米CPIはインフレ長期化の兆候示すも、ドル高は一服=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は戻り売りが優勢となり、一時113円台前半に伸び悩んだ。朝方発表の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回り、インフレ長期化の兆候を示したことから、米国債利回り上昇と伴にドル買いが強まり、ドル円も113.80円付近まで上昇する場面がみられた。
しかし、その上げは続かず、米国債利回りが急速に下げに転じるなど逆転の動きが強まり、ドル高の勢いも急速に後退。ドル円も伸び悩んだ。ただ、特段のドル売り材料は見当たらない。過熱感も高まっていただけに、米CPI発表と、午後のFOMC議事録公表を前に調整が出ていたのかもしれない。
そのFOMC議事録だが、特に目新しい内容もなく、為替市場も小幅な反応に留まった。議事録では「資産購入ペース縮小は11月半ばか12月半ば開始の可能性。資産購入ペース縮小は来年半ばごろ終了の可能性」に言及している。すでに9月FOMC後のパウエルFRB議長の会見で言及してい内容でもあり目新しさはない。資産購入ペース縮小については、11月初めのFOMCで11月半ばの開始をアナウンスするとの見方が有力視されている。
市場が世界的なインフレ懸念を強める中で、ドル円は買いが加速している。そのような中で、インフレ上昇は市場の期待以上に長期化し、FRBは予想以上の利上げを迫られるとの声も増えつつある。一方、日本はまだデフレから完全に抜け出せない状況にあり、日銀の緩和解除は全く見えない状況。少なくとも利上げに関しては中銀の中で最後になると見られている。そのような中で一部からは、今後15カ月、来年末にかけてドル円は120円まで上昇する可能性も指摘され始めているようだ。
ドル円は米10年債利回りとの正の相関が他の通貨ペアよりも遥かに高い。少なくとも年末までは双方に上向きの圧力がかかることが予想されるという。
ユーロドルは買い戻しが優勢。前日は1.15ドル台前半まで下落したものの、心理的節目の1.15ドルには慎重だった中、きょうはショート勢の利益確定の動きが出ているようだ。一部からは、向こう12カ月のユーロドルの見通しを従来の1.13ドルから1.10ドルに下方修正する動きも出ている。インフレ上昇の長期化、サプライチェーン問題など、現在の市場のテーマがますますドルに有利に働くとの見解を反映させたという。
世界の製造業の回復は明らかに鈍化している一方、中銀はインフレ抑制のために金融政策を引き締める必要に迫られ始めている。この状況はユーロドルにとってマイナスであるという。FRBは11月にも資産購入ペース縮小開始をアナウンスしそうな一方、ECBは現在のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を来年3月に終了との方向で進めている。しかし、柔軟性を持たせるために、PEPP終了後は従来の資産購入プロフラム(APP)の枠を拡大して対応する意向も検討されている状況。FRBとECBの金融政策の格差がユーロドルをこれまで以上に押し下げるとみているようだ。
ポンドドルは買い戻しが優勢となり1.36ドル台半ばまで上昇。本日の21日線が1.3630ドル付近に来ているが、その水準を上回ってきており、明日以降の動きが注目される。ただ、1.36ドル台半ばから上の水準には戻り売りオーダーも多数観測されているようだ。
ロンドン時間に8月の英月次GDPが発表され、予想を下回る内容ではあったものの、それをもって英中銀が利上げを思い留まる可能性は低いとの声も多い。成長鈍化が主にサプライチェーンのボトルネックによって引き起こされている場合、英中銀が利上げをためらう必要はないという。また、英GDPは現在、パンデミック前よりも僅か0.8%低い水準まで回復しおり、経済がパンデミック前よりも低い水準で、英中銀が引き締めに舵を切ることに対する疑問は和らいでいるとしている。来年2月以降、英中銀は金利を3回に引き上げると予想しており、それよりも早期に引き上げも有り得ると指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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