とれんど捕物帳 春の嵐が収まりドル円はもうしばらく上値試すか!
今週のドル円は上値は重かったものの底堅さは堅持し、トレンドは上向きに変化している。21日線も上を向き始めた。材料としては主に日米首脳会談、そして米国債の動きだったであろう。
日米首脳会談に関しては通商問題も協議されるということもり、トランプ大統領が何かやらかさないかと市場も警戒感を強めていた。財務省問題で安倍首相の支持率が下がっていたことも助長していたのかもしれない。しかし、結果は無難に通過ということで収まっている。政治問題で市場が事前に警戒している時は無難に終わるケースが多い。
安倍首相は米国へのTPP復帰を促したが、トランプ大統領は2国間のFTAにこだわっており、今後も協議を継続するとして玉虫色に終わっている。TPPに復帰するのがベストなのかもしれないが、米国は多国間協議を敬遠する傾向にあり、トランプ大統領もオバマ回帰の雰囲気もあることから受け入れ難いのであろう。
トランプ大統領にとって最大のターゲットは中国だ。前回も言及したが、トランプ大統領の場合、「殴ってから話をしよう!」というタイプなので派手に始まっている。中国も何よりも面子が大切な人たちなので、強い対抗心を示している。本格的に米中貿易戦争に発展すれば、世界経済への悪影響は必至ということで市場も動向を警戒している。
しかし、トランプ政権も本気で中国をブロックしようという気はないであろう。確実に米国の利益にはならない。ただ知財など、これまであまりにも野放図にしてきた面もあり、少し修正圧力を入れようという意図なのではと個人的には考えている。特に知的所有権や外資規制に関しては米国のみならず、各国も文句のあるところであろう。
そして、ドル円にとって少し厄介な動きが米国債のイードカーブのフラット化だ。週後半には修正が入りドル買いを誘発していたようだが、2-10年債の利回り格差は2007年以来の水準まで一時縮小している。ファンド勢などの仕掛けも出ており、ドル円の上値を重くしている一因かもしれない。
基本的にイールドカーブのフラット化は、先行きの景気減速期待からインフレ鈍化を見込む動きではある。ただ、足元の米消費者物価指数(CPI)を見ると昨年第1四半期以来の2%台を回復しており、これが直ぐに1.5%に反転するとも思われない。年内は2%台で推移するのではとも思われる。
トランプ大統領の保護主義の動きに対する懸念が後押しした面があるのかもしれないが、足元は少しやり過ぎではとも思われる。
さて来週だが、市場では慎重な意見が多いようだが、個人的にはドル円の上値追いが続くと見ている。米国債のフラット化の修正がもうしばらく続き、ドル高が押し上げると見ている。今週後半には米株式市場が軟調な動きを見せ、やや気掛かりな動きではあるが、落ち着くようであれば円安の動きも加わるものと見ている。春の嵐は次第に収まることを期待したい。
イベントとしては日銀やECBの政策会合が予定されている。無難な通過が予想されているが、週末にECBは7月の理事会まで量的緩和(QE)終了の時期の示唆を待つことを検討しているとの報道も流れていた。第1四半期の指標の弱さが続くかどうか確認したい意向のようだ。この辺についてッドラギ総裁から何らかのヒントが出るか注目される。その場合はユーロ安の可能性も留意される。日銀については無難な通過と思われる。
また、米英の第1四半期GDP速報値が発表になる。10-12月期よりは弱めの予想が多いが大方織り込みではある。しかし、ここに来てカーニー英中銀総裁のBBCでのインタビューから、5月の利上げ期待が大きく後退している。英GDPが弱い内容であれば、敏感に反応する可能性は留意したい。
ドル円の想定レンジだが、106.50~109.00を想定。スタンスは「やや強気」を継続。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑(↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑(↑↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立継続
短期 →(→)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 →(↑↑)
minkabu PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。