ドル円は一本調子の下げを見せ105円を割り込む リスク選好のドル売り加速=NY為替前半
きょうの為替市場はドル売りが強まっており、ドル円は一本調子の下げを見せており、心理的節目の105円を割り込んでいる。一時104.35円付近まで下落する場面もみられた。105円を割り込むと押し目買いも観測されていたが、買戻しの動きは見られていない。前日は強い上値抵抗となっていた105.50円水準を突破し、上値期待を高めていたが、結局、失速していた。上値への重さを再確認したロング勢が見切り売りを出している面もありそうだ。
米追加経済対策の合意への期待が高まっており、きょうの為替市場はリスク選好のドル売りが加速している。ペロシ米下院議長とムニューシン米財務長官がきのうも協議を行っていたが、合意できなかった。しかし、協議はきょう以降も継続することが示され、ペロシ議長は「今週中に合意がまとまるとの希望を失っていない」と述べていた。ペロシ議長はきのう20日を協議の期限としていたが、継続を決定している。議長の発言からは、協議は今週一杯まで続く可能性もあり、市場は合意に向けた進展が見られているのではとの期待を高めている。
ドル円は早期に105円を回復できないようであれば、パンデミック危機が高まった3月の安値を目指す展開も警戒される状況。目先は9月安値の104.00円が下値メドとして意識される。
ユーロドルは1.18ドル台後半まで上げを加速。21日線から上放れる展開が続いており、大きな節目として意識されている1.20ドルを再び試しそうな気配も出ている。EUでは感染第2波の拡大が続いており、イタリアでは新規感染者が過去最多となった。景気の先行き不安から、インフレ期待も後退する中で、市場ではECBの追加緩和期待が高まっており、ファンダメンタルズ的にはユーロを買う材料はない。
ドルの先安感がユーロドルを押し上げているようだが、市場の一部からは、EUが初めて発行するソーシャルボンドへの需要が強かったことが、今後もユーロをサポートするとの声も聞かれる。10年物と20年物で計170億ユーロの起債だったが、それに対し2330億ユーロ余りの注文が集まった。その中には外国中銀からの注文も含まれていたとの観測も聞かれる。中銀の債券購入の場合は通常、為替ヘッジはしないことから、直接的なユーロの押し上げ要因になる。EUは今後、復興資金調達のため、最大1兆ユーロ相当のEU債発行を計画している。
米国では今後、景気対策のための巨額の財政支出が想定されるほか、財政拡大による米個人消費の活発化で、貿易赤字拡大も警戒されている。一方、FRBは低金利の長期化を強調しており、しばらくは、ゼロ金利政策を継続する可能性がある。そのような環境下で市場では、ドルの支配的な役割が疑問視されており、EU債購入をきっかけに、各国中銀も外貨準備をドルからユーロにシフトする動きを今後も続ける可能性があるとの指摘も出ている。
ポンドも買いを強めており、ポンドドルは1.31ドル台半ばまで上昇。英・EUの通商交渉が再開の見通しとなり、双方は11月中旬までの合意を目指すと伝わっている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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