とれんど捕物帳 仏独の攻防とフィンランド 


 今週のドル円は米中貿易協議と米政府機関の再閉鎖の2つのリスクに晒されながらも順調に乗り切った印象だ。111円台まで上昇後、12月の米小売売上高が予想外の大幅減となり、ドル円も急速に落とされたものの、110円台はしっかりと維持して終えている。

 12月の米小売売上高については、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は政府機関閉鎖など特殊要因が影響したと述べていた。12月は株式市場の急落もあり、景気の先行き不透明感が強まっていた。エコノミストからもネガティブなコメントが相次ぎ、過度に悲観的になっていた中、米消費者信頼感も低下し、消費者マインドに何らかの一時的な影響が出た可能性は十分にありそうだ。

 ただ、FRBが突如ハト派に転換し、利上げ期待も後退する中、現状の雰囲気はだいぶ改善している。果たして今回の小売売上高が示すほど米個人消費が減速しているのか、それともクドロー委員長が示す通り、一時的要因なのか、今後の消費関連指標が注目される。個人的には一時的要因と期待したい。

 ドル円も今週は急ピッチな上昇を見せたことから、米小売売上高がちょうど良い利食いの機会を与えたと見ている。ただし、過熱感を示すテクニカル指標のRSIは50台で推移しており、過熱感はない。200日線が111.30円付近に来ており、一旦跳ね返されたものの来週以降、再び目指す動きを期待したいところではある。

 FRBがハト派姿勢に転じ、ドル円にとっては重石となっているが、米株式市場が底堅く推移しておりドル円を支えている。正直、今回の米企業決算を市場はよく乗り切ったと考えている。S&P500株価指数採用銘柄で今回決算を発表した企業のうち、10-12月期については70%以上が予想を上回る利益をあげている。ただし、今年の見通しについては減益を見込んでいる企業が多いようだ。想定内ではあったものの、株式市場がどう反応するか警戒していた。しかし、株価はムードが決めるという文言通り、無難に乗り切っている。もっとも、この先はどうだかわからないが。

 今週は話すこともないので、ECB総裁人事について触れてみたい。現在のドラギ総裁は10月で任期が切れる。その有力な後継候補として、フランス2名、ドイツ1名、そしてフィンランド2名の計5名が挙がっている。最有力候補が誰なのか全く不明で、どうも5月に予定されている欧州議会選挙の動向が大きく影響しそうだ。欧州については何といってもドイツとフランスの両大国が重要なキーポイントとなる。ECB総裁についてもそうだ。ドイツからすれば、ドイツ人のECB総裁はユーロ発足以来の悲願だ。当時イタリア中銀総裁だったドラギ総裁は2番手の候補だった。フロントランナーはアクセル・ウェーバー元ドイツ連銀総裁だったが、ドラギ総裁の巧みなメディア戦術で、ウェーバー氏を退けている。

 しかし、メルケル首相は今回、欧州委員長の席を欲しがっている模様。欧州議会選挙は中道右派のポピュリスト政党が多数の議席を確保しそうな情勢で、その場合、メルケル首相はドイツ人のマンフレッド・ウェーバー氏を欧州委員長の座に据えたいと画策しているようだ。ウェーバー氏は欧州議会の中道右派の会派である欧州人民党の所属。

 ドイツ人の総裁候補はバイトマン・ドイツ連銀総裁だが、メルケル首相はあまり積極的に動いていない様子だ。周知の通り、ドイツ連銀は強硬なインフレファイターだ。バイトマン総裁は今週、ドイツ経済の弱さに言及し、利上げが遅れる可能性を示唆してはいたが、これまでもドラギ総裁のハト派姿勢には常に一石を投じている。現状のユーロ圏経済からすると、少し不適任かもしれない。

 メルケル首相が欧州委員長の席を欲しがれば、当然、マクロン大統領は、ECB総裁の席をよこせと主張するだろう。フランスの候補はクーレECB専務理事とビルドワドガロー仏中銀総裁だが、フランスはかつて、トリシェ前総裁をはじめ、副総裁など人事では優遇されてきた。ちなみに、IMFのラガルド専務理事も元フランス財務相だ。いい加減にしろよという声も加盟国からは噴出しそうだ。なお、フランスも欧州委員長の座を狙っている。バルニエEU首席交渉官を候補として推しているようだ。こちらは英EU離脱交渉次第のところもあるが、バルニエ氏が就任するようであれば展開も変わる。

 もっとも、メルケル首相もマクロン大統領も政治的な力は衰退していることは留意されるところではある。

 大国の人事争いの中、落ち着き処が良さそうなのが、フィンランドの候補かもしれない。レーン・フィンランド中銀総裁とリッカネン前総裁が候補として挙がっている。フィンランドは人口が550万人の小国だが格付けは、AAAこそ失ったものの、それでもAAランクだ。両者とも金融政策は保守的な立場とも言われており、現状のユーロ圏経済からすると、可もなく不可もなく適任かもしれない。

 これまで南欧がECB総裁の地位を獲得してきたが、次は北欧という声もある。個人的には誰でもいいのだが、フィンランドもありかなと考えている。

 さて来週だが、米経済指標は12月の耐久財受注と住宅指標が発表されるが、よほどのサプライズで無い限りインパクトは限定的と思われる。むしろ、ドイツの企業景況感指標が発表され、こちらは警戒されるかもしれない。

 英国もEUとの離脱協定の再交渉を求めない方針に転換したとも伝わっている。ただ、アイルランド国境のバックストップ案が暫定措置であることの確証は求めており、付属文書など何らかの担保を求めるようだ。英議会がどう反応するか未知数だが、こちらも進展があるか注目される。合意なき離脱はEUにとっても惨事になる。

 そして、米中貿易協議だが、どうも北京ではまとまらなかったようだ。今度は来週にワシントンで協議を継続するようで、こちらはリスクとして留意しておきたい。

 ドルも株式も底堅く推移することを見込み、ドル円も底堅い推移を期待したい。来週のドル円の予想レンジだが、200日線を上値メド、21日線を下値メドとし、109.50~111.50円のレンジを想定。スタンスは「中立」から「やや強気」に変更したい。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(→)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 →(→)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 →(↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 中立継続
短期 →(→)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上から下へトレンド変化
短期 →(↑)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美


出所: minkabuPRESS

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