英国にジョンソン新首相誕生 さてポンドはどうなる
ブレグジット問題で英国内をまとめきれず辞任を表明したメイ首相の後任を決める英与党保守党の党首選挙は、下馬評通りボリス・ジョンソン前外相が勝利し、本日付で新首相に就任します。
世界各国でポピュリズム色の強い固定的なトップが誕生する中、負けず劣らず個性的な元道の目立つジョンソン新首相。メイ首相がまとめきれなかったブレグジット問題をいかにこなしていくのか、また、ジョンソン政権下で英経済は、さらにポンド相場はどのような動きを見せるのかについて考察してみたいと思います。
最大のポイントとなるのがブレグジット問題でのEUとの合意。
メイ首相は昨年11月にEU首脳と離脱案でいったん合意しましたが、同合意案に対して英国内からの反発が相次ぎ、下院で過半数を獲得して合意を承認することが出来ないまま、今回の辞任となりました。
いくつもポイントはありますが、最大のポイントは英領北アイルランドとアイルランドとの国境線をめぐる問題。いわゆるバックストップ問題です。
バックストップとは、現状国境管理が行われていないアイルランドと北アイルランドの国境間での混乱を避けるための安全策のこと。
1998年のベルファスト合意によって、英領北アイルランドとアイルランドの国境での国境管理は廃止され、同じ制度の下で人も物も自由に行き来きるようになりました。しかし、ブレグジット成立後はアイルランドが所属するEUと英国とでは関税・規制体系が異なることになるため、国境管理が必要となります。
こうした国境管理はEU、英国ともに本来は求めていない者。EUは北アイルランドをEUの関税同盟と単一市場の体系内に留める形での安全策を提案しました。これがバックストップです。
とはいえ、この形式をとった場合、実質上の国境線が北アイルランドとグレートブリテン島(英国本土)との間にひかれる形となります。これは与党に閣外協力するDUP(民主統一党)には決して受け入れられないもの。また、保守党議員も多くが反発する形となり、バックストップを含んだメイ首相のEU合意案が議会で承認できない理由の大きな一つとなっていました。
ジョンソン新首相はバックストップについて、たとえ期限が設けられたとしても受け入れられるものではないとしています。これはジョンソン氏の対抗として保守党党首選の決選投票を戦ったハント外相も実は同じ。穏健派のハント氏も同意見ということで、保守党にとっては決して受け入れられない案であることが分かります。
ただ、バックストップはEU側にとって外せない政策の一つ。
10月31日の期限までEUとの合意がまとまる可能性は低いです。
11月から欧州委員長に就任するフォンデアライエン独国防相は、期限の延長を認める発言を行っていますが、今回の期限をもって合意があろうがなかろうが離脱を行うというのがジョンソン氏の基本姿勢だけに、同期限に向けてポンドの売り圧力が強まりそうです。
Minkabu PRESS編集部 山岡和雅