【来週の注目材料】パウエル・ラガルド・ベイリー3氏が一堂に=ECBフォーラム
27日から29日までポルトガルの首都リスボン近郊にある世界遺産の観光都市シントラにおいて、ECBの中央銀行フォーラム2022が開催されます。ECB副総裁や理事によるパネルディスカッションや講演などが多数予定されていますが、なかでも市場の注目を集めているのが、最終日の現地時間14時から行われるパネルディスカッションとなっています。参加者はパウエル米FRB議長、ベイリー英中銀総裁、ラガルドECB総裁、カルステンスBIS(国際決済銀行)総支配人です。
ここに来て各国の積極的な引き締め姿勢に注目が集まる一方、その弊害としての景気鈍化への懸念が広がっています。各中銀とも今後の難しいかじ取りを強いられており、その動向に相場が大きな影響を受けると見られます。そうした中、主要中銀トップが集まるイベントに、市場の注目が集まっています。
パウエルFRB議長は22日に上院銀行委員会、23日に下院金融サービス委員会で行われた連邦議会での半期議会証言において、今後の積極的な引き締め姿勢を強調する一方、今後のリセッションについて目指しているわけではないが可能性はあると表現しました。ソフトランディングを目標としているが非常に困難であることを認め、リセッションの可能性が高いことを事実上認めた形です。これを受けてドルの売りが出る場面が見られました。
22日にカイリーFRBエコノミストは研究論文を公表。様々なモデル分析の結果、米国がリセッションに入る可能性は、向こう4四半期で50%強、向こう2年で約3分の2に達するという見通しを示しています。
マーケットは議長の議会証言での発言を受けて、景気鈍化がある程度進んだとしても、インフレを抑え込むべき今後の姿勢を認識しました。10日に発表された5月の米消費者物価指数が前年比8.6%と、これまで直近で最も高かった3月の水準を超えて、約40年ぶりの高水準を記録。ガソリン、自動車、食品といった米市民の生活にとって欠かせない項目で物価の伸びが目立っており、今後の個人消費に対する影響も懸念される状況です。それだけに積極的な利上げによって物価を抑え込もうというFRBの姿勢は、致し方ないところと認識されています。
金利先物市場動向から見た利上げ確率を見ると、今月のFOMCでパウエルFRB議長が0.5%か0.75%の利上げが行われる可能性が高いとした7月のFOMCでの利上げについては、90%以上が0.75%の利上げを織り込んでいます。9月については0.5%が大勢となっていますが、約3分の1は0.75%を見込む状況に。年末時点での政策金利見通しを見ると3.50%-3.75%が最も多い見方となっており、FOMCでのドットプロットで示された3.25%-3.50%を上回る状況となっています。リセッション懸念を受けても市場の利上げ期待が続いている状況が確認できます。
こうした状況でパウエル議長が、景気鈍化懸念についてどこまで踏み込んだ発言を行うかが注目材料です。
今月の金融政策会合で0.25%の利上げを決めた英中銀についても、今後の大幅利上げ期待が強まってきています。今月の会合でベイリー総裁は0.25%の利上げに投票。前回に引き続き6対3での0.25%の利上げとなりました(3名は0.50%を主張)。もっとも22日に発表された5月の英消費者物価指数は前年比9.1%と前回を上回る伸びを記録。こうした状況もあり、会合では0.25%の投票に回ったピル英中銀チーフエコノミストは、今後数か月でさらなる金融引き締めが必要になると発言。英中銀はより積極的に行動する用意があるとして、大幅利上げの可能性を示唆しました。また、インフレ抑制を図るため、経済成長を犠牲にする用意があるとしています。
英中銀の金融政策立案に大きな影響を与えるチーフエコノミストの発言だけに、英国でも大幅利上げが実施される可能性が高まってきました。こうした中で、ベイリー総裁がどのような姿勢を示すのかが注目されています。
ECBは次回7月の理事会での利上げスタートがほぼ確実視されています。9月の追加利上げも織り込まれています。市場が注目しているのは利上げ幅で、7月は0.25%の利上げとなる可能性が高いですが、9月については0.25%と0.50%で見通しが分かれています。ユーロ圏でも強まる物価高を受けて0.50%を期待する動きが強まってきましたが、23日発表のユーロ圏及び加盟主要国PMIが軒並み弱めに出るなど、ここに来て景況感の悪化が目立っているだけに、慎重な姿勢を示す可能性があります。本来はハト派であるラガルド総裁の発言が注目されるところです。
今回のECBフォーラム。世界中から相当な注目を集めそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。