオペ(TLTRO)をアナウンスしてきた。期間2年のTLTROを9月に開始するとしている。当初は何らかのアナウンスはされるものと期待はされていたが、今回は具体的なアナウンスではなく示唆する程度と思われ、具体的なアナウンスは4月が有力視されていた。報道によると、理事会内では4月まで待てなかったようだ。

 更に驚きだったのが、「少なくとも2019年末までは金利を据え置く」と発表してきたことだ。市場にはTLTROを使った量的緩和(QE)は実施するものの、年内の利上げについては選択肢を残すと見られていた。特にマイナス金利を実施している中銀預金金利の評判が悪く、理事会内でも是正すべきとの意見もあり、市場も期待感を残していたが、今回はその期待を打ち消した格好となっている。中には「来年4月までの据え置き」を主張した理事もいたようだ。そして、今年のGDP見通しを従来の1.7%から1.1%に大きく下方修正した。ドイツ政府は既に今年の国内のGDP見通しを1%に修正しているが、その動きに沿っているとも言える。

 ユーロ圏経済の減速は昨年後半から明確に出始めている。域内の政治問題が影を落としていることもあるが、頼みの綱だった中国経済がここに来て警戒感を強めていることが大きく影響しているものと思われる。今週の中国共産党の全人代で李克強首相は今年のGDP見通しを下方修正している。これまでの6.5%成長から6.0%から6.5%に下方修正している。パンドラの箱とも揶揄される本当の数字はどうかわからないが、トランプ大統領の攻撃もあり、かなり苦境に立っていることは間違いなさそうだ。いずれにしろ、10月で任期切れとなるドラギ総裁は出口を見ることなく退任するということになりそうだ。

 これだけECBがハト派色を強めたにもかかわらず、株式市場は逆に先行き不透明感を強める反応を見せた。タイミングが悪かったのかもしれない。株式市場はクリスマス明けからのリバウンド相場がここに来て息切れを見せ始め、調整ムードが強まっていた。戻り売りの背中を押してしまったのかもしれない。年始からの動きが春前までに調整をするのは度々見られる。

 今回は昨年後半に見られたような景気後退の文字が躍るような雰囲気はない。今週の米株式市場の動きを見た限りでは、相場が崩れる動きまでは見られておらず、恐怖指数として知られるVIX指数もポイントとなっている20を下回る水準で推移している。VIX指数を参照してポジションを動かしているリスク・パリティ戦略のファンドもまだ、売りを出していないようだ。

 市場は年内の景気減速は織り込んでいるが、昨年後半に見られた年内景気後退の期待感は後退させているように思われる。ここに来て更に上値を試すための材料を待っている局面と思われる。

 底堅さを示す米経済指標か、米中貿易協議の合意が有力な候補として考えられよう。特に米中の合意は注目したい。今週、トランプ大統領は株価に気をもんでいるといった報道が流れていた。合意がなく株価を押し下げる展開を懸念しており、中国との交渉担当者に速やかに合意をまとめるよう圧力をかけていると報じられていた。何が何でも2期目を勝ち取りたいのであろう。尻に火がついている習近平政権にとっても渡りに舟だ。

 道徳的な善し悪しは別にして、FRB、ECBも含めてみんなで“株主対策”という点では今月下旬にあるとも言われている米中首脳会談は良い機会かもしれない。

 もちろん、安倍政権や日銀にもがんばって欲しい。少なくも秋に予定しているアレは再考する良い機会かもしれない。

 さて来週だが、イベントとしては1月分ではあるが、米小売売上高や、2月分の米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されている。上記にも示したが、市場は上値を試すための材料を待っている局面と思われ、良好な米経済指標もその一つと考えられる。米小売売上高は12月分が株安や政府機関閉鎖などから、かなり弱い数字だったことから今回は、その反動から強めの数字が見込まれている。予想通りであれば、一旦安心感が出るかもしれない。

 米CPIについては、2月分は過去のデータを見てもそう大きく変化があるケースは少ない。コア指数で前年比2.2%が見込まれているが、その付近での推移と思われる。FRBは年内利上げの選択肢は残しているが、予想通りだった場合は、さほど市場には影響を与えないであろう。

 そして、日銀決定会合が週末に予定されている。最近の黒田総裁の発言から何らかの緩和策への期待感が出ている。日銀に残されたツールは少なくなっているが、FRBはもちろん、今週のECBやカナダ中銀、豪中銀など、各国中銀が再びハト派色を強める中、何らかの示唆はあるのかもしれない。ただ、今回は具体的な政策変更はないと見られているようだ。

 基本的には次の材料探しに伴う調整ムードは来週も続くものと見ている。円高圧力は続きそうだが、一方でドル買いの流れも続く可能性が留意される。来週のドル円だが、上値は重いものの、下値も底堅い展開から緩やかな下げを想定。予想レンジとしては、110.00~112.00円を想定。ただ、スタンスは「やや強気」を継続したい。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上から中立へトレンド変化
短期 →(↑↑)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 →(↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑↑↑)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

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