ドル円は110円を再び割り込む場面も リスク回避のドル安=NY為替前半
きょうも市場はリスク回避の雰囲気を強め、ドル円は110円を再び割り込む場面が見られた。新型ウイルス感染の経済への影響を市場はより意識し始めたようだ。中国での新規感染者数の発生は鈍化しているものの、イタリアやイランなど中国以外の国での感染が急拡大しており、世界経済への懸念につながっている。更に米国疾病管理予防センター(CDC)が、旅行歴のない米国人のカリフォルニアでの感染を確認したことも重石となっている模様
この状況を受けエコノミストやアナリストからは、成長や企業収益の見通しの下方修正が相次いでおり、一部には金融危機以来の低水準に落ち込むとの見方も出ている。市場は、感染が予想以上に深刻であることに気づき、経済に与える現実的な影響を織り込む動きを活発化させているとの声も聞かれる。これまでは、感染拡大にもかかわらず、好調な米経済指標や米企業決算を材料に楽観的な雰囲気もあったが、影響を再認識しているようだ。
米株式市場の利益確定売りが加速し、米10年債利回りも過去最低水準を更新する中、為替市場の反応はリスクの円高というよりもむしろ、ドル安のようだ。FRBは様子見姿勢を強調しているが、市場は年内の米利下げの可能性を強めている。CMEがFF金利先物の取引から算出しているFEDウォッチでは、年内の利下げ確率は95%と確実視しているほか、3回以上が75%まで上昇している状況。ECBや日銀の緩和余地が小さくなる中、FRBの積極緩和で金融格差が縮小するとの見方がドル安を誘っているようだ。
そのような中、ユーロに見直し買いが活発化しており、対ドルのみならず、対円、ポンドでも上昇。ユーロドルは21日線を回復し、一気にショートカバーが強まり、1.10ドル台まで回復する場面も見られた。ドイツを始めとしたユーロ圏各国の財政拡大策への期待感もあるものの、ユーロ買いの材料は米利下げ期待の高まりによる、ドル安であろう。これまでのドル高の逆風をユーロが最も受けて来たことから、その巻き戻しが出ているものと思われる。
ポンドは戻り売りが続き、ポンドドルは1.28ドル台に下落。3月11日の予算案への期待が後退している。引き続き、EUとの貿易協定締結の交渉へのリスクがポンドに影を落としている。対ユーロでの売りも圧迫。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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