ドル円は再び下値模索の動き=NY為替後半
NY時間の終盤に入ってドル円は再び下値模索の動きが出ている。きょうのNY為替市場はドル売りが優勢となり、ドル円は109.60円付近まで一時下落した。ただ、この日発表の3月の米小売売上高は予想を大きく上回る強い内容となった。バイデン大統領の追加経済対策に伴う1400ドルの直接給付や、2月の寒波からの回復、そして、広範な経済再開が個人消費を活発化させた模様。
今後も経済再開は本格化し、景気刺激策の影響は4月も続くことが予想される中で、今回の米小売売上高の数字は、GDP最大の構成要素である個人消費の力強さが第2四半期まで持続し、GDPを過去数十年で最高のペースに拡大させることを予感させる内容ではあった。
しかし、市場は素直な反応を示していない。為替市場はドル売りが強まり、米国債利回りは逆に下げ幅を拡大している。今週の米消費者物価指数(CPI)の反応も同様だったが、強い米経済指標が米経済以上に世界経済の回復を連想させ、為替市場ではリスク選好のドル売りを復活させているのかもしれない。FRBの慎重姿勢継続が最大要因と思われるが、第1四半期のインフレ期待とは市場の捉え方に変化が出てきている可能性もありそうだ。
ユーロドルはやや伸び悩む動きも見せているものの、1.1960ドル近辺と大きな心理的節目の1.20ドルをうかがう展開は維持している。この日発表の米小売売上高は強い内容となったものの、為替市場はドル買いの反応を見せず、米国債利回りも下げの反応を示していることから、ユーロドルはサポートされている。
第2四半期に入ってユーロの流れに変化が見られ、ユーロドルはリバウンドの動きが強まっている。米国債利回りの上昇が落ち着いたこともあるが、欧州債利回りは米国債ほどの低下が見られず、利回り格差に縮小傾向が見られていることもユーロドルをサポートしている。
アストラゼネカやジョンソン&ジョンソンのワクチン接種で血栓が発生しており、欧州のワクチン展開にも影響が出ているものの、以前よりは楽観的な見方も出始めており、今後は接種が加速し、英米に徐々に追いついて行くとの期待も出ているようだ。それに伴い経済回復もやがて始まるとの見方も出ている。より多くの財政支援を含め、市場の欧州の見通しには明確な変化が見られ始めている。ECBとIMFからの財政拡大の要請も、ユーロに対する前向きなセンチメントをさらに高めているという。
ポンドドルは1.37ドル台後半での上下動に終始している。21日線が1.3790ドル付近に来ており、その水準付近での振幅が続いている。第1四半期のポンドは対ドルではそうでもなかったものの、対ユーロや円では一貫して力強い展開を見せていた。しかし、第2四半期に入れるとその動きも止まり、次第に上値が重くなって来ているようだ。一時153円台まで上昇したポンド円も、ここ数日は150円割れを試す動きとなっている。
これまでポンドを支援したのはジョンソン政権の迅速なワクチン展開と英中銀がマイナス金利を採用しないとの見方だ。しかし、それも第1四半期でかなり織り込まれており、今後は周回遅れとなっていた欧州でのワクチン展開が英国に追いついてくることが予想される中で、先行していた英国の優位性が薄れてくるとみられている。第1四半期でマイナス金利への期待が完全に剥落されていることから、ポンドを上昇させるためのハードルは高くなっているとの見方も出ている。むしろ、EU離脱に伴う実体経済への影響や、来月のスコットランド議会選挙など、もともとある英経済へのリスクに市場はより神経質になりつつあるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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