リスク選好のドル売りでドル円は一時106円台前半に急落 市場は経済再開を優先=NY為替概況
きょうのNY為替市場はリスク選好のドル売りが強まる中でドル円も売りを強め、ストップを巻き込んで一時106円台前半まで急落した。
東京時間には107円台を回復していた。ナバロ米大統領補佐官がマスコミでのインタビューで、中国との貿易合意は「終わった」と述べたと報じられ、市場はリスク回避を強めていた。しかし、トランプ大統領が、中国との合意は「全く損なわれていない」と説明したことで、市場には安心感が広がっている。ナバロ氏本人も火消しに回っていた。
この動きを見て市場はリスク選好の雰囲気を強め、株高、原油高、米国債利回りも上昇。為替市場はリスク選好のドル売りを復活させているようで、ドル円はNY時間に入って戻り売りを強めている。一時107円台を復活させた分、上値期待を高めたロング勢の見切り売りが加速した気配もある。
きょうはひとまず落ち着いた格好だが、米中対立に関してはいずれ焦点があたる可能性はある。しかし、いまのところは市場も静観を決め込んでいるようで、感染第2波と経済再開との間での綱引きを続けている。感染第2波は悪化が伝わっているが、各国政府は再度経済封鎖を実施する意向は示しておらず、市場も行方を見守っているようだ。その中で市場は経済再開のほうを優先させているようだ。ドル円は5月安値の106円ちょうど付近が目先の下値メドとして意識。
ユーロドルは買い戻しを強め、1.1350ドル近辺まで一時上昇。きょうの上げで21日線でサポートされた格好となっており、6月10日の高値1.1420ドルを再び目指す動きが見られている。
ユーロはポジティブな反応こそ示さなかったが、この日の6月のユーロ圏PMI速報値は予想以上に強い内容となり、欧州企業は先行きへの期待感を高めていることが示された。特にフランスの製造業PMIは景気判断の分岐点となっている50を一気に回復しており、パンデミック前はもちろんのこと、2018年9月以来の水準に上昇している。ドイツやユーロ圏全体も50こそ回復しなかったものの強い数字となっている。急激な落ち込みによる反動の面が強いものと見られるが、パンデミックによる移動制限が依然として続いている中で、予想外に企業のセンチメントは強いことがうかがえた。
ポンドドルも買い戻しを強め1.25ドル台を回復。本日の21日線は1.2525ドル付近に来ているが、その水準を回復する動きが見られ、明日以降の動きが注目される。
市場は米中対立や感染第2波などのリスクはあるものの、経済再開への期待を優先させ、為替市場は再びドル売りの動きを復活させている。この動きに一部からは、リスク選好のドル売りが続くようであれば、ポンドはユーロよりも妙味があるとの声も聞かれる。依然としてEUとの貿易交渉への不透明感は強いものの、市場はいまのところ静観する姿勢を強めており、ネガティブな反応は示していない。ユーロドルは200日線を既に上方乖離しているが、ポンドドルはまだ、200日線の下おり、上昇余地は大きいという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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