ドル買い強まる 米CPIが強い内容でインフレ警戒強める=NY為替概況
きょうのNY為替市場は朝方発表の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る強い内容となったことで市場はインフレ警戒感を強めており、ドル買いが強まった。米CPIを受けて米国債利回りも急上昇する中で、ドル円も買い戻しが強まり、ストップを巻き込んで109.70円近辺まで上昇。
今回の結果を受け市場では、先週の米雇用統計で後退していたFRBの早期出口戦略への期待が再び高まっている状況。米CPI発表後に伝わったクラリダFRB副議長にも敏感に反応している模様。副議長は一過性の要因としているものの「一過性ではないと分かれば、FRBは行動する」と述べていた。
米CPIは、パンデミックによって最も打撃を受けた企業がより広範囲に活動を再開し、ワクチン接種を受けた人々が社会活動と旅行を再開するにつれて、自動車、輸送サービス、ホテル滞在の価格が急上昇したことを示した。ただ、市場の一部からは、4月の米CPIについてFRBはまったく懸念しておらず、ホテルや旅行サービスのほか、自動車などのサプライチェーン問題による価格上昇は一時的なものとみなしている。インフレ率が長期間2%を下回ったことから、FRBは短期的にはある程度の上昇は逆に歓迎するだろうとの指摘も出ている。
ドル円は21日線を上放れる展開を見せており、直近高値の109.70円付近が目先の上値メドとして意識される。
ユーロドルは戻り売りを一気に強め1.20ドル台に下落。米CPI発表直後に売りが強まり、一旦買戻しの動きも見られていたが、発表後の売買交錯が終了すると、本格的に戻り売りを強める展開が見られた。一時1.2065ドル近辺まで下落する場面がみられたが、本日の21日線が1.2060ドル付近に来ており、その水準を試す動きもみられていた。
欧州委員会は本日、今年のユーロ圏の成長見通しを上方修正した。ワクチン展開の加速と復興基金の稼働、世界経済回復による輸出への追い風が見通しを改善させたとしている。本日は下落しているものの、短期的にはユーロドルは上昇を見込む声も少なくない。しかし、ユーロに対する弱気な見方も出ている。ユーロ圏のインフレは持続的に低いほか、他の先進国と比較してユーロ圏の成長見通しも弱く、ECBは引き続き緩和的な金融政策を継続するという。米国のインフレと成長見通しはユーロ圏よりもかなり強く、ユーロ安をフォローする利回り格差が徐々に拡大。ワクチン展開の加速により、ユーロ圏の見通しはやや改善したが、ECBは市場が現在割り引いているよりも遥かに長期間政策金利を据え置くと考えられるという。21年と22年末のユーロドルの予測は1.15ドルとしている。
ポンドドルも戻り売りに押され1.40ドル台半ばまで下げ幅を拡大。ポンドはワクチン展開の早さや回復期待、そして、英中銀の早期出口戦略着手への期待から買いが強まっていたが、きょうはその動きも一服していたようだ。
市場の一部からは、ポンドは今年の残りの期間、対ドルで概ね安定的に推移する一方、対ユーロでは上昇が見込まれるとの声も聞かれる。ポンドドルについては、ドルは概ね上昇を予想する一方、英国の比較的大きな財政措置と急速なワクチン展開がそれを相殺するという。しかし、英国はユーロ圏よりも回復は早く、英国の長期金利と資産市場はユーロ圏のそれよりも高パフォーマンスが予想されるという。ポンドドルは年末までに1.40ドル、ユーロポンドは0.82ポンドへの低下を予想している模様。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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