【来週の注目材料】米景気の力強さを確認か~米第1四半期GDP速報値
2月分の米経済指標は、非農業部門雇用者数、ISM製造業景気指数、小売売上高など、
主要な指標が軒並みの弱い結果となり、米景気への警戒感が一時広がりました。
非農業部門雇用者数は速報時点で前月比わずか+2万人という衝撃的な数字に(その後改定値が出て+3.3万人)、ISM製造業景気指数は2年ぶりの低水準に加え、内訳をみると新規受注や生産など重要度が高いといわれる項目が軒並みの弱い結果となり、内容も悪いという形に。これらの数字を受けて市場では米国が年内利下げに踏み切るのではという見方も一部で出ていました。
しかし、3月分のこれらの指標は軒並みの回復。ここにきて米景気の底堅さが意識され、ドル円は今週3月6日につけた112.14を超え、年初来高値を更新する112.17を付ける動きとなっています。
同じく数字の強い中国の景気鈍化懸念後退と合わせ、世界経済のトップ2の底堅い動きが、リスク選好の動きにつながった格好です。
こうした中、来週は米国の第1四半期GDP速報値が発表されます。
前期2018年第4四半期は改定値ベースで前期比年率+2.2%(速報時点では+2.6%)と、同第2四半期の+4.2%、第3四半期の+3.4%から鈍化傾向に。
税引き後企業収益が2016年第3四半期以来の横ばいと増加を果たせず、やや警戒感の出る結果となりました。
GDPの内訳をみると個人消費が+2.5%(速報時点では2.8%)と、第2四半期の+3.8%、第3四半期の+3.5%から鈍化し、全体の冴えない数字につながっています。
設備投資は+5.4%と速報時点の+6.2%からは下方修正も、第3四半期の+2.5%からは改善。
米中通商協議関連でも注目される知的財産は+10.7%と、こちらも速報時点の+13.1%からは下方修正も、第3四半期の+5.6%からは伸びています。
輸出は+1.8%と第3四半期の-4.9%から回復。輸入は+2.0%と第3四半期の+9.3%から鈍化となっており、貿易赤字が減少する形でGDPへのマイナスの影響は薄れています。
個人消費と同じく前回さえなかったのが住宅投資の-4.7%、第3四半期も-3.6%と弱く、警戒感を誘う状況となっています。
総じて家計関連が弱かったという前回ですが、個人消費に関しては第2四半期、第3四半期が強すぎた面もあり、雇用市場が力強い動きを見せる中で、比較的堅調という印象です。
なお、2018年通期でのGDPは+2.9%。第4四半期の弱さもあってトランプ大統領が目標とする3.0%に届きませんでした。こうした状況が、大統領によるFRBへの圧力につながっている面があると思われます。
そうした中、今回の第1四半期GDPの予想ですが、+2.2%と前回と同じ水準が見込まれています。個人消費の伸びが+1.0%とやや弱めに見込まれていることが背景にあります。
年3%成長というトランプ大統領の目標を考えるとやや厳しい数字となります。
ただ、2月までの小売売上高などの状況からは納得の面もありますが、今週発表された3月の米小売売上高の強い結果をみると、もう少し強めの数字もありそうな印象。
予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、トランプ大統領からのFRBへの緩和圧力が強まる可能性があり、ドル売りにつながりそう。
なお、アトランタ連銀によるGDP見通し「GDPNow」は+2.8%と強気予想ですが、NY連銀によるGDP見通し「Nowcasting」は+1.4%とかなり低めの見通しになっています。
minkabuPRESS編集部山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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