今週のまとめ11月25日から11月29日の週
25日からの週は、円売りが優勢だった。米中通商協議の進展期待や前週末の香港区議会選挙で民主派が大勝利したことなどを受けて株高の動きが広がった。ダウ平均株価など米主要3指数は最高値を更新している。トランプ米大統領が香港人権法に署名したことが米中政治対立をもたらしたが、通商交渉には大きな影響はないとみられ、リスク回避の動きは限定的だった。また、米GDP改定値など一連の米経済指標が強かったこともドル円の買いを誘った。ドル円は109円台後半へ、ユーロ円は120円台後半へ、ポンド円は141円台後半へと上昇。ユーロドルは一時1.10台割れ。ポンドは英総選挙を12月12日に控えて、世論調査結果に神経質に振れたが、保守党優勢の図式に変化はみられず、買いが優勢だった。豪ドルは金融政策見通しをめぐり上下動。豪中銀当局者が、QEやマイナス金利導入に否定的な発言をしたことで買われる場面があったが、豪州大手銀が来年のQE開始見通しを示すと売りに押された。株高の流れのなかでも、豪ドル円の上昇は限定的だった。木曜日が米感謝祭休日、金曜日が感謝祭翌日のブラックフライデーとなり、米市場は実質的に休場状態となった。週末にかけてはいったんはドル買いの動きで、週の高値を更新したが、参加者が少ない金曜日午後のNY市場で調整が入り、上昇分を解消する動きに。
(25日)
東京市場は、ドル円が底堅く推移。前週末の米株高の流れもあり、週明けのアジア株式市場は堅調に取引を開始した。日経平均は午前中に上げ幅が200円超となる場面も。ドル円、クロス円の買いにつながった。ドル円は先週19日以来となる108.80台まで上昇。午後には日経平均が上昇一服となったが、米債利回りの上昇がドル円を下支えした。ユーロ円は119.70近辺から120円ちょうど近辺へと上昇。ユーロドルは、ドル買いと円売りに挟まれて小動き。
ロンドン市場は、ポンド買いが優勢。週末には英保守党が総選挙に向けたマニュフェストを公表した。ジョンソン首相は、来年1月31日のEU離脱を実現し、英国に投資を呼び込むと述べた。医療制度の拡充や消費増税を引き上げないことなどを約束した。週末の世論調査では保守党の労働党に対する優位は揺ぎ無く、一部報道では総選挙で過半数を50議席上回り、安定多数を確保する見通しも伝えられた。ポンドドルは週明けのオセアニア市場で窓を開けて上昇、ロンドン市場では一段高に。ユーロはやや売りに押された。対ポンドでの売り圧力が上値を抑えた。ドル円はロンドン序盤に高値を108.90レベルまで伸ばした。中国政府系メディアの環球時報が「米中通商協議第一弾(フェーズ1)合意 非常に近い」とツイートしたことが円売りを誘った。欧州株や米株先物が上昇するなどリスク選好的な動きもみられている。
NY市場で、ドル円は108円台後半での推移。米中通商協議への期待感、週末の香港区議会選挙での民主派大勝利などを受けて、株式市場が堅調に推移しており、リスク選好の面から円安圧力となっている。一方で、このところの米債利回りの低下や、109円台での本邦輸出企業からの売り観測などが上値を抑えている。ユーロドルは1.10台割れを再びうかがう展開。ただ、大台割れには至っていない。この日発表された11月独IFO景況感指数が引き続き低迷したことが重石。ただ、独政府が積極的な財政刺激策を打ち出すことへの期待感もあるもよう。ポンドドルは1.29を挟んで上下動。最新の世論調査で保守党と労働党の下げ縮小したことがポンド売り材料となっていた。12月12日の英総選挙を前にして、世論調査結果に神経質な展開となっている。
(26日)
