ドル円は103円台半ばでの上下動が続く 2000ドル巡り思惑錯そう=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は上下動。ただ、103円台半ばを中心とした方向感のない展開に変化はない。米下院はきのう、個人への直接給付の金額を2000ドルに増額する修正案を超党派で可決し法案は上院に送られた。市場では共和党が反対していることもあり期待値が低かったが、下院を通過したことで期待が高まっている。もし、上院を通過した場合は、トランプ大統領の主張でもあることから、成立は確実な情勢。
共和党の上院議員の一部からは賛成票を投じる意向も示されている。しかし、共和党のマコネル米上院院内総務は、直接給付案の採決の試みを阻止しており、情勢は混とんとしている状況。
FRBがインフレをある程度許容し、低金利継続姿勢を明確にしている中で、2000ドル給付案が成立した場合、インフレを押し上げる可能性があるという。今後数カ月のワクチン接種と個人消費増加による力強い景気回復がインフレ圧力を高め、名目金利からインフレ期待を差し引いた実質金利のマイナス幅は拡大が予想される。それがドル安に繋がる可能性があり、ドル円の上値を圧迫する可能性もある。
ユーロドルはNY時間に入って買いを強め、一時1.2275ドル付近まで上昇し、年初来高値を更新した。月末絡みのドル売りフローが出ていたとの指摘も聞かれる。その後、ユーロドルは伸び悩んだものの、1.22ドル台半ばで推移しており、上昇トレンドをしっかりと堅持している。
力強さを維持しているユーロドルだが、変異種ウイルスの脅威に対応するため、欧州各国では部分的な都市封鎖措置が再実施されている。そのため、欧州の経済活動の回復ペースは鈍化し、2021年の第1四半期にユーロドルは1.20ドルまで下落する可能性も指摘されているようだ。厳格な措置が今後数カ月の回復のペースを遅らせるという見方にもかかわらず、市場のユーロに対する強気なポジションは10月初旬以来の水準に上昇しており、ポジション調整が入りやすいという。
きょうはポンドドルも買い戻された。前日は1.3430ドル付近まで下落し、21日線に顔合わせしたが、その水準がサポートされ、上昇トレンドは維持された格好。難航していた貿易交渉が年内に決着したことで、市場には安堵感が広がっている。本日は英オックスフォード大と英アストラゼネカが開発したワクチンを英政府が本日中に承認する可能性も伝わっていた。
英EU離脱への不透明感は後退したものの、同時にポンドはこの先、離脱に伴う英経済への悪影響という厳しい現実に直面するとの見方も市場では多い。当面の英経済は厳しい情勢が続くことが予想され、英中銀によるマイナス金利採用のシナリオも消えてはいない。ポンドは現行レベルを上回る持続的上昇は期待しづらいとの見方も多いようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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