【来週の注目材料】ブレグジット合意成立の可能性??<EU首脳会合>
10月31日に英国のEU離脱期限が迫る中、来週は大きな節目となる離脱前最後のEU首脳会合が10月17日、18日に予定されています。
焦点となるアイルランドと英領北アイルランドの国境のハードボーダー(物理的障壁)を回避するための方策について、英国とEUの主張は分かれており、協議は行き詰まりを見せています。
昨年、当時のメイ英首相とEU側が合意したバックストップ案については、与党内からの反発や、閣外協力している北アイルランドの地域政党DUPの反対もあって議会を通らず、ブレグジット交渉が混とんする中で、メイ首相が辞任。
合意できなければ10月31日で合意なき離脱も辞さないとの姿勢の下で、新首相となったジョンソン首相は、2日にバックストップに代わる代替案をEUの行政機関である欧州委員会に提出しました。
代替案ではバックストップを削除し、北アイルランドは2020年末の移行期間終了とともに英国本島と同様にEUの関税同盟から離脱するが、農産品と工業製品分野でEUの単一市場ルールに沿った規制に4年間留まることが提案され、その後は北アイルランド自治政府及び議会が、同様の枠組みの延長を承認するかどうかを決めるという方策が示されました。
DUPはこの代替案に賛成する姿勢を示しており、バックストップを含む案よりは英国議会がまとまる可能性が出ています。
しかし、EU側はこの提案に前向きではあるが納得しないと難色を示しています。ユンケル欧州委員長はなお問題点が残ると疑問を呈しました。バックストップ条項におけるキーマンであるアイルランドのバラッカー首相は、ジョンソン氏の最終提案の下で必要となるアイルランド国境から離れた場所での限定的な税関検査について、北アイルランドの和平を脅かすものとして主張しています。とはいえ、EU側が主張するバックストップについては、メイ首相時代に英議会に3度も否決されており、同条項を含む案での英国の合意形成はほぼ不可能に見えます。メイ首相退陣後の保守党党首選をみると、当初離脱否定派で、その後は合意なき離脱を避けるという穏健派のハント候補などもバックストップについては期限付きでも反対姿勢を示すなど、与党保守党にとってバックストップを受け入れることはかなり厳しいハードルのようです。
こうした状況から、今回のEU首脳会合についても、厳しい見方が広がっていましたが、ここにきて状況が変わってきました。
10日に英国北西部で行われた英国のジョンソン首相とアイルランドのバラッカー首相の首脳会談で、前向きな姿勢が示されたのです。
2時間半という長時間に及んだ会談後、両社は共同声明を発表。詳細にわたる建設的な話し合いだったと評価し、合意に向けた道筋を見出したと示しました。
バラッカー首相は月末までの合意は可能だと確信していると、相当前向きな発言をしており、離脱交渉担当者らにブリュッセルでの協議再開を促しました。メルケル独首相などは、合意に向けてかなり悲観的な発言をこれまで行っていますが、基本的にアイルランドとの国境問題についてはアイルランドの意向に沿うというのがEUのコンセンサス。会談の具体的な内容については伝わっていませんが、キーを握るアイルランド側の姿勢の変化を受けて、EU側のバルニエ主席交渉官と英国側のバークレイEU離脱担当相などが双方の課題を埋める形で妥協点を見出す可能性は十分にあり、EU首脳会合でブレグジット合意が承認される可能性がここにきて出てきています。
EU首脳会合でEU離脱合意が成立するとポンドにとっては大きな買い材料。ユーロも対ドルや対円では買いが入ると見られます。
一方で、当初予想されていた通り、英国とEUとの意見の対立が見られ、合意に至らないと相場は混乱しそう。
この場合、先日英議会が成立させたEU離脱延期法の下で、ジョンソン首相は3カ月の離脱延期をEUに求めることが義務付けられています(正確には19日までにEUと合意するか、英議会が合意なき離脱を認めるかのどちらかでない限りですが、EU首脳会合で否決された時点で、可能性はまずないです)。
もっともジョンソン首相は、離脱延期はしないと明言しており、裁判所の命令に従うかどうかを含め波乱含み。政治的な混乱は通貨の売り材料となることに加え、先行きの不透明感がかなり激しくなることもあり、ポンド売りの材料となりそうです。
執筆者 : MINKABU PRESS
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