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とれんど捕物帳 どちらでも“ドル安”がメインシナリオか

為替 

 今週の市場はリスク回避の雰囲気が強まり、ドル円は下値を切り下げる展開が見られている。一時104.10円付近まで下落し、104円割れをうかがう動きもみられた。104円の水準は9月に強いサポートなった水準。7月にもその付近でサポートされている。意識せざるを得ないポイントではあるが、完全にブレイクすれば、ロング勢がトラップドアに入り込み、102円台まで一気に下落するリスクもあるとの声も聞かれる。一方で、短期筋の急速なショート・ポジションの積み上がりも想定され、ショートカバーのきっかけになる可能性もありそうだ。警戒されるポイントではある。

 市場がリスク回避の雰囲気を強めた要因は様々あるように思われるが、1、米大統領選追加経済対策の早期合意期待の後退、2、米国で感染第3波、欧州で感染第2波の拡大が加速、3、米大統領選前の月末でリスクを意識したポジション調整、などが挙げられている。いずれにしろ、政治や社会情勢の問題で経済のファンダメンタルズでないことから、市場も戦略を立てづらい状況ではある。

 1、米追加経済対策については、米民主党側も慌てて合意する必要もないと考えているのかもしれない。米大統領選はどちらが勝利するかわからないが、同時に行われる議会選挙では、上下両院とも民主党が多数を占める可能性が高いとも言われている。民主党側は2.2兆ドル規模、トランプ政権は1.8兆ドルまで規模を引き上げて来ているようだが、民主党側からすれば、議会を席捲してからでも遅くはないと考えているのかもしれない。これについて市場は、中身も去ることながら、規模に関心が向いている。トランプ大統領、バイデン候補、どちらが大統領になったとしても、規模は2兆ドル前後が想定され、市場としては満足の行く規模になると考えているようだ。要は時期の問題だけということになる。

 2、米欧での感染拡大については厄介だ。ドイツやフランスでは一部に都市封鎖(ロックダウン)の再導入を決定している。米国でも一部の州で制限措置を導入し始めている。景気の先行きに比較的楽観的だっだ市場も、慎重になり始めたものと思われる。ただ、3月ほどは恐怖感は高まっていないようだ。感染しても致死率は低いとわかっているからだ。ただ、感染すると何かと面倒なことが起こることから感染は絶対にしたくはない。以前も述べたが、この問題は新薬やワクチンなど対処療法が確立されないうちは、拡大と収束を繰り返し、常につきまとう。その過程の中で人々の心理がどう変化するか次第だが、政府もあまりにきつく締め過ぎると、更に深刻な問題に発展するリスクもある。バランスが重要と思われる。

 3、米大統領選前の月末でリスクを意識したポジション調整だが、最も今週の相場に影響したのではと、個人的には考えている。ここから来週のテーマに移るが、何と言っても3日の米大統領選が最注目であろう。世論調査では民主党のバイデン候補が圧倒的に優勢で、勝利の確率が80%以上と言っている調査もあるようだ。市場もバイデン候補の勝利で織り込みに行っている節もあるが、最近の世論調査は、発表元の意志が働くこともあり、あまり当てにならないとも言われている。米大統領選の場合、激戦州とよばれる5から6の州の動向が勝敗を決めるとも言われている。激戦州ではトランプ大統領のほうが若干リードとの調査もあるようだ。トランプ大統領の集会には大勢の人が集まっているのに対して、バイデン候補の集会には人があまり集まっておらず、2016年の選挙と同じ雰囲気だとの声も聞かれる。

 はっきり言って分からないというのが本音であろうが、為替市場の見立ては実にシンプルで、“どちらでもドル安”というのがメインシナリオのように思われる。バイデン候補であれば、富裕層や法人への増税が警戒されるものの、インフラや環境関連支出など大規模な財政支出が想定され、財政赤字は8兆ドル拡大するとも言われている。一方、トランプ大統領が続投となっても減税と追加経済対策で4兆ドルの財政赤字拡大が見込まれている。それに伴って国債も増発されることになる。ただ、FRBが実質的に財政ファイナスを実施している面もあり、クレジットが崩れるという心配はなさそうだ。FRBはインフレ目標の基準を緩めているが、インフレ期待さえ高まらなければ、大事にはならないと見られている。現代の経済環境はインフレになりにくいことは周知の通り。財政拡大で米個人消費が盛り上がれば、米国の場合、同時に貿易赤字の拡大も予想される。いずれにしろ、少なくともドルを買う理由は見当たりそうにはない。

 トランプ大統領続投であれば、米中対立が更に激化するとのシナリオが言われているが、この点については、バイデン候補でも同じであろう。むしろ、民主党政治ということもあり、人権問題に深く切り込んで、事態はさらに悪化することも警戒される。もし、ドル高のシナリオを想定するとすれば、人民元安・ドル高の波及かもしれない。

 目下、市場の心配事は他にもある。投票後に結果がすんなりとは決まらないリスクだ。感染を警戒してか、期日前投票が過去最多に増加しており、27日の午後時点で、前回よりも18%多い6925万人に増えている。その中でも懸念は郵便投票だ。期日前投票のうち4619万票が郵便投票によるものとなっている。その多さに11月3日の投開票日には10州前後で大勢が判明しない可能性も浮上しているという。トランプ政権は郵便投票は不正の温床として非難している。郵便投票の数は民主党員の方が共和党員よりも圧倒的に多い。トランプ大統領が郵便投票の集計結果に不正を申し立て、裁判に発展する可能性が警戒されている。米上院は先日、保守派のバレット判事を最高裁判事に承認し、ホワイトハウスでは祝賀式典が催されたようだ。市場では米政治に空白が生じるのではとの不安を高めている。その場合はリスク回避のドル高のシナリオも想定されるが、もっとも、短期的な動きではあろう。いずれにしろ、米大統領選は要警戒だ。

 来週のドル円の想定レンジだが、103.00円~105.50円といつもより若干広めに想定する。スタンスは「弱気」を継続。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↓↓(↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓(→)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)

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次回の配信は11月14日(土)の午前を予定しています。
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

MINKABU PRESS

執筆者 : MINKABU PRESS

資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。

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