【NY市場】ドル売り強まりドル円は一時108円割れ FOMC議事録はハト派より
きょうのNY為替市場は序盤からドル売りが強まった。特段の材料は見当たらなかったが、きょうはボスティック・アトランタ連銀総裁とエバンス・シカゴ連銀総裁の発言が伝わり、両総裁ともにハト派な見解を述べていた。先日のパウエルFRB議長の発言以降、米金利先高観が後退しており、年内は1回利上げを実施したあとFRBは、利上げサイクルを一旦停止するのではとの期待が強まってきている。
そのような中、午後にFOMC議事録が公表され、追加利上げに辛抱強くなれると多くが判断していることが明らかとなった。追加利上げが適切としているものの、金利は中立水準の下限近くに達しており、規模と時期の明確さが薄れたとも言及している。今回の議事録は先週のパウエルFRB議長の発言以降のFOMCメンバーからのハト派色の強い発言に沿った内容ではあった。ただ、事前にドル売りが強まっていたこともあり、公表後のドル売りの動きは限定的だった。
NY時間の終盤にドル円は108円を一時割り込んだ。トランプ大統領がシューマー民主上院院内総務とペロシ下院議長と会談を行っていたが、時間の無駄だとして途中で退席したことが伝わり、米株の戻り売りと伴にドル円も再度売りを強めたようだ。
ドル円は今月初めのフラッシュ・クラッシュ(瞬間的暴落)からは、だいぶ回復しているものの、ドル円のRSIは下げ過ぎの基準である30付近で推移しており過熱感は高まっている。
ユーロドルは買い戻しを加速させ、ストップを巻き込んで1.1550ドル近辺まで上昇。きょうの上昇で100日線を上抜けて来ており、本格的なリバウンド相場に入るか、明日以降の展開が注目される。目先は1.15ドル台を維持できるか注目だが、ユーロ自体に強さがなく難しいとの見方も聞かれる。前日発表のドイツ鉱工業生産が予想外の減少となり、第4四半期のドイツGDPはマイナス成長の可能性も指摘されている。ドイツは第3四半期もマイナス成長だったことから、テクニカル的には景気後退ということになる。そのほかにもイタリアの政局混迷やフランス財政への懸念も浮上しており、ユーロはリスクファクターが多い。
ポンドドルは1.28ドルちょうど付近に上昇。ポンドは対ドルでは上昇したものの、対円やユーロでは下落しており、ポンド自体の強さまでは感じられない。来週15日の英下院でのEU離脱合意案に対する投票待ちに変化はない。合意なき離脱の可能性も十分に残しており、警戒感は根強い。
メイ首相はもし、否決された場合には速やかに対応する方針を示している。政府はアイルランド国境のバックストップ措置が実施されるとしても期間を1年に限定する修正案を受け入れ、EUにも同意の確約を求める意向を表明している。厳格な国境管理を回避する策として技術的な措置でバックストップに取って代えることができる可能性もあるという。なお、EU離脱を遅らせる可能性については明言を避けた。
きょうはカナダ中銀の政策決定が発表。金利は大方の予想通りに据え置かれたものの、声明で「“そのうちに”利上げが必要になる」との言及した。前回の声明文に、「そのうちに(over time)」という文言が付け加えられている。市場は早期の追加利上げを示唆する内容との受け止めから、カナダドルは発表後に買いの反応が見られた。
minkabu PRESS編集部 野沢卓美