【NY市場】ドル円は下値サポートも相変わらず上値は重い
きょうのNY為替市場でドル円は106円付近での上下動に終始した。早朝には105円台に値を落とす場面が見られたが、米株や米国債利回りが上昇する中で、円安の動きがサポートし、106円台に戻していた。
中国人民銀行が本日の基準レートの設定で人民元を誘導しなかったことや、中国の貿易黒字がドルベースで予想を上回っていたことから市場には一旦安心感が出ていた模様。
しかし、ドル円は106円台を駆け上がる動きまでは見られず、相変わらず上値は重い。トランプ大統領がツイッターで、FRBへの苦言と伴にドル高へのけん制発言をしていたことや、9月FOMCでの0.5%の大幅利下げ期待がドル円を圧迫しているようだ。
依然として大きな節目である105円を視野に入れた動きが続いていると言えよう。過熱感を示すテクニカル指標であるRSIは33と下げ過ぎを示す30付近で推移している。過熱感も残る中で調整のショートカバーが入り自律反発している程度の動きと思われる。
ユーロドルは1.12ドルちょうどを挟んでの上下動。ドイツ政府が国債を新たに発行し、温暖化対策のための財政刺激策を行うと報じられていた。ドイツは財政健全化のため新たな国債発行は控えるということで、メルケル首相をはじめ与党内での合意が形成されているが、もし報道通りであれば、合意を破棄する内容である。しかし、この報道に対して、ドイツ財務省からコメントが出ており、「財政均衡目標を破棄する決定はない」と否定していた。
なお、このドイツの財政刺激策に関するユーロへの影響はまちまちとの見方もあるようだ。ユーロ圏の成長にはポジティブな半面、キャピタル・フローとECBの緩和政策を考慮すると必ずしもユーロ高をもたらさないとの見方も出ている。
また、イタリアのサルビニ副首相が連立を解消し、解散総選挙を呼びかけたことがユーロを圧迫。終盤には1.1180ドル近辺に値を落とした。
ポンドドルはNY時間の朝方に1.20ドル台に下落する場面が見られたものの、1.21ドル台半ばに買い戻される展開。ただ、対ユーロでは一時2年ぶりの安値水準まで下落するなど、依然としてポンドの下値模索は続いている。
きょうはジョンソン政権が10月31日の離脱期限を通過後、数日以内に総選挙を実施する方向で準備しているとの報道が流れ、市場は合意なき離脱へのリスクを高めている。ジョンソン首相はEUに対して、協定変更に向けた交渉再開を求めているが、EU側は再交渉には応じない姿勢を堅持している。現在、市場では合意無き離脱の可能性を35%程度で見込んでいるようで、8月に入ってそのリスクを高めている。10月末の期限付近のポンドドルは1.20ドル以下で推移しているとの見方も多く、中には1.17ドル台までの下落リスクを見込んむ向きもいる模様。
minkabu PRESS編集部 野沢卓美