ドル円は戻り売りが続く インフレ期待は根強くスティープ化が続く=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は戻り売りが続いた。ロンドン時間にはドル売りが優勢となり、ドル円も105.60円付近まで値を落としていたが、本日105.50円付近に来ている200日線を試す気配までは見られず、NY時間の前半には105円台後半まで下げ渋る動きも出ていた。しかし、米株式市場が調整色を強める中で106円台には慎重な雰囲気も見られ、後半にはドル売りが再び強まったことから、ドル円も戻り売りに押される展開となった。
市場ではインフレ期待が高まっており、イールドカーブのスティープ化が続いている。2年債と10年債の利回り格差は一時120ベーシスポイント(1.20%)まで拡大し、2017年3月以来の水準まで拡大している。バイデン大統領の1.9兆ドル規模の追加経済対策やワクチン展開で市場は、下半期の米経済の回復期待を強めており、消費拡大から消費者物価の上昇期待を強めているようだ。また、米民主党は時給15ドルの最低賃金導入を目指しており、インフレ要因となってもおかしくはない。ただ、失業率の改善には障害となる可能性はありそうだ。
きょうはフィラデルフィア連銀指数が公表されていたが、このところの企業景況感指標をみると、仕入価格の数値の上昇が目立っている。世界的にコモディティ価格が上昇しており、その動向が反映されているのかもしれない。いすれ一般価格に転嫁される可能性もある。一方、本日は米新規失業保険申請件数も発表されていたが、雇用回復の鈍さを示す内容となっており、インフレよりも雇用に軸足を移している感もあるFRBの慎重姿勢は緩みそうにない。
ユーロドルはNY時間に入って一旦伸び悩む動きを見せていたものの、1.20ドル台後半に再び上昇。前日は1.20ドル台前半まで下落し、ECBも注目しているとされる大きな心理的節目1.20ドルを試しそうな気配がみられたが、その水準は維持されている。1.21ドル手前に100日線と21日線が来ており、この水準を回復できるか注目される。この水準を回復できるようであれば、上昇トレンド回帰への期待も高まることから、重要な局面にあるとも言える。
このところのユーロ軟調の背景に、欧州は米英に比べてワクチン接種の展開が鈍く、封鎖措置も続いていることから、他国よりも回復は鈍いとの見方が要因の1つとして挙げられている。一方、そのほかECBのユーロ高へのけん制も指摘されている。しかし、市場からは、実効為替レートでユーロが10%上昇すると、成長とインフレが年間で0.3%から0.4%ポイント低下し、ECBがユーロ高を懸念するのは当然だが、できることは少ないとの声も聞かれる。ECBができる最善の策としては、戦略レビューを完了させ、イールドカーブのスティープ化を抑制しつつ、インフレのオーバーシュートをより長く容認し、緩和策の長期化にコミットすることぐらいだという。
ポンドドルは1.3975ドル近辺と1.40ドルを試しそうな雰囲気が出ている。英国では欧米と比較してワクチン接種が進んでおり、人口の20%超まで接種率が進む中、英経済見通しの改善でポンドは今後3カ月は上昇するとの見方も出ている。ポンドドルは1.42ドルまで上昇する可能性もあるという。
ポンドに対する強気な見方のリスクとして、英国での封鎖措置の緩和が予想より以上に慎重とみられている点。最新の報道によると、英政府は封鎖措置の緩和に非常に慎重なアプローチを採用する意向とも伝わっている。そうなれば、少なくとも第2四半期の景気回復は予想よりも鈍化する可能性がある。年内に英中銀が追加刺激策を提供する可能性は低く、この点はポンドにとってはより有利な環境ではあるが、これは第2四半期以降の英経済の力強い回復を前提としている部分が大きいという。なお、ジョンソン首相は来週22日に封鎖解除計画を公表予定。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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