ドル安一服でドル円も買い戻し ショートの積み上がりを指摘する声も=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル安が一服し、ドル円も買い戻しが優勢となった。一時103.60円近辺まで上昇したが、来年もドル安期待が根強い中で上値は抑えられている。ただ、一部からは市場のドル安期待の高まりと伴にドルのショートポジションがかなり積み上がっており、何らかのイベントをきっかけに、その巻き戻しが入るのではとの指摘も出ていた。
きっかけとなるイベントとしては、英・EUの貿易交渉の合意や米追加経済対策の成立が可能性の1つとして挙げられている。それと伴に円ロングも急速に積み上がっていることから、一時的にドル円の買い戻しが入る可能性も指摘されていた。
一方、きょうは日銀決定会合の結果が発表され、現行の金融緩和策は維持された。一方、感染が再拡大している状況下で影響を受ける企業への資金繰り支援策の期限は来年9月まで半年間延長することを決めた。予想通りの内容でもあったことから、ドル円の反応は限定的だった。日銀は現行の政策の再点検を開始することを表明した。来年3月をめどに公表するという。再点検にはイールドカーブコントロール(YCC)やETF購入も含まれる。いずれにしろ、円安を誘発するような材料にはならないとみられている。なお、黒田総裁はきょうの会見で、このところのドル円の下げについて、「景気に重大な影響があるとは考えていない」と述べていた。
そのような中で、来年のドル円はドル安圧力の継続から、100円を割り込むとの予想も少なくないようだ。
ユーロドルは上げが一服し、1.22ドル台前半まで伸び悩む場面も見られた。特にユーロドルを売る材料が出たわけではないが、本日はドル安が一服しており、ユーロドルも利益確定売りが出たようだ。ユーロドルを売ってドル円を買う動きが投機筋から活発に出ていたとの指摘も聞かれた。英・EUの貿易交渉が再び不透明になっており、ポンドが対ドルで売られていることも、ユーロドルを圧迫。
ユーロドルはこのところの上昇で、さすがに過熱感も出ている。過熱感を測るテクニカル指標であるRSIは72で推移しており、買われ過ぎの水準に再び上昇。クリスマスに向けて少し一服感も欲しいところなのかもしれない。しかし、下値での買い意欲は旺盛なようで、終盤には1.22ドル台半ばまで戻している。
ポンドは前日のNY市場の終盤からの流れを引き継いでいる。ポンドドルは1.34ドル台に下落。楽観的な雰囲気が広がっていた英・EUの貿易交渉に再び暗雲が立ち込めている。最後の障害となっていた漁業権の対立に突破口が見い出せないようだ。英国側は海域での漁業の管理強化を主張しているが、EU側は受け入れられないようだ。バルニエEU首席交渉官はジョンソン英首相に対して、「英国は漁業の管理強化の見返りに、単一市場へのアクセス制限を受け入れる必要がある」と警告した。英国がEUに対する漁獲割り当てを制限した場合、他の分野で対抗措置をとるというもの。
市場はまだ、決裂するとまでは見ていないものの、不安感は高まっている模様。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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