東京市場では、ドル円が一時急伸する場面があった。中国国営通信の新華社が「米中が協議継続で合意」と報じたことで、109.21レベルまで上値を伸ばす場面が見られた。もっとも、その後はすぐに値を戻して109円割れと上値が重くなった。100ドル超上昇していたダウ平均先物や、300円超上昇していた日経平均が上げ幅を半分以上縮め、香港ハンセンがマイナス圏、上海総合もマイナス転する場面が見られるなど、リスク警戒の動きに転じた。ユーロ円は120.25近辺まで買われた後は反落した。
ロンドン市場は、ポンド売りが優勢。最新の英カンター世論調査で、保守・労働両党の差が縮小したことが背景。先週19日に両党党首がテレビ討論を行ったが、その後の世論の変化を反映したものとして注目された。ポンドドルは1.28台半ばへ、ポンド円は140円近辺へと軟化。ユーロ相場は小動き。ユーロドル1.10台前半、ユーロ円120円付近での揉み合いに終始している。ドイツGfK消費者信頼感の改善には反応薄だった。ドル円は108.88レベルまで軟化した後の戻りは109円に届かず、上値が重い。豪ドルが振幅。ロウ豪中銀総裁の発言が、QEやマイナス金利について否定的と捉えられて、豪ドルが一時買われた。しかし、同総裁がインフレが持ち直すには長い時間がかかりそうだとしたことで、上げを消して落ち着いた。
NY市場で、ドル円が上昇。米中協議への楽観的な見方は温存されており、ドル円をサポート。中国の劉副首相とムニューシン米財務長官およびライトハイザーUSTR代表が電話会談を行った。中国商務省は「米中は第1段階の合意に向け対話継続で同意し、重要問題を適切に解決することで意見が一致した」と発表。米株式市場が底堅く推移。一方、米国債利回りは相変わらず下げが続いているものの、ドル円の売り反応は鈍い。ドル円は109円台を再び回復している。本邦輸出企業からの実需売り観測で、上値に慎重な面も。ユーロドルは1.10台前半での狭い範囲での振幅。ポンドドルは1.28台半ばまで下落と上値が重い。英世論調査に神経質な展開だった。
(27日)
東京市場では、ドル買い優勢。ドル円は109円ちょうど付近から109.10台へと小幅上昇、ユーロドルは1.1025近辺から1.1010割れへとドル高の動き。前日の海外株続伸を受けて、日経平均がしっかりとした動きを見せたことがドル買い材料とみられた。また、豪ドルは独自の材料で下落。豪大手銀チーフエコノミストが、来年6月に豪中銀は利下げに踏み切り、来年後半には量的緩和を開始、との見通しを示したことに反応した。豪ドルは対ドルで0.6790近辺から0.6770近辺へと下落した。前日にロウ豪中銀副総裁が、QEに否定的な発言をしていただけに、サプライズとなった面も。
ロンドン市場は、ポンド相場が振幅した。序盤に下押しされた後は一気に反発した。英ユーガブ世論調査の発表待ちで、ポンド相場は神経質な動きに。また、市場筋によると月末関連のフローが持ち込まれているもよう。ポンドドルは1.28台前半、ポンド円は140円ちょうど手前まで下押しされたあと、1.28台後半、140円台後半へと反騰している。対ユーロでもポンド買いが優勢。ユーロドルは東京市場からのじり安の動きが継続しており、1.10手前へと軟化。ユーロも120円台前半で上値重く推移。対ポンドでの売りフローが観測された。ドル円は109.20レベルと、前日高値にほぼ並んだあとは、109円台前半で値動きが落ち着いた。東京市場で下落した豪ドルは、欧州株が堅調に推移するなかで、下げをほぼ解消している。
NY市場では、ドル買いが優勢。米中貿易協議への楽観的な見方が広がる中でドル円は109.60円近辺まで上昇した。この日発表になった一連の米経済指標では、米GDPが上方修正されたほか、米耐久財受注が予想を上回ったことで、ドル円は買いが膨らんだ。特に米耐久財受注が、米製造業が低迷から脱する可能性を含んだ内容だったことは心強かったようだ。ユーロドルは一時1.10台を割り込む場面があった。一方、ポンドドルは買い戻しが優勢となり、1.29台を回復した。市場では総選挙での与党・保守党の勝利に期待感を高めており、ポンドがサポートされた。NY市場引け頃に発表される英ユーガブ世論調査の結果が注目されている。
