とれんど捕物帳 年内の米利下げ織り込みは行き過ぎか

 今週はきっかけ次第でややドルが買い戻される展開を期待した。ドルインデックスを見た限りでは期待通りにドルは買い戻しが見られていたものの、円高の動きは止まらずドル円は強いサポートとなっていた109.50円水準を割り込み109円割れを試す動きが見られた。株式市場は下げ一服感も見られたものの、なお不安定な流れが残っており、リスク回避の雰囲気が円高を誘発しているようだ。110円が少し重くなって来ている。

 注目の米中貿易協議のほうは互いに関税措置を強化した上で協議を続けるようだ。次のメドは6月に大阪で開催されるG20サミットでの米中首脳会談となりそうな気配だ。以前から述べているが、この問題は経済面だけではなく、覇権争いの面も過分にあるので、一朝一夕には解決することはないと見ている。米国側の自信の表れか、トランプ大統領も解決を急がない方針を示している。北朝鮮への対応と類似しているのであろう。

 さて、市場では気になる現象が出ている。米短期金融市場でFRBの年内の利下げ期待が高まっていることだ。今回の米中貿易問題が拍車をかけたのか、複数回の利下げを織り込む動きまで出ている。一方でエコノミスト調査では年内景気後退の可能性を見ているエコノミストは少ない。早くても来年というのが大勢を占める。

 市場の動きは行き過ぎとの見解が多く出ているが、市場は恐らく、今年に入ってからのPCEコアデフレータの低下が続いていることで利下げ期待を高めているのであろう。PCEコアデフレータに連動した取引を行っている投資家もいる可能性もありそうだ。世界経済の情勢次第ではFRBは予防的に利下げを実施するリスクを考慮しているのであろう。直近3月分のデータで前年比1.55%まで低下している。これについてパウエルFRB議長は一時的要因と言及していた。

 衣料品や航空運賃、資産管理サービスの3つの価格低下がデータを押し下げているようだ。衣料品に関しては統計手法の変更の影響、航空運賃はサーチャージの引き下げ、そして、資産管理サービスは昨年末にかけての株価下落で課金水準が低下したことが要因と思われる。パウエル議長の指摘どおり一時的要因とも思われるが、インフレに関しては住宅や医療費、そして、対中関税引き上げの影響など今後の展開次第ではある。

 FRBのもう一つの責務である雇用の力強さや賃金上昇からすると、現時点で年内の利下げ、それも複数回織り込むのは時期尚早と思われる。年内の利下げのシナリオがあるとすれば、世界経済が非常に不安定になり、株式市場がそれに敏感に反応し急落したときかもしれない。可能性は完全に否定できないがリスクはまだ小さいと思われる。

 さて来週だが、イベントとしては日本のGDP速報値とFOMC議事録が注目される。GDPはマイナス成長が見込まれているが、その場合でも逆に消費税引き上げ延期への期待感が高まることから市場にとってはネガティブ要因にはならないかもしれない。一方、FOMC議事録はインフレ低下の一時的要因に関する議論が注目されるところではある。

 そして、欧州議会選挙にも注目したい。EU懐疑派のポピュリスト政党が躍進しそうな勢いだ。主導権を握るところまではないであろうが、影響力を増した場合、イタリアなど財政問題も含めて金融市場に一定の影響が出るリスクは留意しておきたい。

 株式市場も落ち着いて行くことを期待し、来週の為替市場もややドル買い戻しの流れを期待したい。来週のドル円の予想レンジとしては、109.00~111.00円を想定。トレンドは下のままだが、スタンスは「中立」を継続。

()は前週
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓)

◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓↓(↓↓↓)

◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 →(↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 →(↑)

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

出所: minkabuPRESS

為替ニュース/コラム

一覧を見る

主要通貨レート

直近24時間の重要経済指標

Pick Up 雇用統計 FOMC