☆2017年の見通しー6

【著者】

【前回記事】原油生産量

2017年の相場見通し

日本株は2016年の大半の期間で低迷したが、年末にかけて年初来高値を更新した。日本株が底堅かったのは、政府の意向による買い支えが主因だ。日本株最大の買い手はETFを通じた日本銀行の4.3兆円、次の買い手は年金の3.5兆円だった。

一方、2013年の日本株大幅上昇の主役だった海外投資家は、年間を通じて3.7兆円売った。この3者を差し引きすると買い手が4.1兆円上回るので、買ったままで売りに転じない当局の買いが、年末への高値更新につながった形となった。

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とはいえ、日本株が上昇に転じたのは10月以降で、上昇のきっかけは海外投資家がつくった。米国では、10月に入ってから、債券から株式への資金大移動が始まっており、それにつれて日本株にも買いが入るようになった。

債券ファンドから株式ファンドへの資金移動が起きると、よほど日本株に対してネガティブでない限り、日本株にも資金が配分される。海外株での日本株比率に変化がないとすれば、資金増の分だけ、日本株が買われることになる。海外投資家は2015年に2500億円、2016年1-9月には6兆2000億円の日本株を売り越しており、債券ファンドから株式ファンドへの資金移動の流れの中では、買い戻しを迫られる状況にあった。海外投資家は10月からの3カ月間だけで2.5兆円を購入、この期間の最大の買い手となり、年末高値を主導した。

また、2015年に目立っていた事業法人による自社株買いが、2016年も引き続き顕著だった。

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資金の大移動は「債券から株式へ」なので、米国債価格は下落した。また、トランプ氏の当選が決まってからは、財政政策による景気拡大、インフラ投資、インフレ懸念、財政悪化といった、一連の債券の売り要因により、金利上昇に拍車がかかった。

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マイナス金利政策下の日本国債は、日本株が売られていた6月頃までは買われたが、9月21日に発表されたイールドカーブ・コントロール以降は、コントロールが効かなくなってきている。ほぼゼロ利回りとする10年国債は0.05%水準だが、それ以上の長期金利は明らかに上昇を始めた。

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それでも、力で押さえつけている日本国債利回りの上昇圧力は弱く、米国債利回りの上昇に連れて、日米国債利回り較差が広がった。

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ドル円レートは、日米金利差に反応する。投機筋は2016年初来からドル円ショートで攻めていたが、10月以降からショートカバーが入り、ドル円ロングに転じるまでに約2カ月間を要した。

12月以降は急速にドル円ロング・メークをしたが、年末年始にかけて金利差拡大も頭打ちで、円ショート、円ロングが共に減少するなかで、ドル円ロングも減少加減となった。この動きを見ていると、投機筋はドル安、ドル高でも儲けることができず、早くもポジションの手仕舞いに入ってきている。

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11月以降の円安、株高を、トランプ・ラリーと呼ぶ人が多いが、円安も株高も、トランプ氏当選以前から始まっており、その背景には米金利上昇、資金の大移動があったことが見て取れる。

このことは、資金の大移動が今後も続くようなら、日米金利差拡大、円安、株高が続くことを示唆している。世界の主要国の緩和的政策に限界が見え始め、米国が利上げ基調にあることから、こうした資金の大移動が続く可能性が高いと言える。

2016年の日本株買い主役であった日銀とGPIFは2017年も買い続ける。全体的には売り手であった海外投資家は、年間を通じて買いに転じる公算が強い。個人投資家は上昇局面ではほぼ間違いなく売って来るので、2017年も売るのだろうか? 過去の動向と株価の関係を見れば、日本の個人投資家は外れのないネガティブ・インディケーターとなってきた。

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2017年は大変な年になりそうだ。英国のメイ首相が「ハードブレグジット」を明言したことで、日本企業や金融機関の英国離れが、相も変わらず取り沙汰されている。実際、スイス、ダボス会議に出席しているUBSの会長と、HSBCの社長が、共に約1000人分の雇用を英国から欧州に移すと述べた。しかし、2017年の不確定要素は英国ではなく、欧州の大陸諸国だ。

英国はそうした不確実性からいち早く離脱したことだけでも、1歩先を進んでいる。年前半はオランダ下院選挙と、フランスの大統領選がある。秋にはドイツの総選挙があるが、イタリアも夏までには総選挙を行い、欧州連合、あるいはユーロ圏離脱の国民投票を行う可能性が高い。

これらの選挙が無風になる見通しはない。フランスのオランド大統領は、再選される見通しが立たないとして、立候補を見送った。ユーロ圏で唯一、サブプライムショック、リーマンショック時の生き残りであるドイツのメルケル首相も、移民問題で再選が危うくなってきた。ちなみに、メルケル氏以外の往時の各国首脳たちは、緊縮財政に抵抗したかどで、例外なくユーロ政府寄りの首脳に取って代わられた。当時はブレグジットもなく、ユーロ政府に逆らうという選択肢はないとされていた。

とはいえ、ブレグジット投票から半年も立たない12月のイタリア国民投票で、反ユーロ勢力が勝利したことから、世の中は突如、流動的となった。

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ブレグジットやトランプ氏当選は、ポピュリズムとして世界の波乱要因とされている。とはいえ、ユーロ圏の諸国ではいわゆる勝ち組と、負け組が鮮明に分かれ、後者のイタリア、スペイン、ポルトガルなどでは、マイナス成長が10年も続いている。プラスに転じたフランスでも失業率が2桁台から下がらない。

これらを負け組の能力不足だとする識者も多いが、独自の金融政策を持たず、独自の財政政策を主張すれば国のトップが解任される状況を鑑みれば、そういった判断はフェアではない。唯一の例外であるアイルランドが、首長のすげ替えにも関わらず、独自の財政政策を押し通し、結果を出していることは、非常に示唆的だ。

市場経済は基本的に大衆迎合主義だ。大企業以外は企業に非ずという主義ではなく、家内工業でも経済に貢献する。欧州では、ユーロ導入以降の大国主義が機能しなくなり、市場経済が反攻に転じる気配が見られている。これをネガティブに捉えるのは、格差を固定したい側の見方で、大衆の活力をもっと評価したいものだ。

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世界の主要国はここ数年間で巨額の資金供給を行い、各国の中央銀行は過去の数倍ものバランスシートを抱えるに至った。

その資金を最も吸い上げているのは、先日、発表された世界のトップ8人だ。8人だけで世界の資産下位半分の富を所有している。彼らも経済に貢献するべく投資や消費を行っているが、結果的に資産の大幅な拡大が続いているので、その投資は巨大な集金マシーンとして機能している。チャリティー活動を行っても、資産が大幅に増えているということは、貧富格差拡大の主役となっていることを意味する。数字は恐い。表向きの笑顔とは違う裏の顔を少なくとも数値の上では見せてくれる。これを修正し、世界の経済活動をより活力のあるものに戻すには、大幅な税制改革しかない。これはトップ8人からも同意を得られるはずだ。そうでなければ、チャリティー活動は単なる節税対策でしかない。

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2017年は不確実な年になる可能性が高い。カネ余りが続くが、債券の利回りが低いので、金融資産の置き所がない。銀行も生き残るためには投機的になる必要がある。

私は、今後も短期トレードが最も機能する時代が続くと見ている。

終わり。

全6回:☆2017年の見通し

【1】ポピュリズム
【2】2016年に起きたこと
【3】2017年のイベント
【4】日欧の金融政策
【5】原油生産量
【6】2017年の相場見通し

矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。