【来週の注目材料】カーニー総裁最後のMPCは据え置きか利下げか?<英中銀金融政策会合>
1月30日に英中銀金融政策会合(MPC)の結果及び議事要旨が発表されます。先週、英エリザベス女王がEU離脱関連法案を裁可し、現地時間1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)にEUを離脱することが決定した英国。離脱前最後の、そして3月15日で任期満了を迎えるカーニー英中銀総裁にとっても最後のMPCとなる今回。利下げが据え置きかで市場の見方が分かれる状況となっています。
英中銀は2会合前11月7日の会合から、9名のMPCのメンバーのうち、ハスケル委員とサンダース委員の二名が利下げ(0.75%→0.50%)を主張しています。通商問題などを受けた世界経済の減速懸念、英国のEU離脱による不透明感の拡大などが利下げ主張につながりました。
ここにきて英経済の鈍化懸念が広がっていることも、利下げ見通しを後押ししました。13日に発表された11月の英GDPは、前月比-0.3%とマイナス成長を記録。前年比ではプラスですが+0.6%と低めの数字となりました。17日に発表された12月の英小売売上高が予想外に前月比マイナスとなったことなども、景気鈍化懸念につながりました。
こうした状況に加え、今月末のEU離脱後の不透明感もあり、上記2名に加え、ブリハ委員も利下げに前向きな姿勢を示しており、今会合では利下げに投票すると見込まれています。
さらに、今回が最後のMPCとなるカーニー総裁も利下げ投票に回るのではとの期待感があります。総裁は今月に入っての講演で、利下げに加え、量的緩和やフォワードガイダンスなどで、緩和の余地がまだまだあると発言。英経済の弱さが続くようだと緩和に踏み切る姿勢を示しました。
もっとも、EU離脱を前に英企業の景況感は予想されていたほどの悲観論はなく、力強さを示しています。
22日に発表された英産業連盟(CPI)の製造業楽観指数(2019年11月-2020年1月)は、前回のマイナス44から一気にプラス23に急上昇。2014年4月以来の高水準となり巻いた。英保守党が12月の総選挙で大勝し、ブレグジット問題が進展した状況が状況の改善につながったと見られました。
24日に発表された製造業及び非製造業PMI(購買担当者景気指数・12月)も共に予想を上回る好結果。製造業PMIは49.8と9カ月連続で好悪判断の境となる50割れとなりましたが、前回の47.5からかなり改善してきており、50割れとなった昨年5月分以降で最も高い水準。前回50.0、その前が49.3と50前後での推移が続いていた非製造業PMIは、52.9と50をはっきりと上回る水準まで上昇し、2018年9月以来1年4カ月ぶりの水準を記録しています。
また、政策金利を決めるもう一つの大きな材料となる雇用市場も堅調です。21日に発表された9月―11月の雇用者数が、前回値・事前予想をはるかに超える20.8万人増と1年ぶりの高水準に。失業率も予想通りながら前回と同じく45年ぶりの低水準を維持しており、英雇用市場は力強いという印象を与える状況となっています。
このように好悪材料が入り混じり、タイミング的にも微妙という今回のMPC。市場の見通しもかなり揺れており、短期金利市場動向から見た利下げ割合は、17日の英小売売上高発表後に75%前後まで上昇したものの、24日時点では50%を割り込み、据え置きが大勢に。専門家予想もかなり割れる中で若干据え置きが多いという状況になっています。
米中通商協議第一弾合意を受けた世界的な貿易摩擦懸念の後退、雇用と景況感という重要視されることの多い指標の改善傾向などから、今回は据え置きでEU離脱後の状況を見守るという見方には一理ありそうですが、3月16日付で新総裁に就任するベイリーFCA(金融行動監視機構)長官に、いきなり利下げか否かの厳しい選択を迫るのではなく、カーニー総裁自身の手で利下げに踏み切るのではいう見方も、これまでの総裁の行動から見て十分にありそう。
予想が割れている分、利下げ、据え置きどっちに決まったとしても、ポンドの動きがありそうなだけに、結果を注意してみていきたいところです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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