【NY市場】ムニューシン発言をきっかけにドル円に買い戻し
きょうのNY為替市場でドル円は買い戻しが優勢となった。今週の大阪G20での米中首脳会談に関するムニューシン米財務長官の発言を受け、株式市場の買いと伴にドル円も買い戻されている。ムニューシン長官は米CNBCでのインタビューで、「中国との協議は90%進展しており、合意が完了することを期待している」と述べていた。
しかし、その後にトランプ大統領がFOXビジネスでのインタビューで、「今週29日に大阪G20で予定されている中国の習主席との会談で、協議に進展がなければ、中国からの輸入品3000億ドルに追加関税を課す決定を行うかもしれない」と楽観的ムードに釘を刺す発言も伝わっていた。
米10年債利回りが2%を回復するなど外部環境のフォローもあり、前日上値を拒んでいた107.50円水準を回復している。前日に106円台まで一旦下落したことで値ごろ感からのショートカバーも活発に出ていたようだ。108円台にかけては上値が重そうだが、きょうは下げ一服といったところ。108.25円付近に21日線が控えており上値メドとして意識される。
ユーロドルもロンドンフィキシングにかけて買い戻しが入り、1.1390ドル近辺まで上昇する場面も見られた。前日はハト派の急先鋒のブラード・セントルイス連銀総裁の7月FOMCでの0.5%利下げに対する否定的な見解やパウエルFRB議長の特定の指標に過剰反応すべきではないとの発言でドルが買い戻され、ユーロドルも戻り売りが優勢となっていた。
きょうは1.1350ドル近辺まで一旦値を落としていたが、200日線が1.1345ドル付近に来ており、その水準はサポートされている格好。市場の一部からは、短期的には1.15ドル達成前に1.14ドルからの下放れはないとの見方も出ている。ユーロドルのショートポジションは依然としてかなり積み上がっており、FRBが利下げを開始すれば、ショートカバーが出易い状況にあるという。
ポンドドルは1.26ドル台後半での上下動が続き方向感のない展開が続いた。1.27ドル台に上昇する場面も見られたものの、1.27ドル台は上値抵抗が強い模様。一方で21日線が控える1.2665ドル近辺は強いサポートなっていたようだ。
この日はカーニー英中銀総裁の発言が伝わっていたが、経済の先行きに自信を示していた。総裁は「いつ量的緩和(QE)を巻き戻しても市場は驚かないだろう」と言及している。ただ、ポンドの目下の注目はファンダメンタルズではなく政治の動向だ。事実上の次期首相を決める保守党・党首選が行われる中で、市場はリスクを意識している。一部からは、合意無き離脱のリスクを市場は過小評価しており、ポンドの下値模索は更に続くとの指摘も聞かれる。
次期首相の最有力候補となっているジョンソン前外相はEU離脱協定に関して、バックストップ条項を除いた新たな協定締結を目指す案(プランA)と、関税貿易一般協定(ガット)の24条を適用し、関税なしの現状維持を目指す(プランB)を試案として示している。プランCは合意なき離脱だが、プランAもプランBもEUは拒否しており、合意無き離脱の可能性は市場が思っているほど低くはないという。
minkabu PRESS編集部 野沢卓美