リスク回避後退でドル円は109円台うかがう展開も伸び悩む=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は買いが優勢となり、109円台回復をうかがう展開を見せていた。米株式市場が反発し、前日急落した原油相場も61ドル台を回復するなど、前日のリスク回避の雰囲気が後退。米国債利回りも一時上昇に転じ、ドル円の買い戻しをサポートしたようだ。
一方、109円手前での戻り売り圧力も強く、後半は109円台を回復することなく伸び悩んだものの、下押す気配まではみられていない。目先は109円台を回復し、目先の上値抵抗となっている109.20円付近を試すか注目される。
パウエルFRB議長とイエレン米財務長官の上院での議会証言が行われていたが、パウエル議長は利回り上昇について、「ワクチン接種や成長期待を反映しており、秩序あるプロセスにある」と述べていた。引き続き現状の利回り上昇を容認する発言を繰り返したが、為替市場の反応は限定的だった。
為替市場では根強くドル高が続いているが、市場からはドルは短期的に米経済のアウトパフォームの恩恵を受けるとの見方も出ている。バイデン政権はインフラ投資を軸とした成長戦略に基づく財政出動規模を最大3兆ドル超に拡大する可能性があるとの報道が伝わっていた。バイデン政権内ではインフラ投資を優先した戦略分割案を検討しており、週内にもバイデン大統領に提示される見通しだという。明日25日のバイデン大統領の会見が注目されるが、この動きは米国と主要国の利回り格差をさらに拡大させ、ドルに有利に働く可能性があるという。
いずれインフレ調整後の実質利回りがマイナス圏で固定されることからドルの弱体化も想定されるが、欧州や新興国の回復がもたつく中で、世界的回復の実現には、しばらく時間かかり、それまではドル高が続く可能性あるという。
ユーロドルはNY時間に入って下げを一服させたものの、1.18ドル台前半と軟調な値動きが続いている。本日の200日線は1.1865ドル付近に来ているが、それを下回る水準での取引が続いている状況。この日発表の3月のユーロ圏PMIは予想を上回ったものの、ユーロ買いの反応は鈍い。市場はドイツを始めとした、ユーロ圏各国の封鎖措置の再導入とワクチン接種率の低さによる景気見通しの悪化を懸念しているようだ。
Ifo経済研究所が今年のドイツの成長見通しを下方修正した。ドイツではウイルス危機が長引いており、力強い回復への期待が後退している。従来は4.2%成長を見込んでいたが、それを3.7%に引き下げた。一方、22年については従来の2.5%から3.2%に引き上げている。また、失業者数は20年の270万人から今年は265万人、22年は244万人へと僅かな減少に留まるとも言及。なお、20年から22年までのウイルス危機の総コストを4050億ユーロと試算した。
ポンドドルはNY時間に入って下げ渋ったものの、1.36ドル台に下落し、21日線を下放れる展開が続いている。ポンドの地合いは徐々に弱まっている気配も見られる。この日は2月の英消費者物価指数(CPI)と3月の英PMIの2つの英経済指標が発表になっていたが、強い指標への反応は鈍く、弱い指標には敏感に反応していた。
3月の英製造業PMI速報値は予想を上回り景気判断の分岐点となる50も上回った。しかし、ポンドの反応は限定的となっていた。一方、2月の英CPIは前年比0.4%上昇となり、予想の0.8%を下回った。市場では利上げは当面ないとの見方も出ている。発表後にポンドは敏感に反応し、ポンドドルは1.36ドル台に下落した格好。ただ、ワクチン展開の進捗が順調で現在のポンド安は調整との見方は依然として強い。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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