とれんど捕物帳 破談なく協議継続なら期待感は後退しないシナリオを期待

　今週も米国債利回りが下げ止まらず、ドル円も上値が重い展開が続いていた。週半ばからは最高値更新が続いていた米株も利益確定売りが出始めドル円を圧迫。ただ、２１日線を割り込み１０８円台前半まで値を落としたが、下に崩れることもなく１０８円台は維持されている。

　今週も市場は、米中貿易協議を巡って楽観と悲観とを行き来した。米議会が上下両院で香港人権法案をほぼ全会一致で可決。反対は両院で１名だけだった。トランプ大統領も署名する意向で法案は成立する運び。人権問題に踏み込んで来た米国に対し、中国側の反応が警戒されたが、意外に落ち着いた反応を見せている。また、年内の第１段階の合意は難しいといった報道も流れていたが、中国側は「タイムテーブルを巡る噂は正確ではない」と否定していた。

　米中貿易協議を巡っては、合意時期など不透明感はあるものの、市場の期待感は温存。１２月１５日に新たに１５％の追加関税が課される予定で注目の日取りだが、万一、それまでに合意できず、協議が以降に持ち越されたとしても、破談することなく協議が継続できているようであれば、追加関税は延期され、市場の期待感も後退することはないシナリオを期待したい。

　さて来週だが、ドル円にとっては米国債の動向が注目で、利回りの下げが止まるかどうかであろう。このところ、裁定取引でもしているのかと言いたくなるぐらい、ドル円と米国債利回りは、ほぼリンクして動いている。株式市場の動向などを見た限りではリスク回避の動きではなさそうだ。また、足元の米景気、もしくは、ＦＲＢの金融政策でもなさそうで、米インフレも、ＦＲＢが参照しているＰＣＥコアデフレータは依然として目標の２％を下回ってはいるが、春以降、上昇傾向を回復させており、インフレ低下を過度に懸念する状況にはないように思われる。恐らく、感謝祭休暇に向けて、何らかのポジション調整が断続的に入っているように思われる。米中貿易協議など何かをきっかけに利回りは反転するものと期待している。

　ただし、来年かどうかはわからないが、来るべき景気後退を考慮すれば、中長期的には低下傾向であろう。上昇したとしても、あくまで短期的に留まり、米１０年債利回りが２％を大きく上振れることは考えにくい。

　なお、米景気だが、一頃の悲観的な見方は後退しており、大統領選挙もあり、もう一年拡大が続くとの楽観的な見方も出始めているようだ。インフレなき緩やかな景気拡大といったところで、これまでの経験則とは違い、意外に拡大が長期化しているのかもしれない。ＦＲＢが、経緯はどうあれ、先手を打って保険的利下げに転じたこともサポートしている可能性もありそうだ。

　来年は大統領選に向けてトランプ政権は中間層を中心とした減税策を模索している。英国も総選挙に向けて、ジョンソン首相が１労働者あたり５００ポンドの減税策を表明。中国も何らかの景気刺激策を模索しているようだ。

　このような中、世界には低成長、低インフレにもかかわらず、増税する不思議な国もあるようだが、世界経済は何とか維持されるシナリオを期待したいムードも出ている。

　来週のドル円の予想レンジは、１０７．５０～１０９．５０円を想定。スタンスは「やや強気」を継続する。

（）は前週
◆ドル円（USD/JPY）　
中期　上から中立へトレンド変化
短期　↓（→）

◆ユーロ円（EUR/JPY）
中期　上から中立へトレンド変化
短期　↓↓（↓）

◆ポンド円（GBP/JPY）
中期　上から中立へトレンド変化
短期　→（→）

◆豪ドル円（AUD/JPY）
中期　上から中立へトレンド変化
短期　↓↓（→）

◆ユーロドル（EUR/USD）
中期　中立継続
短期　→（↓↓）

◆ポンドドル（GBP/USD）
中期　上から中立へトレンド変化
短期　→（→）

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次回の配信は１２月７日（土）の午前を予定しています。ご了承ください。
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MINKABU PRESS編集部　野沢卓美