【NY市場】中国報復関税で緊迫化懸念 株急落の中、ドル円は109円ちょうど付近まで一時下落
きょうの市場はリスク回避の雰囲気が強まり、為替市場は円高が強まっている。ドル円は先週に強いサポートとなっていた109.50円をブレイクし、ストップを巻き込んで109.00円付近まで下落する場面も見られた。ただ、米株の下げも一服したことから109円台は維持されている状況。
トランプ大統領の関税引き上げに対して、中国が報復関税を発表したことで問題のエスカレート化に対する懸念が再び強まっている。中国は米国からの一部輸入品の関税を6月1日から25%に引き上げると発表した。規模は600億ドルで2493品目。また、中国の有識者が中国が保有する米国債の売却について協議しているとの報道も嫌気されている。ただ、これに関しては現実味が乏しく、有識者はきょうに限らず、常に議論しているとの見解も聞かれた。
米中貿易問題によるドル円の下げに関しては買いの好機との見方もある一方で、株式市場の動き次第では年初にフラッシュクラッシュで付けた安値105円割れを試すとの見方も出ており様々。FRBはデータ次第の中立姿勢を強調している。今週は米小売売上高などが発表されるが、この先数ヵ月の米経済指標は底堅いのではとの見方も出ている。半面、日銀は現状では出口戦略の目はほぼ皆無。そのような中、金利差の面から考えれば、110円割れは値ごろ感があるのかもしれない。一方、ここ最近のリスク回避と円高のベータ(反応度合い)は過去ほど強くは無い。ただし、株式市場の急落など不安が増せば、それが復活する可能性があるとの指摘も出ている。
ユーロドルは上に往って来い。序盤は先週上値を抑えていた1.1250水準を突破し、ストップを巻き込んで1.1260ドル近辺まで上昇する場面が見られた。しかし、買いが一巡すると戻り売りが強まり、元の位置の1.1230ドル近辺に失速している。
米中貿易問題のエスカレート化でドル売りがユーロドルを押し上げているが、その割には上値は重い印象も否めない。市場からは今回のような材料をきっかけに一時的なユーロショートの巻き戻しを除けば、1.10ドルを目指すとの見方も出ている。トランプ政権は今月に期限が来る輸入自動車の関税引き上げのリスクはなお残る。また、少し改善は見られているものの、欧州の景気回復の兆しは小さいことは認めざるを得ず、6月にECBから発表が予想される長期流動性オペ(TLTRO3)を考慮すれば、ユーロの上値を積極的に追う流れにはならないという。また。今月下旬には欧州議会選挙が控えており、ユーロ懐疑派が善戦しそうだとの調査もある中で、ユーロには慎重なようだ。
ポンドドルは序盤に買いが強まり1.30ドル台を回復する場面が見られた。ただ、買いが一巡すると逆に戻り売りが強まり200日線を割り込んでいる。
英EU離脱に関する超党派の協議が続いており、前向きなコメントは出るものの一向に結果が出せないでいる。英首相報道官は「超党派の協議は多くの問題を話し合っており、ポジティブな方向に動いている」と述べていた。しかし、依然として合意には程遠い状況で、もうしばらく時間がかかりそうだ。
minkabu PRESS編集部 野沢卓美