ドル円は伸び悩む 再び２１日線の下に＝ＮＹ為替後半

　ＮＹ時間の終盤に入ってドル円は戻り売りに押されており、１０４．２０円付近で推移している。きょうのＮＹ為替市場はドルの買い戻しが強まり、ドル円はストップを巻き込んで一時１０４．４０円近辺まで上昇した。ロンドン時間には１０４．０５円付近まで値を落とし、１０３円台をうかがう動きも見せていたが、１０４円台は維持している格好。

　特にドル買いを誘発する具体的な材料は見当たらないが、米株が利益確定売りに押されていることもあり、積み上がっていたドルショートの調整が出ているのかもしれない。クリスマスに向けた調整もそろそろ出始めているのかもしれない。

　ＥＵ外交筋の話として、英離脱巡りＥＵ首脳が今週承認することはないと伝わったことも、欧州通貨売り・ドル買いを誘発したようだ。欧州委員長は英首相に姿勢転換を迫る必要あるという。きょうの夕方にフォンデアライエン欧州委員長とジョンソン英首相の夕食会が行われるが、合意は出ない可能性を警戒しているようだ。同外交筋は夕食会が好結果でも交渉再開は必要だとも述べていた。

　市場は米経済対策の行方に注目しているが、米共和党のマコネル上院院内総務は、「米民主党はゴールポストを動かしている」と非難。暫定予算の期限を迎える中で依然として突破口を見い出せないようだ。それに伴うリスク回避のドル買いが出ているのかもしれない。ドル円に関しては、本日の米国債利回りが上昇していることも下値をサポートしているものとみられる。

　しかし、全体的にはドル円の雰囲気に変化はない。本日１０４．３０円付近に来ている２１日線の下に再び戻しており、突破する勢いまではまだないようだ。一方、１０３円台に入ると買いオーダーも出る状況。

　ドル円は依然として上値は重いものの、次第に下値が固くなっている印象もある。一部からは、年末に向けたドル需要が下値で入っているとの指摘も聞かれる。短期金融市場では今月に入って、年末に向けた円に対するドルの調達コストが上昇している。一部の大手銀が短期金融市場でドルの貸付けを縮小しており、年末にかけてドル需要が圧迫される可能性があるとの指摘も出ているようだ。

　ユーロドルは戻り売りが強まり、１．２０６０ドル付近まで下落する場面もみられた。ただ、きょうは混迷していたＥＵ予算と復興基金については前向きなニュースが出ている。法の支配順守を資金配布の条件とする案に抵抗していたポーランドとハンガリーが、ドイツと合意したと伝わった。詳細は伝わっていないが、ＥＵ全体の合意が１１日のＥＵ首脳会議で決まりそうな気配となっている。しかし、ユーロの反応は限定的。

　明日はＥＣＢ理事会が開催される。追加緩和が確実視される中で予想がまちまちとなっている。パンデミック緊急購入プログラム（ＰＥＰＰ）の拡大が見込まれるが、規模は５０００億ユーロをコンセンサスに、３０００億ユーロから６０００億ユーロまで様々出ている。また、期間延長も打ち出されるものと見られるが、６カ月から１年の範囲で予想が分かれている状況。一方、理事会を受けたユーロの反応に対する見方も様々で、限定的との見方や短期的に売りで反応するとの見方も出ているようだ。いずれにしろ、明日の最大の注目イベントではある。

　ポンドドルも売りが強まり、１．３３６０ドル付近まで一時下落。ポンド円は一時１４０円台を回復していたものの、１３９円台半ばに伸び悩む展開となった。きょうは貿易交渉に対する不透明感がポンドを圧迫している。ただ、市場の合意への期待は依然として高い。

　きょうはカナダ中銀が金融政策を発表。政策金利および、少なくとも週４０億加ドルの資産購入目標も据え置かれ、さらに声明についても概ね変更はなかった。予想通り。ただ、発表後のカナダドルは買いの反応を見せ、カナダ円は８１．６０円近辺まで一時上昇。一部からは追加緩和のヒントが何か出るのではとの期待もあったが、据え置きとなったことから、カナダドルは買いの反応を示したのかもしれない。ただ、米週間石油在庫統計を受けて、原油相場が売られたことで、カナダ円も８１円台前半に下落した。

MINKABU PRESS編集部　野沢卓美