(28日)
東京市場で、ドル円は反落。朝方に米議会で香港人権法案がトランプ大統領の署名で成立した。中国との政治対立が警戒され、ドル円は109.50割れから一時109.33レベルまで下押しされた。その後は下げ渋りも、109.50レベルには届かず。香港・上海株が軟調に推移し、円高圧力に。一方、ポンドは堅調。朝方に発表された最新のユーガブ世論調査(精度が高い調査方式)で、保守党が359議席と単独過半数をはるかに超える圧勝と見込まれたことが背景。ポンドドルは1.29台半ばまで買われた。
ロンドン市場は、小動き。米感謝祭休日で米株式および債券市場が休場となることから、ロンドン・欧州勢には様子見ムードが広がっている。欧州株は高値警戒感もあって売りが先行したが、その後はマイナス圏での揉み合いに落ち着いている。ドル相場はやや売りが先行。米債利回り動向の手掛かりに欠けるなかで、やや調整が入った。ただ、その動きも次第に落ち着いた。ユーロドルは1.10ちょうど近辺から1.1018近辺で上に往って来い。東京朝方にユーガブ世論調査を受けて買われたポンドは高値圏での揉み合い。ポンドドルは序盤に1.2951レベルと東京早朝高値に並んだが、その後は1.29付近へと反落。ドル円は、序盤に109.38レベルまで下押しされたあとは、109.40-50レベルでの揉み合いに終始している。
NY市場は、感謝祭の休日のため株式・債券市場が休場。為替市場取引も閑散で、ドル円は109円台半ば、ユーロドル1.10ちょうど付近、ユーロ円120円台半ばでの揉み合いに終始した。
(29日)
東京市場は、ドル円が一時上昇。前日海外市場での109.50近辺での揉み合いから仲値公示にかけて109.60レベルまで買われた。27日海外市場高値109.61レベルにほぼ並んだ。しかし、その後は急速に値を戻して、109.45レベルまで反落。前日の欧州株安に続いて、日本株やアジア株が軟調に推移しており、ドル円の上値は抑えられた。ユーロ円も120.66レベルまで買われたあと、120.50近辺まで反落。ユーロドルは1.1010近辺での揉み合いに終始。総じて、値幅は狭い値動きだった。
ロンドン市場は、小動き。前日の米感謝祭休日に続いて、きょうは感謝祭翌日のブラックフライデーとなる。米株式および債券市場は短縮取引となる。米市場の本格的な再開は来週の週明けからとなることで、ロンドン勢も積極的な取引を手控えている。ややドル高方向への動きがみられているが、ドル円は109.50挟みでの小動き。ユーロドルは1.1010付近から1.10ちょうどの手前までの限定的な下げ。ポンドドルは1.2920近辺から1.2880近辺までやや値幅が広いが、英経済指標などへの反応は希薄で、1.29台割れのストップの動きが主導したもよう。
NY市場は朝方ロンドン市場の動きが続く形でドル高となり、ドル円は108円67銭までと今週の高値を更新する動きが見られた。もっともNY昼頃からは週末を前にした調整の動きが広がり、ロンドン市場からの上昇分を解消して109円40銭前後で引ける展開に。ブラックフライデーで取引参加者が少ない中で、上値を積極的に買い上げる動きには慎重な姿勢が見られた。ユーロドルも朝方1.0981までとドル高が強まる場面が見られたが、その後1.1028を付けるなど、ドル高の調整が入る展開に。
執筆者 : MINKABU PRESS
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